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サバイバルホラーADV『ソング オブ ホラー』日本語版紹介。難解な謎解きの果て、自らの好奇心に殺される - AUTOMATON

ゲームをプレイする原動力のひとつは“好奇心”だ。好奇心の赴くままに、知ろうと、解き明かそうと、歩みを進め、文書を貪り、未知の世界と出会う。刺激された好奇心が、さらなる好奇心を重ねがけしていく。そんな好奇心に応えてくれるのが、『ソング オブ ホラー』という作品である。

『ソング オブ ホラー』は、スペイン・マドリードを拠点に活動するProtocol Gamesによって開発されたホラーアドベンチャーだ。固定カメラの三人称視点のなか、探索や謎解きをベースにゲームを進行。随所で“それ”と呼ばれる、キャラクターを襲う未知の存在と対峙する。海外向けには既に発売されているが、8月26日、DMM GAMESより日本語版がPS4/PC向けに発売される(公式サイト)。Xbox One版も近日配信予定となっている。 

本稿では、DMM GAMESより提供されたPS4版をPS5の後方互換機能によりプレイし執筆している。また、本稿では作中に登場する一部の恐怖演出を解説している。ネタバレになる可能性は留意頂きたい。


本作の中心人物となるのは、新聞社に身を置く編集者「ダニエル・ノイヤー」。ダニエルが、家族ごと消えた小説家「セバスチャン・P ・ハッシャー」の捜索を依頼されるところから物語が始まる。複数のエピソードに分かれたストーリー構造となっており、エピソード1の舞台であるハッシャー邸を探索していくと、謎のオルゴールにたどり着く。このオルゴールとメロディに隠された謎に迫っていくというのが本筋だ。

エピソードの前後や要所では絵画調のカットシーンが用意されているが、物語の大枠の確認や、前エピソードの振り返りにとどまっている。キャラクターと同じく何もわからない状態のプレイヤーは、あくまで、探索を通じて拾得する手紙や新聞といったドキュメントを通じて謎に迫っていくことになる。現地で次の目的を手探りで理解していくデザインは、エピソードごとのミクロなナラティブ性を産み出している。

拾うことができるアイテムの組み合わせや、拾ったドキュメントをヒントとする謎解きも、本作の重要なファクターだ。基本的なエピソードの流れとしては、拾ったアイテムを使って、進む場所を拡張していくことになる。筆者は謎解きが得意なほうではないが、かなり難易度が高いと感じた。その先へ進むためのアイテムを持っているにも関わらず、それに気づかずにマップをウロウロしていることも少なくなかった。筆者の探索のセンスがなかったのかもしれない……。

また、プレイヤーの頭を搾り取るような本格的な謎解きやパズルも用意されている。探索中に見つけた走り書きのメモからなんとなく内容を想像し、それに対応したアイテムを並べ替えるようなものから、マップに散りばめられたレバーを操作して排水管を復旧させるものまで、さまざまなバリエーションが用意されている。ゲームらしいアシストが最低限にとどまっているのも、難易度を高く感じる要因のひとつだ。謎を解く鍵が与えられたら、それ以降は原則としてヒントが増えていくようなことはなく、頭をひねるしかない。解き終えたパズルが後に鍵として再び登場するなど、難易度が高い分、ひらめきや気付きに対する気持ちよさを存分に感じることができるだろう。


拾うことができるアイテムのほかにも、調べることができるオブジェクトはかなり多く、複数のプレイアブルキャラクターというシステムが生きてくる。詳しくは後述するが、キャラクターによってオブジェクトに対する反応が異なる。たとえば、プロローグ/エピソード1のハッシャー邸であれば、何も知らない新聞社のダニエルは、もちろんまったく知らない場所に来た反応を示す。ハッシャー邸の使用人であれば、ハッシャー邸の細かい異変に気づくことや、ちょっとした思い出などをつぶやくこともある。「あのキャラクターだったらどんな反応を示すか」と想像しながら歩き回るのは楽しい。また、そのオブジェクトが謎解きや物語の全容を明かすパーツではないかと、好奇心が刺激される。


探索を彩るホラー要素はさまざまで、第一に音やビジュアルによる恐怖演出が挙げられる。視界の端で点滅する光に一瞬だけ謎の人物が現れたり、謎の足音やタップ音が聞こえてくるなどの演出だ。ビジュアルによる一瞬の恐怖は、固定カメラの三人称視点との相性が良い。一人称視点や肩越しの三人称視点では、プレイヤーが注視している地点(中心視野)を主に見ることが多い。だが、固定カメラの三人称視点であれば、中心視野以外の部分(周辺視野)に恐怖の対象を置くことにより、「え、今いた?」と思わず二度見するような、意識外からの恐怖を与えることができる。見てはいけないものを見てしまったような感覚は、“視界の端”に対する恐怖を植え付ける。


