AppleのM1搭載、新iMacが発売になりました。M1の性能とカラフルでコンパクトなデザインがひとつになったiMac、普段デスクトップマシンは射程外の人でも気になる存在だと思います。
米GizmodoのCaitlin McGarry記者が、正式発売に先がけて1週間ほど使ってレビューしていますので、以下どうぞ!
私がパソコンを使い始めた頃のパソコンって家族のコンピューターで、巨大なタワーと分厚いモニターがダイニングルームのデスクに設置されてました。キュートなマシンなんかじゃ全然なく、プライバシーは皆無で、みんなの共有マシン。兄弟と交代で使って、学校の宿題をしたり友だちとチャットしたり、あやしいファイル共有サイトからウイルス満載のMP3ファイルをダウンロードしたりしてましたね…黄金時代でした。
Appleは独自シリコン搭載の初のiMacによって、家庭用コンピューターを再定義しようとしています。24インチの新iMacはホームオフィスからキッチンへ、そしてリビングへと簡単に移動できますが、それは単に色がカラフルでインテリアにマッチするからじゃありません。本当に軽くて、日々家の中で移動しながら使うくらいはまったく問題ないんです。
このコロナ下でたくさんの人がリモートワークやリモートスクールを求められた結果、Macの売上は急増しました。でも今、ワクチンが広がりロックダウンが緩和される中で(訳注:米国では)、これからの仕事や家での生活がどうなっていくのか考える時期に入りつつあります。
24インチのiMacはごく有能で愛らしいマシンですが、コンピューターの世界でどういう位置づけになるのか、私はまだはかりかねてます。最近の若い世代は、学校ではChromebookを使い、それ以外の場面では全部スマホで事足りてます。ノートPCでコロナを乗り切ってきた社会人なら、在宅ワーク環境はもう整えてしまったか、かつてのオフィスワークに戻るのを心待ちにしているかで、今新たにデスクトップマシンを買うタイミングじゃないかもしれません。
私個人的には、M1 iMacを1週間近く使ってきて、ほぼすべての面で気に入ってはいます。それでも、このオールインワン型が自分に合っているのかどうか、確信が持てずにいるんです。
Apple iMac(24インチ、M1搭載)
これは何?:Apple初のM1搭載iMac。
価格:1,299ドル(日本価格15万4800円/税込)から。レビュー機は1,499ドル(同17万7800円)。
好きなところ:美しい色、持ち運びやすさ、高いパフォーマンス、1080pのWebカメラ。
好きじゃないところ:オールインワンにしては、構成の選択肢が少ないこと。
iMacが最後にデザインをオーバーホールしてから9年経った今、新iMacは大きく変身しました。24インチのディスプレイをふちどる白いベゼルは、旧iMacの黒いベゼルと形は似てますがもっとスリムです。ベゼルの下辺、ディスプレイの「あご」の部分は先代と同じく他の辺より太いですが、Appleロゴがなくなりました。その代わりここから下が明るい色になってます。この「あご」は単に見た目のためにあるわけじゃなく、この部分にiMacの頭脳が詰まっています。
背面には、レビュー機の1,499ドル(日本価格17万7800円)モデルには4つのポートがあります。Thunderboltポートは標準でもふたつあり、外付けディスプレイなどのThunderboltアクセサリーを使えば超高速データ転送ができます。さらにレビュー機にはUSB 3ポートもふたつあるんですが、ポート系はもうちょっと気前良く載せてほしいところですね。あとは電源ボタンと、フレームの左側にヘッドホンジャックがあります。
新iMacは7つのきれいな色展開で、レビュー機にはブルーを選びました。アルミのスタンドもメインの色にマッチさせつつ、本体側面・背面はもっと濃いアルミでコントラストがあります。ブルーのレビュー機だと背面は美しいコバルト色、「あご」部分とスタンドはもっと淡いベビーブルーです。先代iMacのビジネスライクな表情から一変していて、Appleはリビングやキッチンで使うことを想定したんだなと感じます。考えてみれば、ケースで隠れてしまうスマホより、家で人から見える場所に置くデスクトップパソコンをカラフルにするほうが意味があります。
このカラフルなデザインは、iMac G3のボンダイブルーをほうふつとさせます。あの頃はガジェットにも温かみやパーソナリティがあった気がします。iMacの白いベゼルは、発表イベントのときは賛否分かれてましたが、私としては自分が初めて買ったiMacを思い出します。あれは2006年頃、白いポリカーボネートのIntelバージョンでした。新鮮なのにちょっと懐かしい新iMacのデザイン、私はすごく良いと思います。ただAppleは今回丸みを帯びたデザインはやめて、本体の厚さは11.5mmとものすごくスリムになりました。重量も信じられないほど軽く、必要に応じて簡単に移動できます。
新iMacはキュートでカラフル、コンパクトです。そうしたい人にとっては、スマホ以上のステートメントにできます。冒険したくない人には、シルバーもあります。
M1がデスクトップにやってきた
Appleは同じM1をMacBook AirやMacBook Pro、Mac Mini、そしてiPad Proにも載せていますが、これはPCの世界では普通じゃありません。IntelやAMDといったチップメーカーはノートPCとデスクトップでは別々のCPUを用意し、さまざまな構成を選べるようにしています。M1マシンに関しては、選択肢はあまり多くありません。16コアのNeural EngineはM1デバイス全体で共通です。M1にはGPUも統合されてますが、これは7コアか8コアかの選択肢があります。メモリも8GBと16GBがあります。メモリはとくに大きくはないですが、チップに統合されてるので、クリエイティブ系作業でも十分使えるレベルです。メモリ16GBを標準にしてほしいところですが、現状では200ドル(日本価格2万2000円)追加でかかります。
