マイクロソフトが、Windowsをクラウドサービスとして提供する「Windows 365」の提供を開始しました。Windowsマシンだけでなく、MacやiPadなどからでもアクセスして、クラウド環境でWindowsとWindows用アプリを動かせます。働く場所や環境が多様化するハイブリッドワークの時代に、最適なサービスかもしれません。
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マイクロソフトが“クラウドPC”を発表
2021年7月、マイクロソフトから驚くような発表が突然行われました。OSである「Windows」のクラウドサービス版「Windows 365」を提供するというのです。
8月3日に提供開始したところ、申し込みが殺到。試用版の新規受付を一時停止するほど注目されています(8月4日時点)。
マイクロソフトは、なぜ新たにWindows 365というサービスをリリースしたのでしょうか。
Windows 365はどんなサービス?
まずは、Windows 365の発表資料(その1、その2)やサービスサイトから、どのようなサービスなのか整理しましょう。
クラウドでWindowsを動かすVDI
Windows 365は、Windowsの機能をクラウドで提供する仮想デスクトップ基盤(VDI)サービスです。ユーザーがインターネット経由でWindows 365にアクセスすると、「Cloud PC(クラウドPC)」と呼ばれるWindowsリモートデスクトップが使えます。アクセスする側のデバイスはWindows搭載PCのほか、MacやiPad、Linuxマシン、Androidデバイスが利用できます。
Windows 365のクラウド環境は、WindowsのOS機能が使えるだけでなく、当然アプリケーションが動き、データや設定も保存できます。つまり、対応デバイスからアクセスすれば、場所やOSの違いに左右されず、いつでも同じ環境で作業が行えます。別の場所にある別のCloud PCで行っていた作業も、すぐに再開可能です。
クラウド側で動くWindowsのバージョンは、まず「Windows 10」が用意されます。2021年後半に「Windows 11」がリリースされれば、Windows 365でWindows 11も選択可能になる予定です。
エディションは「Windows 365 Business」と「Windows 365 Enterprise」の2種類で、あくまでも企業向けサービスとして提供されます。料金は、ユーザー1人あたり月額2,720円(税別)から。
導入や集中管理が容易になるメリット
Windows 365最大のメリットは、統一されたWindows環境をユーザーに提供しやすいことです。ユーザー側のデバイスとしてオフィス用のデスクトップPCと移動用のノートPCを用意し、それぞれにWindowsや必要なアプリをインストールして、適切な設定を施す、という作業からIT管理者を解放してくれます。デバイスの種類もWindowsマシンに限定されないので、自由度が高まります。
Cloud PCの管理は、「Microsoft Endpoint Manager」を使って、従来のPCとまとめて行えます。Cloud PCの性能やストレージ容量が不足するような場合は、処理能力を高めたり、ストレージを追加したりできるので、物理PCより柔軟性があります。
作業で使うファイルなどのデータは、デバイスでなくクラウドに保存されるため、デバイス紛失にともなう情報漏えいの心配はありません。もちろん、保存されるデータや、ネットワークでやり取りされるデータは暗号化済みです。OSも常に最新状態にアップデートされ、ユーザーや管理者がセキュリティアップデートを意識する必要もなくなります。
ユーザー管理は「Microsoft Azure Active Directory(Azure AD)」で行い、ゼロトラストセキュリティや多要素認証(MFA)が採用されます。これは、働き方がリモートワークの在宅勤務や、オフィス勤務と組み合わせたハイブリッドワークへと多様化する時代に、必要とされるセキュリティ対策です。
Windows 365で使えるアプリは?
クラウド環境のWindows上で使えるアプリは、「Microsoft 365」「Microsoft Dynamics 365」「Microsoft Power Platform」など、ビジネス向けが用意されています。一般的な業務なら、ほぼこれでカバー可能でしょう。
マイクロソフトは、サードパーティーがアプリをクラウド対応させることも可能としているので、特別なアプリでなければWindows 365で動くようになるかもしれません。Windows 365用バージョンが提供されないアプリを使いたい場合は、Windows 365環境とデバイス側の環境を行き来する、という解決策もあります。
Azureより導入しやすく、中小企業でも
Windows 365で提供される機能は、すでに利用可能なクラウドサービスの「Microsoft Azure」で「Azure Virtual Desktop」を使えば実現できます。ただし、Azureはユーザー数が100人や1000人といった大規模な環境を想定していて、中小企業では導入しにくいサービスです。さらに、利用時間に応じて課金される料金体系なので、予算を立てにくい点も困ります。
これに対し、Windows 365は中小規模向けの月額料金制サービスです。Azure Virtual Desktopに比べると設定の自由度は低い一方、機能が限られている分、設定や管理は容易でしょう。
マイクロソフトは、コロナ禍で広まり始めたハイブリッドワークが、今後アフターコロナで中小企業も多く採用すると考えているようです。オフィスや自宅、ホテル、カフェなど、環境やデバイスが変わっても作業が続けられるWindows 365は、ハイブリッドワークに適しています。中小企業も導入しやすい内容のサービスを新規投入し、アマゾンの「Amazon Web Services(AWS)」が強いクラウド市場でシェアを拡大する計画のようです。
グーグルが同じような目的で手がけてきた「Chromebook」も、コロナ禍でシェアを大きく伸ばしました。Chromebookは、仮想デスクトップソフトウェア「Parallels Desktop for Chromebook Enterprise」を使えばWindowsアプリを動かすことができるので、Windows 365の強敵になりえます。
リモートワークや在宅勤務を実施する際に適したIT環境は、大きく変わってきました。Windows 365の最新情報を見逃さないようにしましょう。
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