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惑星の種となる微粒子が原始惑星系円盤に降り積もる現象、鹿児島大などが発見 - マイナビニュース

鹿児島大学と国立天文台(NAOJ)は12月14日、惑星の種となる固体微粒子の「ダスト」(数mmほどに成長した塵)が「原始惑星系円盤」に降り積もる「天空の降灰現象」を、NAOJの天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」を用いたシミュレーションによって発見したと発表した。

同成果は、鹿児島大大学院 理工学研究科の塚本裕介助教らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。

惑星は、生まれたばかりの星の周囲に形成される、ガスと塵の円盤である「原始惑星系円盤」の中で誕生すると考えられているが、0.1μmほどのダストがどのように成長し、その成長に伴ってどのように運動するのかについてはよくわかっていないという。

これまでの観測から、生まれて100万年以内の非常に若い原始惑星系円盤において、ダストが成長する兆候が検出されているほか、原始惑星系円盤の中には、中心星から数10天文単位の距離において、土星のリングのようなすき間構造が存在しているものも観測されており、そのすき間構造を作る要因として惑星の存在が指摘されてきたという。こうした観測結果は、若い原始惑星系円盤において、すでにダストの成長や惑星形成が起こっている可能性を示唆するものであると考えられてきた。

しかし、そうした原始惑星系円盤に存在するガスやダストは、原始星を中心に公転しており、円盤の中でダストが成長するにつれて、円盤内のガスが向かい風のように働くため、ダストの公転運動は妨げられ、中心の原始星へと急速に落下していく「ダストの中心星落下」が生じると理論的に考えられており、中心星から数十天文単位の距離の円盤外縁部では、ダストが成長し惑星が形成することが非常に困難であるとされるため、観測が示唆するような円盤外縁部での惑星の形成を説明する、理論的メカニズムの解明が求められていたという。

そこで研究チームは今回、アテルイIIを用いて、ガスと成長するダストの両方を考慮した3次元磁気流体力学シミュレーションを実施。その結果、ダスト落下問題を回避する新しいメカニズムを発見することに成功したという。

具体的には、原始惑星系円盤の内側で大きく成長したダストは円盤からのガスの噴出現象である「アウトフロー」に巻き上げられた後、遠心力によってアウトフローから分離し、最終的には円盤の外縁部に降り積もることが判明したという。

このメカニズムは、火山からの降灰の挙動に似ているとのことで、この現象について研究チームでは、「天空の降灰現象」と命名したとする。

  • 原始惑星系円盤

    今回発見された「天空の降灰現象」のイメージ図を用いた、原始星周囲の構造と今回発見された「天空の降灰現象」の概念図。原始惑星系円盤の中心から吹き上がるガス流で巻き上げられたダストが、円盤の外縁部に降り積もる様子が描かれている。(1)円盤内でダストが成長し、中心の原始星の近くまで移動する。(2)原始星近くまで到達すると、ガスのアウトフローによってダストが垂直方向に巻き上げられる。(3)遠心力によってアウトフローからダストが分離する。(4)アウトフローから離れたダストが、円盤の外縁部に「降灰」する (C)鹿児島大学 (出所:国立天文台 CFCA Webサイト)

天空の降灰現象では、成長したダストは密度の低い円盤外縁部に再び降ってくることによって、ガスからの抵抗が小さくなり、ダストの中心星落下が起きにくくなることが示されており、外縁部でも大きく成長することができ、それが惑星の形成につながる可能性が示されたという。

  • 原始惑星系円盤

    ガス(左図)とダスト(右図)の流れの様子。オレンジ線、赤線それぞれがガスとダストの通り道(流線)を、白い矢印が流れの方向を表している。黄色い領域がシミュレーション内で形成された原始惑星系円盤を示している (C)塚本裕介 (出所:国立天文台 CFCA Webサイト)

研究チームでは今後、さらなるシミュレーション研究によってダストの運動やサイズ分布の詳細を解明し、その観測的特徴を明らかにすることで、アルマ望遠鏡などを用いた電波観測による降灰モデルの検証を行っていくとしているほか、円盤外縁での惑星の種や惑星そのものの形成過程を解明することで、星形成と惑星形成の理論研究を融合したまったく新しい理論の構築を進めていきたいとしている。

なお、シミュレーションを行った塚本助教は今回の成果に対し、「鹿児島にきて早五年。桜島の火山噴火を日々眺めていてこの研究の着想を得ました。この天空の降灰現象では、1年で地球の10分の1ほどの質量の灰が降って来ます。こうして円盤に降り積もった灰が、私たちが住む地球のような惑星や、さらには我々のような生命の素になったのかもしれません」とコメントしている。

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