帝国データバンクの調査によると、2020年(1〜12月期決算)のアニメ制作市場は過去最高を更新した19年(2557億円)を1.8%下回る2510億8100万円だった。11年以降、19年まで9年連続で拡大していた市場の増加傾向はストップした。
20年の国内アニメ業界は、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が国内興行収入400億円を突破して爆発的なヒットを記録した。京都アニメーション制作の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など話題作、『名探偵コナン』など定番シリーズも堅調なヒットをみせ、劇場版アニメの人気を下支えした。
テレビアニメは、30分アニメで『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』『呪術廻戦』などが人気となったほか、コロナ禍でのアウトドア人気を後押した『ゆるキャン△』などが話題となった。『ウマ娘 プリティーダービー』『BanG Dream!』など、スマホゲームなどと連動した複合メディアミックス型のアニメ制作プロジェクトが広がりをみせており、新たなファン層の獲得や人気の底上げにも結び付いている。
一方、日本アニメの人気が国際的に高まるなか、海外の動画プラットフォーマーや制作企業と取引を行うケースが増えている。アニメ制作企業300社のうち、外注や制作請負などで海外企業との取引が判明した企業は68社で、全体の2割超を占めた。中国企業との取引が最多で、韓国や米国企業との取引も多い。
近年、米国のネットフリックスや中国のテンセント、ビリビリなど海外の動画プラットフォーマーらが日本国内のアニメ制作企業に対する関心を高めており、独占配信などの直接契約・取引を行うケースが増えている。また資本提供や日本国内での制作スタジオ設立といった動きが加速している。
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10年ぶりに減少したアニメ制作市場
アニメ制作市場は11年以降、制作本数の増加や配信料などライセンス収入の増加に支えられ、19年まで9年連続で拡大していたが、20年は一転して縮小に転じた。
テレビアニメの制作本数が各社で減少したことに加え、当初から懸念された新型コロナウイルスの感染拡大による制作スケジュール遅延、番組編成の組み換えによる公開延期の影響も重なり、業績面で打撃を受けた。また、中堅規模の制作企業で経営統合などがあったほか、倒産や廃業なども発生し、全体の押し下げ要因となった。
さらに帝国データバンクでは、コロナ禍でも高評価の作品を作り続けてきた中国企業の台頭によって、以前より指摘されてきたアニメーターの労働問題や利益構造といった日本アニメ制作業界の課題が再びあぶり出されていると指摘する。設備や待遇面など多くの面で、中国企業が日本企業の環境と同等かもしくは上回るとされるなか、人材や技術の流出などによる日本アニメの停滞を懸念する声も上がり始めているという。
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損益面では二極化が進む
20年の制作企業1社当たり平均売上高は、8億3100万円だった。17年以降、19年まで3年連続で増加していたが、20年は前年から減少に転じ、増加傾向はストップした。売上動向では「増収」が31.6%、「減収」が48.6%となり、減収が増収を大きく上回った。
損益面では、「赤字」が37.7%で20年業績では最も高い割合で、「増益」(31.1%)、「減益」(29.5%)と続いた。このうち「減収」と「赤字」の割合は、ともに統計開始の00年以降で最も高い。
新型コロナの影響で、期中公開予定の映画・アニメで制作スケジュールの遅延などに見舞われた制作企業が多く、前年に比べて減収となる企業が多く発生した。また、これまで行ってきた人件費や最新設備などへの投資負担、外注量の増大によるコストの上昇が引き続き、多くの制作企業で収益の圧迫要因となっており、減収効果も重なって赤字計上となった企業が多く目立つという。
自社でコンテンツを有する制作大手や経営体力に余力がある元請では増益が多い一方、下請となる専門スタジオは赤字割合が過去最高となるなど、損益面では二極化が鮮明となった。
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