M87超大質量ブラックホールの偏光画像。
EHT Collaboration
- 科学者たちはブラックホールのまわりの強力な磁場を撮影することに成功した。
- この磁場は物資がブラックホールに吸い込まれないようにするほどの強さがあることが分かった。
- 吸い込まれなかった物質は、ジェットの流れとなって宇宙に放出される。
2019年に初めて公開されたブラックホールの画像は、鮮明ではなく、にじんでいた。しかし、2021年3月24日に公開された新たな画像では、ブラックホールを取り囲む強力な磁場の様子を、より鮮明に見ることができる。
各国の科学者が参加する「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」のチームは2009年から、約5400万光年離れた巨大楕円銀河M87の中心にあるブラックホールを観測している。
ほとんどの物質はブラックホールに近づくと「事象の地平面」に吸い込まれていく。「事象の地平面」の先は、ブラックホールの重力が強くなり、光を含むあらゆるものを飲み込んでしまうのだ。しかし、一部の物質は深淵に飲み込まれることから逃れ、銀河の大きさをはるかに超える規模のジェットに乗って、宇宙に放出される。
EHTの科学者らは、今回の論文が発表される以前から、ブラックホールから物質が放出される際に、磁場が何らかの役割を果たしていると考えていた。
「(2019年に)最初に捉えた画像からは、磁場がどのような構造なのか、どの程度強いのかということは分からなかった」と、NASAハッブルフェローであるプリンストン理論科学センターのアンドリュー・チェール(Andrew Chael)は、Insiderに語った。
新たな画像を解析した結果、M87のブラックホールを取り巻く磁場はかなり強力で、地球の磁場の2倍から50倍であることがわかった。
「その磁場によって、ブラックホールに落下しようとする物質が押し返されている」とチェールは言う。
「ガスなどの物質はブラックホールに落ちていくものもあるが、磁場によって加速されて非常に遠くまで飛ばされるものもある」
望遠鏡で捉えた巨大楕円銀河メシエ87。
ESO
光が示す手がかり
チャールは、新たな画像でこれほどまでに詳細な情報が明らかになったのは、うれしい驚きだったと述べた。
「最初の画像を見て我々が考えたのは、解釈するのは非常に難しいだろうということだった」
彼らのチームがブラックホールの磁場を解析できたのは降着円盤、すなわちブラックホールの周辺をまわる高温の物質が発する光のおかげだ。光波は、強い磁場に遭遇すると偏光、つまり特定の方向を向くようになる。
偏光は、磁場の存在を示す指標となる。画像の光の方向を解析することで、磁力線をマッピングし、最終的にはその強度を推定することができた。
今回の研究は、天文学者がブラックホールの端に近い場所で偏光を測定した初めての例になった。
多くの望遠鏡の活用がブラックホール観測に役立つ
M87のブラックホールから吹き出すジェットの偏光画像。
ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Goddi et al.
EHTの科学者らは、世界各地にある8つの望遠鏡のネットワークを用い、M87ブラックホールを撮影した。チェールによると、EHTではさらに望遠鏡を増やし、最終的には動画の撮影を目指しているという。
そのような映像があれば、ブラックホールが物質を宇宙に放出する際の動きが明らかになるだろう。
「ブラックホールが物質を噴出する際に何が起きているのか、そのダイナミクスを見ることができるか」とチェールは問いかける。
「磁力線に沿って物質が放出されていく様子を映像で追うことができるのか、それを明らかにすることが当面の大きな目標だ」
少なくとも、数千光年におよぶブラックホールの大規模なジェットの姿を、より鮮明に捉えることはできるようになるだろう。現在のところ、ジェットはブラックホールから遠ざかるにつれて暗くなる。
「我々が特に見たいのは、ジェットがブラックホールと接する部分だ。あと少し望遠鏡の数を増やせば、見ることができるだろう」とチェールは述べた。
[原文:A mesmerizing photo shows powerful magnetic fields swirling around a black hole]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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