いま、どのiPhoneを買おうか迷っているとしよう。アップルは「iPhone 12 Pro Max」から「iPhone SE」まで、これまで以上に選択肢を拡充している。だが、ここではアップルが販促に使う言葉から離れて、現実を見る手助けをしたい。ここではiPhoneの最新モデルを含む販売中の全機種をテストした完全版の「iPhone購入ガイド」として、「避けるべき」である機種の強みと弱みも紹介する。
iPhone SE(第2世代):お買い得なiPhone
第2世代のiPhone SEには、アップルの独自プロセッサーである「A13」が搭載されており、数百ドル(数万円)も高い2019年の「iPhone 11」や「iPhone 11 Pro」と同じパフォーマンスを得られる。iPhone SEのディスプレイは4.7インチと小型だが、本体のサイズは最小ではなくなった(最小モデルの座はiPhone 12 miniに譲っている)。
そしてこれは、いま購入できる最後の旧デザインのiPhoneでもある。厚いベゼル(画面の枠)とホームボタン、ロック解除用の指紋認証システム「Touch ID」を備えている現時点で唯一のモデルだ。残念ながらヘッドフォンジャックはない。
ワイヤレス充電や高性能なシングルカメラといういまの時代にふさわしい魅力的な機能もある。とはいえ撮影した写真の品質では、「iPhone 12」や「iPhone 12 Pro」には及ばない。ナイトモードがないので夜間の撮影も通常モードになる。
また、過去のレヴューにもあるようにバッテリーの持続時間は短く、平均的な使用で1日もつかどうかだ。iPhoneを買いに出かけて最新モデルの価格に尻込みした人には、このiPhone SEをすすめたい。なかでもポケットに入らない大画面スマートフォンを嫌う人に向く。もちろん低価格モデルならAndroidスマートフォンという選択肢もある。
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iPhone 12:旧モデルからのレヴェルアップに
iPhone 12は、いま購入するなら選ぶべきモデルだろう。なぜなら、これまで「Pro」モデルだけに搭載されてきた有機EL(OLED)ディスプレイが搭載されたからだ。6.1インチのディスプレイはiPhone 11の液晶と比べて黒の表現がさらに深く、色彩の幅も広い。また、ピクセル数がiPhone 12 Proと同じなので、映画やテレビ番組をよりシャープな画質で楽しめる。
過去のレヴュー記事にもあるように、最新のプロセッサー「A14」を搭載しているので処理能力も高い。iPhone SEと比べて高機能なカメラは、メインカメラのナイトモードを使えば暗い場面でもきれいに撮影できる。さらに超広角カメラなら、かなり広い範囲まで撮影できる。
アップルはiPhone 12シリーズにさまざまな新機能を搭載している。そのひとつがワイヤレス充電機能「MagSafe」で、ワイヤレス充電アダプターやレザーウォレットなどのアクセサリーを、磁石によって端末の背面に装着できる。
ディスプレイには、アップルがコーニングと共同開発した新素材「セラミックシールド」が採用された。ガラスにセラミック結晶の薄膜をコーティングすることで耐久性を大幅に高めた技術だが、結局はガラスではあるのでケースを使うのがいいだろう。
そして次世代通信規格の5Gに対応しているが、米国でのカヴァーエリアはまだ十分ではない。普通に使うだけで劇的に通信速度がスピードアップすることはまずないので、5Gのためだけにこの機種を買うべきではない。とはいえ、数年先なら状況は変わっているかもしれない。なお、バッテリー持続時間は残念ながら前機種に比べて向上していないが、平均的な用途ならおそらく1日はもつだろう。
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iPhone 12 mini:小型サイズが欲しいなら
巨大なスマートフォンのことが嫌いなら、このiPhone最小のモデルがいい。iPhone 12 miniの本体サイズはiPhone SEより小型だが、ディスプレイは5.4インチと大きい。そこにiPhone 12のあらゆる機能が詰め込まれている。顔認証「Face ID」から有機EL(OLED)ディスプレイ、5G対応、超広角と広角のデュアルカメラ、ワイヤレス充電、高速プロセッサー「A14」まで揃っているのだ。
