Forza Horizon 5 に手話俳優がいることで、レイ-フルーリーは自分が何を見逃したのか家族に尋ねる必要がなくなりました。
「障碍のある人や耳の不自由な人はたくさんいて、数多くの扉が日々閉ざされています。つまり何が言いたいのかというと、私たちのような人は、一貫して常に存在する不平等さに対応しているということです。私が同じ土俵に立てているということは、閉ざされた扉のことに気を取られていないということです。不平等を解消しようとしているわけではありません。家族と一緒にいることが一番大切ですから」とレイ-フルーリーは語ります。「耳の不自由な私にも伝わります。パンデミックで今も多くの人が引き続き社会的に孤立している中で、遊びは誰にとっても重要な生活の一部なのです」
Xbox Game Studios でアクセシビリティ担当リードを務めるタラ・ヴォルカー (Tara Voelker) は、外傷的な怪我を乗り越えるにあたってゲームが大きな役割を果たしたといいます。彼女は 10 歳の時、学校から歩いて帰宅中に車にはねられ、回復までにかなり長い時間がかかりました。
「外に出ることも、友達と一緒に何かすることもできませんでした。ビデオゲームが大好きだったので、当時は回復までビデオゲームで子どもらしくいることができ、友達と一緒に何かすることもできたのです」とヴォルカー。彼女は今も初代「ゼルダの伝説」や、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」、「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」をプレイしたことを覚えているといいます。「数か月間はそれだけが私の人生でしたが、その影響はまだ残っています。ゲームがとても重要な存在になることを、身を持って知ったのです」
ヴォルカーは数年前、Forza Horizon 5 の開発初期に耳の不自由な人からフィードバックを得るとしていた Playground Games でインクルーシブワークショップを開催しました。その際に障碍のある人の英国でのコミュニティの人脈を活用し、アキット氏をはじめとする専門家に連絡、ゲーム開発者と同じ部屋に彼らを集めました。
BioShock Infinite をはじめとするゲームの開発に携わったことのあるヴォルカーは、「製品全体の今後の方向性が決まりました」と話します。「開発プロセスに組み込まれたのです」
2 日間にわたって開発者は、障碍のある人たちがゲームに関する体験を語り、障碍のない人と同じ体験が得られない要因が何なのかについて話している部屋の中を巡り、学びを得ました。
Playground Games で Forza Horizon 5 のプロデューサーを務めるターニャ・スミス (Tarnya Smith) は、「彼らと話すことで、ゲームの何に苦労しているか把握できました」と語ります。「まさに目から鱗でした。制作側では、字幕がすばらしいもので、あらゆる人の役に立つと思っていたのに、手話に頼っている耳の不自由な人たちには実際あまり役立っていないことがわかったのです。これは大きな警鐘となりました。」
その時点で Playground Games はアクセシビリティをゲームの中核とする決断を下し、The Game Awards 2021 にてアクセシビリティイノベーション賞を受賞したほか、同年の Can I Play That? Accessibility Awards (私にプレイできるかな? アクセシビリティ賞) でも 2 部門にて賞を受賞しています。
Forza Horizon 5 のクリエイティブディレクター、マイク・ブラウン (Mike Brown) は、「このような機能を追加することで、当社のゲームをより楽しめるようにするチャンスがあることに気づきました」と話します。「これはゲームの重要な部分で、失われないよう保護する必要があります」
また開発チームでは、このようなアクセシビリティ機能にはさらに深いニーズがあることもわかっていました。
「ゲーム体験にはさまざまなことが求められます。それに対応すると、そこにはまた違った発見をするプレイヤーや他の困難に直面するプレイヤーがいるのです」とブラウンは語ります。「これからもずっと、さまざまな人の問題を解決し続けることになるでしょう。ゲームの強みとなる複雑さは、私たちクリエイターが解決すべき課題ももたらしているのです」
今回 Playground Games は学びを得ましたが、軌道修正もしています。
スミスによると、まずは耳の不自由な人たちが運営する会社を雇ってオーディションを行い、シーンに応じた俳優のキャスティングをサポートしてもらったのですが、そこでさらに多くの人手が必要なことに気づいたといいます。例えば、キャストやクルー、俳優とコミュニケーションするための通訳や、俳優の手話が標準に合っているかといったことや、適切な言葉になっているかを確認するコンサルタントなどです。
Playground Games では、アクセシビリティにフォーカスしていたことから、すべてをゲームに取り込み、実際にうまくいっているか確認するという、まったく新しいプロセスを進めることになりました。そこでアキット氏をはじめとする耳の不自由な人たちと何度も相談し、彼らにゲームをプレイしてもらい、その反応を評価しました。
アキット氏は、今回のアップデートが他のゲームスタジオやゲーム業界全体にとっての先行事例になると見ています。
「本当にこれは前例となるもので、基準が設定されました。新しい領域のようなもので、Playground Games にできるのなら、他の大手スタジオも同じようなことができるはずということになります」とアキット氏。「どんなものが出てくるのか楽しみです。標準化されたフォーマットが登場するかもしれませんし、他のスタジオが真似するかもしれません。そして、耳の不自由な人たちのコミュニティにどのような機会がもたらされるかも気になります」
ブラウンは、あらゆるゲーマーに対する取り組みは今後も続くと語ります。
「このようなゲームを開発したことで、簡単に自分がアクセシビリティ分野の専門家だと考えるようになる人もいるでしょう」とブラウン。「真に謙虚な姿勢でいるべきだと思います。この取り組みを継続し、疑問を持ち続け、より良いものにする力を持たなければならないのです」
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