人間の言葉をしゃべってほしい。でもそれってやっぱり人間のエゴ?
ペットを飼っている方なら一度は絶対に思ったことがある「この子と話せたらなぁ」という気持ち。映画やアニメで動物たちとしゃべっているのを見ると羨ましく感じたり。これだけ科学と技術が進化してる今の世の中なら、もしかしてこの夢、実現できるんじゃないかも? って気がしませんか? ちょっと専門家の皆さんに聞いてみましょう。
ノースカロライナ州立大学電子・コンピュータ工学教授。
私は「話す」よりも「コミュニケーション」という言葉のほうが好きです。だってペットに話しかけることはいつだってできますし、ペットも彼らの言葉で私たちに話しかけているでしょ。これは実は毎日やっていることなんです。でも問題はペットからのメッセージを理解できるかどうかなんです。彼らの言葉を理解するには3つの方法があります。まず最初は、ペットの発声の仕方を理解すること。発声の仕方の違いが彼らにとっての「話す」なんです。2つめはボディランゲージです。ほとんどの場合、ボディランゲージにはメッセージがあります。最後3つめは心拍のスピードや筋肉の様子、息づかい、そしてストレスホルモンが放出されているかなどを確認することです。
私たちの研究チームではこういった体のシグナルをキャッチするためのウェアラブルデバイス、もしくは注射可能な電子センサーを使用しています。これによって私たち側のメッセージも伝えることができるのです。あとはパブロフの犬で有名な「古典的条件づけ」なども使用することもありますし、AIを使った実験も行なっています。こういった最新の技術を使ってペットやワークアニマルともっと意思をもった効果的なコミュニケーションをすることができる時代に入ってきていると思っています。
イエール大学心理学博士課程。
現在のところ、犬や他のペット動物が言語を取り込む能力があることを示しているエビデンスは存在していません。言語は我々人間特有のもので、人間に近いチンパンジーなども言語を操る能力を持っていないようだと言うことはわかっています。しかし、犬が私たちが言いたいことや合図を解釈することがとても上手だということもわかっています。犬がどのように私たちの合図やジェスチャーを理解しているかを学ぶことで、犬ともっと上手にコミュニケーションがはかれるようになります。とはいえ、犬がどの程度コミュニケーションというものを理解できるかは一方通行みたいなところがあって、私たちが犬に言っていることの多くを把握することはできても、相互のコミュニケーションを取る能力は犬にとっては高度すぎるようです。でも犬のコミュニケーションシステムを理解すればするほど、犬とのコミュニケーションの取り方はニュアンス的な感じになっていくことに気づくかもしれません。
今、TikTokで人気の犬「バニー」と一緒に研究しているグループがいるんですが、このバニーは人間の言葉をボタンを押して話すんです。もちろんこのコミュニケーションの取り方がどれくらい通じているのかはまだ疑問が多いのですが、犬ともっと深いコミュニケーションをはかるという面ではかなり進歩している実験のひとつですね。
そして反対に、犬がどのようにコミュニケーションを取るかを理解するというのは長年研究されてきた分野です。犬がどれくらい私たちの合図や仕草を理解しているか、話すトーンがわかっているかなどがずっと研究されてきています。実際に私たちの研究所でもこの研究をしています。現在研究していることのひとつは、ボディランゲージ、声のトーン、そして目線だけで犬はメッセージを理解できるかということです。これを私たちは「伝達の意図」と呼んでいます。
犬と話すのは言語によるものではなく、犬がどのようにコミュニケーションを取るかを理解することだと私は考えています。こちらが犬がわかりやすいような合図を出すことでお互いを理解できるというわけです。特にワークドッグとのコミュニケーションはいくつもの指示を出したりしますから、よりよいコミュニケーションはワークドッグと一緒に仕事をする上で大切なことです。あと、コミュニケーションが上達すると嗅覚捜査や捜索や救出もより役立ってくるでしょう。ということで、この方法はペットにも使えると私は思います。
コロラド大学ボルダー校生態・進化生物学名誉教授。