iPhone 12 miniは小型であるがゆえに、映画鑑賞や文字入力には不便かもしれない。とはいえ、さまざまな画面サイズのデヴァイスをもっているなら、もっと大きな画面の別のデヴァイスを利用する機会が増えることになるだろう。
なお、デメリットはスピーカーの音量が小さく、バッテリーの持続時間が短いことだ。なにしろバッテリーが1日もたないのだが、もちのよくないバッテリーはiPhoneでは珍しくない話ではある。
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iPhone 12 Pro Max:「最強」の選択肢
iPhoneの購入に必ずしも1,000ドル(約11万円)以上を払う必要はないとはいえ、最高のカメラ体験を望んでいて予算に制限がなければ「iPhone 12 Pro」シリーズがベストだろう。なかでも「iPhone 12 Pro Max」がいい。
iPhone 12 Proより100ドル(約1万円)高いこのモデルは、カメラに大きなイメージセンサーと優れた手ぶれ補正技術を搭載したことで、より多くの光を取り込めるようになっている。このため暗いシーンにおいても、どのスマートフォンよりも優れた写真や動画を撮影できる。
iPhone 12 ProもiPhone 12 Pro Maxも望遠カメラを搭載しているが、iPhone 12 Pro Maxのほうがズーム倍率が少し高い。また、どちらのモデルもレーザー光を使って距離を測れる「LiDAR(ライダー)」スキャナーを搭載している。このためオートフォーカスが高速になり、ナイトモードでもポートレート撮影が可能になった。
さらに6.7インチのディスプレイを搭載した史上最大のiPhoneであるiPhone 12 Pro Maxには、満充電からのバッテリーの持続時間が1日を超えるという強みもある。ここまでの大画面は不要だが高性能なカメラは欲しいなら、6.1インチのディスプレイを搭載したiPhone 12 Proがおすすめだ。
どちらのモデルも画質が素晴らしい有機EL(OLED)ディスプレイが搭載され、しかもiPhone 12のディスプレイより輝度が高い。本体のフレームは耐久性のあるステンレススティールが採用されている。
両モデルともにアップル独自の画像データ形式である「「Apple ProRAW」」に対応するので、大幅に自由度の高い編集と表現が可能になった。しかも当然ながら、5G対応や耐水性、HDR映像の撮影といったiPhone 12と共通の機能も備えている。
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iPhone 11:最新でなくても、いまだに高機能
アップルは旧モデルとなった「iPhone 11」を値下げして継続販売している。最新のiPhoneは欲しいものの財布と相談したいという人なら、絶対に検討対象に入れるべきだ。
iPhone 11に搭載されているプロセッサー「A13 Bionic」は、いまも高性能であることに変わりない。メインカメラと超広角カメラからなるデュアルカメラの性能は見事だ。メインカメラはナイトモードに対応しており、数秒間で露出の異なる数枚の写真を撮影することで、かつてのiPhoneと比べて暗闇のなかでも人物をしっかりと撮影できる。
ただし、iPhone 12シリーズのように側面がフラットで角があるデザインではなく、有機EL(OLED)ディスプレイやMagSafe、5G通信機能はない。それでもIP68の防水性能とワイヤレス充電機能を備え、バッテリーは約1日もつ。
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iPhone 11 Pro:大幅値引きなら買い得
アップルは2019年に発売したiPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxの販売を完全に終了した。しかし、だからといって買う価値がなくなったわけではない。
iPhone 11シリーズは十分に高速なプロセッサーだけでなく、メインカメラと超広角カメラ、望遠カメラの3台構成のカメラを背面に搭載している。フレーム部分はステンレススティールで優れた有機EL(OLED)ディスプレイを備えるほか、長時間のバッテリー持続時間、耐水性、ワイヤレス充電など、求められる機能が備わっている。