M1の詳細記事ではチップのアーキテクチャとかAppleのARMベースプロセッサの独自性といった話をしてますが、ここでは深入りしません。端的にいうと、M1マシンのパフォーマンスの違いはGPUコア数と冷却システムの種類で決まります。ファンレスのMacBook Airは、私がレビューしたファン2機にヒートパイプ搭載のM1 iMacほど効率よくタスクをこなせません。(なお1,299ドル=日本の15万4800円バージョンは、ファンがひとつ、GPUは7コアです。)
この差はベンチマークに現れてます。M1に最適化されたHandbrakeとBlenderを使ってCPU、GPUのパフォーマンスをテストしたところ、M1 iMacはやすやすとM1 MacBook Airを超えてました。HandbrakeのGPUパフォーマンステストで、4K動画を1080pに変換するタスクでは、iMacでかかった時間は7分48秒でしたが、MacBook Airでは8 分52秒でした。ちなみにMacBook ProもiMacと同じくらい、8分弱でした。Blenderの3D画像レンダリングでは、iMacはCPUで5分13秒、GPUで6分18秒だったのに対し、MacBook AirはCPUで6分24秒、GPUで7分54秒でした。
新iMacのファンの音を聞いたのは、Cinebench R23のCPU・GPUテストをしてるときだけでした。Macの下側が触ると温かくなってましたが、熱いってほどじゃありません。AMDのデスクトップCPU・Ryzen 9 5950Xは、Cinebenchのシングルコアのスコアが1620・マルチコアが25114ですが、M1 iMacはシングルコアが1512、マルチコアが7622でした。
マルチコアだとM1 iMacが全然ダメみたいに見えますが、それは当然で、Ryzen 9 5950Xは16コアもあるんです。
比較のために去年の第10世代Intel Core i9搭載の27インチiMacを見てみると、同じベンチマークでシングルコア1234、マルチコア14183でした。シングルコアで比べた場合、M1が強力なのは明らかです。
24インチiMacをゲーミングPCの代わりにする人はいないし、それをオススメするつもりもありません。でも一応ゲーム系ベンチマークもやってみました(『Shadow of the Tomb Raider』と『Civilization VI』のAIベンチマーク)が、どちらもAppleのエミュレーションレイヤー・Rosetta 2上で動かしたので、M1ネイティブではありません。結果はM1 MacBook Air・MacBook Proと同じでした。M1に最適化されたゲームがもっと増えればと思いますが、Apple Silicon Gamesで探してみたところ、メジャーなタイトルのほとんどはRosetta 2経由でプレイできるみたいです。M1で直接プレイしたときにパフォーマンスがどれくらい上がるのか、見てみたいです。
とはいえ、コア数とかスレッド数、オーバークロックできるかとか、スペックを隅々まで予算内で最強化したい、みたいな人は、M1 iMacのターゲット層じゃなくて、それでいいんだと思います。そういったカスタマイズは、他にやってるメーカーがたくさんあります。ちょっと俯瞰して言うと、AMDがパフォーマンスの限界を高めているのはすごく良いと思うし、Intelがんばって、とも思います。AppleがMacのチップを自前で作っているのも、違う理由で良いことです。Appleはパフォーマンスを犠牲にすることなく、ハードウェアとソフトウェアをより緊密に統合できることを証明したんです。
新iMacが向いてるのは、クリエイティブな仕事をしたくて、かつ選択肢はシンプルなほうがいいって人、そしてmacOSを使いたい人です。M1に最適化されたPhotoshopでエフェクトを加えたりすると恐ろしく高速で、大事なのはそこです。
オーディオとカメラもアップグレード
新iMacは、指向性ビームフォーミングを持つ3マイクアレイを搭載していて、このマイク性能はZoomとかでのビデオ会議に効いてきます。つまり、自分の声が他の人に聞こえやすくなり、発言をかぶせられたりしにくくなるはずです。
スピーカーは6基あり、2対がフォースキャンセリングウーファー、1対が高性能ツイーターで、空間オーディオ(Apple版サラウンドサウンド)を実現します。空間オーディオ、ほんと最高です。AirPods Maxのレビューで詳しくテストしましたが、iMacでも同じくらいその効果が感じられます。
Dua Lipaで踊ってるときでも、Apple TV+で『ウルフウォーカー』に浸ってるときも、iMacのスピーカーはバランスが良く、輝くような高音、温かみのある中音、低音はパワフルながら出しゃばらないんです。
『ウルフウォーカー』といえば、映画全般もそうですが、とくにこの作品みたいなカラフルでマジカルなアニメーションは、新iMacでは映えます。24インチ4.5K RetinaディスプレイはDCI-P3の広色域対応で、10億色以上を表現できるんです。といってももちろん大画面TVの代わりにはならないし、大人数で見るのには向かないですが、ひとりで何か見てまったりするには十分です。
でもM1 iMacで一番気に入ったのは、間違いなく1080pのWebカメラです。これ本当に素晴らしいんです。
私は今ビデオ会議してる時間が長くて、幸い自分の仕事部屋があってそこに大きな窓もあるんですが、北向きなんです。なので日光が直接入りません。天井のライトはきつすぎて、机にランプかリングライトでも置けばやわらぐはずですが、そこまでやるのも、という感じで。M1 MacBook Airの720p FaceTimeカメラでは、M1の画像信号プロセッサが改善してるとはいえ、やっぱり粒子が目立って光のきつさが感じられます。去年のIntel iMacの1080pカメラはかなりの進歩でしたが、新iMacの1080pレンズとM1画像信号プロセッサはさらなる神技を成し遂げてます。私の部屋でも、まるで映画のセットみたいなライティングに見えます。どんよりした日で天井の光がきつくても、Google Meets上で見るとちゃんと光をディフューズしたかのようで、上の画像、ちゃんとライティングしたみたいじゃないでしょうか?