音による恐怖演出も素晴らしく、地震のように建物が揺れるシーンではヘッドホンが震えるほどの音とコントローラーの振動で、本当に地震なのではないかと確認するほどであった。ホラーの定石であるが、静寂と対をなす大きなサウンドによる緩急のついた演出は健在であり、プレイヤーの焦りや恐怖を煽る。

本作では、ドアを開けるだけで死に至ることすらある。それを防ぐために、ドアに聞き耳を立てることができる。ドアの先に何かがうごめくような音がすれば、“それ”が潜んでいる可能性が高いため、開けない方が良い。「さっきの部屋に重要なアイテムがあったな」と聞き耳を忘れて思わずドアを開けてしまったときには、一瞬の緊張感が走る。加えて、1つのエピソードに1つか2つ程度の頻度ではあるものの、特定のアクションを起こすと確定でキャラクターが死んでしまうシーンもある。そのアクションを起こすことが益か死か、思わず足がすくむ恐怖は、後述するパーマデス制度も相まって賛否が分かれるかもしれない。

そして、実際に“それ”と対峙する際のゲームプレイは恐ろしい。“それ”はいくつかのバリエーションを持って攻撃してくる。対処方法はさまざまで、ドアから侵入しようとする “それ”を押さえ込むものや、視覚を持たない“それ”に気付かれないように息を潜めるもの、深淵に引きずり込もうとする“それ”を振り払うものなどが用意されている。“それ”の攻撃に対してプレイヤーは、キャラクターの動きを直接コントローラーに落とし込んだようなQTE操作で対処することになる。特に身を潜めるシーンは緊張感が高い。“それ”がすぐそこまで迫っていることを示す画面の演出と、これでもかと恐怖を煽る音。さらに、「見つかったら、終わり」というキャッチコピー通り、ここでミスをするとキャラクターをロストしてしまうという緊張感が組み合わさり、全身の毛穴が沸き立つのを感じる。


本作は、死んだキャラクターは二度と使うことができないシステム(パーマデス)を採用している。独立したエピソードによって構成された本作は、それぞれのエピソードに、複数のプレイアブルキャラクターが用意されている。“それ”に飲み込まれたキャラクターの物語はその時点で幕を閉じ、別のキャラクターで再スタートすることになる。前のキャラクターで手に入れたアイテムやドキュメントは、死亡した場所に落ちているので、まずはそれを拾うところから始まるという具合だ。原則として、使用できるキャラクターがすべて死んでしまった場合は、その時点でゲームオーバーとなり、エピソードの最初に戻ることとなる。キャラロストへの緊張感は恐怖と織り交ざり、ゲームを盛り上げる大きな要素のひとつだ。


クラシックなホラーゲームへのリスペクトを感じる本作ではあるが、操作系は現代のゲームに慣れているプレイヤーでも違和感ないものである。操作以外にも、見やすいマップを任意で確認できたり、基本的にいつでもセーブしてゲームを終了することができたりと、遊びやすさには気を遣っている。なお、一番低い難易度「E.T.A.ホフマン」では、キャラロストせず、“それ”との遭遇率が低まる。ただ、極端に低まった遭遇率では本作の恐怖体験を大きく削ぐことになってしまうので、ノーマル難易度に値する「エドガー・アラン・ポー」で遊ぶことを強くおすすめする。

難易度の表現はユニークだ


本作はシングルプレイ用の作品であるが、ホラー演出や謎解きが豊富であるがゆえに、フレンドと画面を共有してプレイしても楽しいだろう。幸い、各コンソールのシェアプレイ機能やPCの画面共有機能付きアプリなどを使うことで、ゲーム体験を遅延なくシェアできる時代だ。一人で遊ぶのは心細いという方は、フレンドを誘い、得体の知れない未知の存在へ共に恐怖し、難解な謎解きに共に頭をひねってみてはいかがだろうか。

「好奇心は猫をも殺す」ということわざの通り、危険が潜んでいる場所への警戒心を一瞬でも解くことが許されない恐怖は、本作の探索や謎解きを緊張感で彩っている。謎解きの難易度が高く感じるため、パズルが苦手な方にとってはマイナスになり得る。しかし、謎を解いたときの点と点が結ばれるカタルシスと、それに合わせてゆっくりと核心に迫っていく物語、そしてなにより、“それ”と対峙する恐怖と緊張から垣間見える純粋な恐怖表現への挑戦は、一見の価値があるだろう。

『ソング オブ ホラー』はPlayStation 4/PC(DMM GAME PLAYER)向けに、8月26日発売予定だ。Xbox One版も近日発売予定となっている。


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