最新モデルであるiPhone 12は米国で829ドル(日本では94,380円)から購入できるので、iPhone 11シリーズに800ドル(約87,000円)以上は出さないほうがいい。ネット通販で新品同様のモデルを購入することを気にしないなら別だが、いまは小売店で探すことは不可能に近い。個人売買のサイトで新品もしくは新品同様で購入できる可能性はある。
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iPhone XR:安く買えるなら価値あり
「iPhone XR」は2年以上も前の製品とはいえ現時点でも優れたスマートフォンだが、アップルの販売価格である499ドル(日本では60,280円から)を出すほどの価値はない。あと100ドル(約1万円)を追加して、多機能なカメラを搭載してバッテリー持続時間が長いiPhone 11を買うほうが理にかなっている。
あえてiPhone XRを選ぶとしたら450ドル(約50,000円)以下で手に入る場合で、第2世代のiPhone SEのホームボタンがある旧デザインに抵抗があるならなおさらだろう。整備済製品があれば、たいていは429ドル(約47,000円)以下で手に入るはずだ。
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避けるべきiPhone:iPhone 1~8、iPhone X、iPhone SE(第1世代)
「iPhone X」や「iPhone 8」「iPhone 7」「iPhone 6s」、そして第1世代の「iPhone SE」といった古いモデルは、どこかで入手できる可能性があったとしても手を伸ばしてはならない。これらの旧モデルは最新のソフトウェアを処理する能力がなく、あったとしても近いうちにOSをアップデートできなくなる。このうち「iPhone XS」と「iPhone XS Max」なら検討には値するが、それでも400ドル(約44,000円)未満で購入できる場合に限る。
実際に「iPhone 6」では「iOS 14」にアップデートできなくなり、iPhone 6sも2021年には次期「iOS 15」に対応しなくなるだろう。こうしたアップデートに対応しないとセキュリティ面での安全性が徐々に低下し、やがて使えなくなる。
これらの旧モデルに搭載されたカメラもそこまで最新ではない。タダ同然で手に入るという理由でもなければ、価格が手ごろなiPhone SE(第2世代)のような今回リストアップした機種をすすめたい。
いまは「買いどき」なのか?
高価なiPhoneを購入した直後に新モデルが登場した──といった事態は絶対に避けたい。だが、最新モデルが揃っているいまなら心配しなくていい。おそらくアップルは2021年9月まで最新モデルを発表しない可能性が高いからだ。
もしiPhoneの買い換えを考えているなら、まずはバッテリーの交換を検討してほしい。最大の問題がバッテリーのもちなら、バッテリーを交換するだけで最新モデルに買い換えた気分になるだろう。旧モデル(iPhone 8以前)のバッテリー交換は49ドル(日本では5,940円)で、iPhone X以降なら69ドル(日本では8,140円)だ。
MagSafe対応のケース選びは慎重に
iPhoneの本体は両面がガラスになっており、セラミックで強化されているとはいえガラスは壊れやすい。そこでケースが必要になる。通信キャリアもアップルもこの事実を踏まえ、iPhoneユーザーに60~70ドル(約6,500〜7,600円)もするケースや高価なアクセサリーを売りつけようとする。価格を気にしないなら、どれを選んでもいいだろう。
磁石を使ったMagSafeによるワイヤレス充電は、最新モデルであるiPhone 12シリーズでしか使えない。MagSafe対応のアクセサリーは、まだそこまで多くない。アップルはiPhone 12の背面に装着できる高速充電用のワイヤレス充電器とレザーウォレットを販売している。
もしケースを使うなら、アップルのアクセサリーを強力に装着できるMagSafe対応のケースを選ぶべきだ。磁石が内蔵されていなくても薄いのでMagSafeで充電できるケースもあるが、MagSafeのエコシステムに投資したいと考えているなら、磁石を内蔵したケースを選ぶのがいいだろう。
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