とはいえこの1年ちょっとのZoom生活で、カメラ映りはあきらめたって人もいるかと思います。そんな人はこのiMacのレンズを見ても、もういいよ…って感じかもしれません。でも私はすごく気に入ってます。
Appleらしいこだわりのアクセサリー
Appleらしく、iMacのカラフルなデザインはマシン本体にとどまりません。付属してくるアクセサリーも全部、本体の色にマッチするようデザインされてます。やりすぎ感があるほどですが、私的にはうれしいです。
色の合わせ方はさりげなく絶妙です。Touch IDキーボード(詳しくは後述)のキーは白のままですが、シルバーだったアルミの部分は、新iMacでは本体と同色で、私のはブルーです。Magic MouseとMagic Trackpadもメインは白ですが、サイドがブルーです。これらを充電するLightningケーブルもブルーです。ただマウスを充電するとき、そういやポートは相変わらずこの超不便な位置にあるから充電しながら使えないのよね…と思うと、ときめき半減ですけどね…。
で、Touch IDキーボードについて。私は最近MacのアンロックにApple Watchを使っていて、ときどきうまくいかないし、一瞬ではアンロックできません。でもTouch IDでは、指をセンサーにポンと載せると、その指を持ち上げる間もなくMacが立ち上がります。
Macでは複数ユーザーを設定でき、Touch IDでユーザーの切り替えもできます。そのためには各ユーザーに関してTouch ID設定の中で「ファストユーザースイッチ」をオンにしておく必要があります。またログイン時は画面上のメニューバーのユーザーアイコンをクリックしなきゃいけないので、1ユーザーでTouch IDを使うときほど素早くはないんですが、ログイン画面へのパスワード入力は回避できます。
で、誰向けなの?
24インチiMacはかわいくてパワフルです。すべてのタスクが、素早く簡単に軽々とこなせます。とくにクリエイティブ系の仕事の人は、M1最適化されたアプリのパフォーマンスに満足できるはずですが、正直個人的には、クリエイティブ系作業には去年の27インチiMacのほうが好きです。こっちのほうが超パワフルな構成にできて、画面が大きくて、Nano-textureコーティングされてて完ぺきです(私の理想世界では、持ってるデバイスみんなNano-textureコーティングされてます)。もちろん巨大なIntel iMacは20万円以上するし、Nano-textureガラスはプラス3万円以上で、かつIntelはAppleにとって過去のものなので、今はベストじゃないかもしれません。ただAppleシリコンはまだ始まったばかりなので、これからもし27インチiMac・12コアM2搭載なんてのがでてきたら…、それはなかなか楽しみです。
このiMacを使っていてずっと考えてたのは、Appleが手頃でスタイリッシュできれいな外付けディスプレイを作ってくれないかなってことです。要は中身なしのiMacですね。それがあれば、家でも仕事でも、M1 MacBook Proを美しいディスプレイにつなげられます。私のワークフロー的には、それが一番いいとこどりができます。
米国ではそろそろノーマルな生活が再開できそうっていうこのタイミングだと、ポータブルなほうが良いって人も多いかもしれません。そういう人はマシンは1台に絞って、家とか仕事ではディスプレイにつなぎつつ、移動中も単体で使えるのがよさそうです。でもホームオフィス専用に美しいオールインワンがほしい人とか、私が子どもの頃使ってたような家族用コンピューターがほしい人もいると思います。そんなシチュエーションだったら、24インチ新iMacは間違いなくぴったりです。
からの記事と詳細
https://ift.tt/3ugGZeG
科学&テクノロジー
Bagikan Berita Ini
0 Response to "このPCは家庭用コンピューターを再定義する:M1 iMacレビュー - GIZMODO JAPAN"
コメントを投稿