果てしなく広い宇宙であっても、地球のような惑星は希少な存在なのかもしれません。ナポリ大学のGiovanni Covone氏が率いる研究グループは、地球のように豊かな生物圏(生命が生息する領域)を持つ惑星がまれにしか存在しない可能性を示した研究成果を発表しました。
■植物の光合成に注目して10個の系外惑星の環境を分析
人類はこれまでに4400個以上の太陽系外惑星を発見しており、そのなかには恒星のハビタブルゾーン(地球型惑星の表面に液体の水が存在し得る領域)を公転する地球に似た岩石惑星とみられるものも幾つか含まれています。こうした系外惑星は生命が居住可能な環境を有する可能性があることから注目されていて、今年後半に打ち上げが予定されているアメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」をはじめとした次世代の観測手段がもたらすデータに期待が寄せられています。
Covone氏らは今回、ハビタブルゾーンにある系外惑星の居住可能性を検討する上で、地球の植物が行っている酸素発生型光合成に注目しました。植物が光合成によって水と二酸化炭素から作り出す有機物と酸素は、動物が生きていく上でも欠かせません。そこでCovone氏らは、惑星が恒星から受け取る光合成有効放射(PAR※)の量を算出することで、酸素発生型光合成が支える地球のような生物圏が存在する可能性を検討しました。
※…photosynthetic active radiation、植物が光合成に利用する波長400~700nmの可視光線
地球から約4.22光年先にある「プロキシマ・ケンタウリb」をはじめ、「ケプラー186f」や「TRAPPIST-1e」「同f」「同g」といった10個の系外惑星が恒星から受け取る光合成有効放射について研究グループが分析したところ、大半の系外惑星では酸素発生型光合成が地球ほど活発には行われない可能性を示す結果が得られたといいます。
研究グループによると、表面温度が約3700ケルビン(絶対温度)未満の恒星を公転する系外惑星の場合、光合成は可能であるものの地球のような生命圏は維持できないといいます。表面温度が約2600ケルビン未満の恒星を公転する場合は、光合成そのものが活性化されない可能性があるようです。また、表面温度が太陽(約6000ケルビン)よりも高温の恒星では光合成有効放射も強くなるものの、恒星の寿命が短くなるため、惑星上で複雑な生命が進化するのに十分な時間が得られない可能性が高まります。
いっぽう、今回の研究対象となった10個の系外惑星のうち「こと座」の方向およそ1200光年先にある「ケプラー442b」に関しては、地球のような生物圏を支えられる可能性があると研究グループは考えています。ケプラー442bは直径が地球の約1.34倍、質量は約2倍の岩石惑星とみられており、表面温度が約4400ケルビンの恒星「ケプラー442」のハビタブルゾーンを公転しています。
Covone氏は今回の成果について、地球のような状態の惑星が期待されるほど一般的ではない可能性を示しているとした上で、豊かな生物圏を支えるための最適な条件はあまりゆるくなさそうだと指摘しています。
なお、今回の研究は光合成有効放射を利用する酸素発生型光合成に焦点を当てたものであり、今後は近赤外線を利用する酸素発生型光合成や非酸素発生型光合成にも対象を広げる必要性に研究グループは言及しています。
関連:地殻の厚さも重要? ハビタブルゾーンでも水や大気がある惑星になるとは限らない
Image Credit: NASA, ESA, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)
Source: 王立天文学会 / MEDIA INAF
文/松村武宏
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