ペットは人間の言葉を話しませんが、よく観察してみると声や仕草、匂いなどで彼らがどのように私たちとコミュニケーションを取ろうとしているかがわかってきます。何が欲しいか、何が必要か、何をお願いしているかなどがよくわかってくるので、もっと何をあげたらいいか、何をしたらいいかが私たちもわかってくるのです。これができたら私たちが家に閉じ込めているペットによりよい生活をさせてあげることができるんですよね。
閉じ込めているというのはネガティブな意味ではありません。考えてみてください。だって動物をコントロールして私たちの生活に合わせているわけですから。何を食べるか、いつ食べるか、いつ遊ぶか、誰と遊ぶか、いつトイレに行っていいか、全部コントロールしていますよね。もし「話す」というのが人間の言葉での会話の意味だとしたら、ペットに私たちのようになってとお願いしていることになるので無駄な時間だと思います。だって彼らは私たち人間とは違うんですから。彼らは犬であり、それぞれ違って、それぞれ違う性格を持っているので、彼らにあったコミュニケーションの仕方をするのです。犬だから犬の表現をしているわけで、ロボットペットでも、毛が生えている人間でもありません。なので、犬のやり方をさせるというのが最も大切なことです。たとえそれがちょっと汚くてもです。
デューク大学進化人類学、心理神経学教授。
犬についてびっくりすることは、どれだけの数の言葉を彼らが学べるかということです。介助犬は少なくとも50の指令を知っています。チェイサーというある介助犬はなんと1,000以上の物やおもちゃの名前をわかっていたと言います。チェイサーは飛び抜けた能力を持っていました。新しい言葉を聞いたら、チェイサーはそれが新しいおもちゃのための単語だとわかっていました。なのでまだ名前と一致していないおもちゃを持って帰ってくるのです。チェイサーは教えられた全ての言葉を覚えていましたし、語彙はどんどん増えていきました。ただ1,000まで来たところでチェイサーの飼い主がトレーニングをする時間がなくなり、止まってしまったのです。
犬が私たちのことを理解してくれることはわかりましたが、これは一方通行のコミュニケーションです。ここで考えたいのは、はたして会話は両側通行であるのかということです。犬は声を変化させて、違う意味を表現できます。実験で、研究チームが犬が一人で吠えているときの声と、知らない人が近寄ってきたときに吠えている声を録音してみました。そしてその録音した声の違いがわかるか人に聞かせます。すると、犬を飼っている人も飼っていない人もほとんどの人が犬が一人で吠えているときと知らない人に向かって吠えているときの違いがわかったのです。
また、犬は行動でも違いを見せることができます。犬を飼っている人たちの多くは「遊ぼう」や「トイレに行きたい」などの犬からのメッセージをキャッチできます。声に出さなくてもこれだけ理解し合えているというのは驚きです。そしてもちろん、賢い犬たちは私たち人間のボディランゲージを読み取ることができます。ボールを投げて、犬がそれを見つけられなかったら、どこへ行ったか指さします。すると犬はその方向へ走っていきます。これはとってもシンプルに感じますが、犬は自分がわからないことを人間がわかっていて、それを教えてくれようとしていることを理解しているのです。このレベルの「読み」は人間の赤ちゃんなら文化や言語への入り口へ差し掛かかる9ヶ月くらいでできることです。犬と人間の会話はかなり高度なことですが、犬の心を読む訓練をしていけばもっと通じ合えるようになりますね。
ミネソタ大学生態進化行動学准教授。
はい、できますよ。もしペットがオウムのような話す鳥だった場合には。オウム研究で有名なI.M.ペッパーバーグ氏が飼っていたオウムのアレックスは言葉を理解することができ、さらに意味を理解した上で色、形、数字などの言葉を発声していたそうです。
言葉の真似ができない動物であってもテクノロジーの力を借りてコミュニケーションを学ぶことができます。サルは1970年代に言葉のトレーニングを受けていましたし、犬も電子パッドで人間とコミュニケーションを取ることができています。なので、実は私たちはすでにペットと話をしているんです。でも「今日はどんな気分?」だとか、「あの公園に行って遊んだときのこと覚えてる?」や「これから数日間旅行に行ってくるね」などの会話をすることができるかというと、それは難しそうです。こういった会話をするには高度な言語とマインドが必要になってくるからです。
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