琥珀はただ美しいだけじゃない。
時にねっとりと生物や植物を生きたまま絡め取り、やがてもろとも化石となって小さなタイムカプセルの役割を果たします。
ふつうの化石からも太古の生物について学べることは多いのですが、パンケーキのように平べったく、いささか臨場感に欠けます。その点、琥珀は立体的で、情報量が多い。それに、不意を突かれて琥珀に囚われた生物たちは、まるで生きていたときそのままのような自然なふるまいを後世に伝えてくれていて、リアリティーがあります。
以下、琥珀の中でひときわ壮絶な最期を迎えた者たちの姿をご覧ください。
愛の行為
今からざっと4千万年前のこと、始新世中期の終わりごろに、アシナガバエ(Dolichopodidae)のカップルが絶頂を迎えようとしていたその矢先に、頭上から降りかかってきた樹液に埋もれて絶命しました。
この琥珀はオーストラリアで発見されたレアもの。琥珀のほとんどは北半球で見つかっています。
なんとも切ない顛末ですが、死してなおもずっとずっと一緒にいられるのは本望?
キモかわいい
2017年にミャンマーで採取された1万年前の琥珀からは、新種の昆虫が発見されました。名はAethiocarenus burmanicus。すでに絶滅しています。ちなみに、ゴキブリ目だそうです。
デメキンのように突出した目も、三角形の頭部も、これまで知られている昆虫とは一線を画したユニークさ。出っ歯のように見える部分は首の分泌腺なのだとか。心なしか、おふざけマンガのコマ割りみたくなっているのがちょっと笑えます。
まったく新しい超小型無脊椎動物
クマムシ、ではないんです。「カビブタ」です。
これは2019年に初めて発見された新種の超小型無脊椎動物。クマムシにもダニにも似て非なるものだとか。
ドミニカ共和国で採取されたおよそ3000万年前の琥珀にほぼ完璧なかたちで保存されていたそうで、見ためが豚に似ていたこと、そして主にカビなどの真菌を食すことから「カビブタ」の俗称がついたそうです。
意表を突くエイリアン感。琥珀から取り出したら、もしかして蘇生しちゃったり?
二重の罠
昔むかし、白亜紀のころ。ある幸薄いダニが、クモにつかまって糸でぐるぐる巻きにされてしまいました。そこへさらに追い討ちをかけるようにネバネバした樹液が降りかかってきて、ダニをクモの糸ごと琥珀の中に閉じこめてしまったのです。
上から見ても、下から見ても、糸と琥珀に捉えられてがんじがらめになっているダニ。白亜紀のダニvsクモの攻防がここまで詳細に化石として残っている例は世界初だそうです。
わたしを離さないで
このシラミみたいなMesophthirus engeliという昆虫は、恐竜の羽とともに琥珀の中に封印されていました。
羽が実害を被っていることから、どうやらこのシラミはただなんとなく羽にしがみついていたわけじゃなく、ガチでパラサイトしていたと推測されています。こんなのにうじゃうじゃたかられたら、恐竜といえどもたまらないでしょうね。
こちらの琥珀はミャンマーで見つかったもの。少なくとも1万年前のものだそうです。
愛の戦士、参上
こちらのミャンマーで発見された1万年前の琥珀には、オスのイトトンボが閉じ込められています。
カマキリのように腕をもたげていますが、カマは持っていません。戦いのポーズでもありません。これ、メスを必死に口説こうとしている愛のポーズなんだそうです。
脚にはモリっと隆起してストライプ柄で強調された部分があり、そこを見せびらかすことでメスに「オレ、イケてるだろ!」とアピールしていたもよう。残念ながら、彼女の心を繋ぎ止めるどころか自身の命さえ繋ぎ止められずに、愛の戦士として未来永劫に祀られています。
なが〜いのは脚だけじゃない
森や公園でたまに見かける、なが〜い脚でフワフワと歩くザトウムシ。最古の化石記録は4億年以上前にまでさかのぼるそうです。こちらの琥珀はミャンマーで見つかった9900万年前の白亜紀のもので、中のザトウムシはおトゥイントゥインが完全におっきしたままで死んでいます。
激しすぎる行為の最中に誤って樹液へ転落したのでしょうか。それとも樹液にはまって、あまりの苦しさに血圧が上昇するなかで、おトゥイントゥインが勝手におっきしてしまったのでしょうか。
ナショナルジオグラフィックによれば、このザトウムシの立派なモノの長さは体長の約半分だったそうな。さらに、ハート型の先端から突起が伸びている特異な形状だったことから、Halitherses grimaldiiという新種として登録されたんだそうな。
※おトゥイントゥインとは、ギズモードが推奨する男性器の呼び方です。
ハチを食すクモ
まるで絵画のようにドラマティック。
およそ1億年前の白亜紀後期に由来するこの琥珀もやはりミャンマー産で、中には脚の毛一本一本のディテールまで読み取れる完璧なクモとハチの姿が保存されています。
このハチ、実はクモの卵に自分の卵を産みつけて寄生するタイプ。自分の卵が狙われて怒り狂った母グモだったのか、はたまた寄生ミッションはすでに完了していたのか…。2匹の当時の葛藤をあざやかに描き出しています。
悲しき運命
こちらも寄生虫の一種。アリの頭にダニが寄生している例としては最古のようで、少なくとも4400万年前のものと見られるそうです。
現代でも同じような寄生関係が続いている種もあるそうなんですが、いやこれ、ないわー…。だってアリの頭と同じぐらいのサイズですよ? こんなのを常時背負って、しかも体液を吸い取られ続けていたなんて。自然の過酷なリアリティーが琥珀のなかにまざまざと現れています。
世界一小さな恐竜?
鳥のようなくちばしを持った頭が…。
頭部の長さはわずか14.25mm。ひょっとしたら世界一ちいさな恐竜なのかもしれない、と当初は考えられていたそうですが、その後の研究でトカゲ類の頭部だと判明したそうです。
いずれにしても、驚くべき琥珀の世界。まるでそこだけ時が止まってしまったかのように、過ぎ去りし日々の情景を後世に伝え続けています。
Reference: ナショナルジオグラフィック日本版
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