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iPhone向けに開発した楽器アプリがM1搭載Macでそのまま動く衝撃 - ITmedia

 筆者のもとにM1 Macがやってきた。今回、導入したのは、「Mac mini」の8GBメモリ、256GB SSDという最安値構成モデル。各テック系メディアは、Apple M1 チップを搭載した新世代Macの驚異のコストパフォーマンスを連日のように、驚きの書きっぷりで伝えている。ならば、最安値M1 Macでどこまでのことができるのか試してみようと考えた。筆者は、音源制作を生業にし、楽器系のiOSアプリを4タイトルリリースしているので、主に、音楽系の話題を中心に触れていきたいと思う。

 第1回は、M1 MacにおけるiOSアプリの互換性について触れる。筆者は、次の4つのiOSアプリにプロデューサーとして関わっている。「Pocket Organ C3B3」「Super Manetron」「Alina String Ensemble」「Combo Organ Model V」。いずれも60年代から70年代のロックやジャズで使われたアナログの鍵盤楽器達だ。今回は、これらがM1 Macで起動するのか、そして、従来のiOS向けApp Storeに加え、Mac App Storeでどのようにしてダウンロードすることができるのかをアプリ開発者の目線でレポートする。

photo 急遽導入したため、設置場所に困り、キーボードスタンドの上に2Uのラックを置いてその上にMac mini、EIZOのモニター、ミニMIDI鍵盤、トラックボールなどを置く、急ごしらえ状態で運用。本体は埋もれている

 さらに、上記アプリ4つのうち、Alina String EnsembleとCombo Organ Model Vは、macOS向けのプラグインフォーマットである、AUv3に対応している。それならば、いち早くM1ネイティブ対応した「Logic Pro」にプラグインとして読み込めば、DAWに組み込んだ形でソフトウェア音源として機能するはずである。その辺りも検証してみた。

互換性が確保されたiOSアプリは、自動で配信開始

 M1搭載Mac miniの各種設定を終え、真っ先に試したのが、自ら開発したアプリが動くかどうかだった。そこで、Mac App Storeアプリを起動しアプリ名で検索を実行したが、全く表示されない。まるでこの世の中から抹殺されてしまったみたいだ。そこで、普通にWeb検索を実施し、App StoreのWebプレビューページを開いてみた。すると、そこには、今までなかった「こちらで表示:Mac App Store」というボタンが存在するではないか。

 このボタンをクリックするとMac App Storeに遷移し、自分のアプリが無事表示された。iOS版を購入済みであれば、「↓」付きのクラウドアイコンが表示されるので、そのままダウンロードできる。試しに、Intel Macから、同様の手順でMac App StoreのiOSアプリを開くと、「○○○(アプリ名)はiOS専用です」と表示されダウンロード不可能だ。まあ、当然であろう。

photo アプリのWebプレビューページに行くと、「こちらで表示:Mac App Store」というボタンが現れる

 iOS版アプリを購入済みであれば、簡単にダウンロードする方法もある。Mac App Storeの左下にあるアカウント名をクリックすると購入済アプリがずらっと表示されるので、「iPadおよびiPhone App」をクリックするとiOSアプリだけが表示される。ただし、開発者の側でMac App Storeに表示するか否かをコントロールできるので、購入済みであっても、表示されないアプリも存在する。

photo 左下にあるアカウント名をクリックすると購入済アプリがずらっと表示されるので、「iPadおよびiPhone App」をクリックしよう

 M1 Macの登場に合わせて、アプリの開発者向けに割り当られているサイト「iTunes Connect」の各アプリ管理ページに、「Appleシリコン搭載MacでのiPhoneおよびiPad用のApp」という項目が追加された。「このAppを配信可能にする」をクリックすることで、簡単に配信の可否を設定できる。

photo iTunes Connectのアプリ管理ページに、「Appleシリコン搭載MacでのiPhoneおよびiPad用のApp」という項目が追加された。ここで、配信の可否を設定できる

 Apple側の判断で互換性が確保されたアプリは、デフォルトで配信可能状態になっており、開発者が何もしなくても自動的に配信される。Mac App Storeへの配信を望まない開発者は、ここから意識的に配信不可を選択する必要がある。ただ、配信可能とされているアプリであっても、マルチタッチや各種センサーといったiOS特有の機能は使えないので注意しよう。

 試しに、筆者の4つのアプリのうちの1つを、ここで配信不可にしてみたら、該当するアプリのWebプレビューページから「こちらで表示:Mac App Store」ボタンが消えていた。

MIDIチャンネルを変えることで夢のマルチキーボード体制が実現

 さて、肝心のアプリが動作するかどうかの話に入ろう。結論から言うと、単純にダウンロードしただけで、あっけなく動作した。上記で書いたように、デフォルトでMac App Storeにも配信されるので、当たり前といえば当たり前なのだが、めでたい話ではある。

 開発者としては、M1 Mac用にリビルドするなど、なんらかの手立てが必要になるのではと予測していただけに、肩透かしを食らった格好だ。あまりの嬉しさに、自分のアプリを4つ並べてMIDIキーボードを接続して弾いてみると、すべてのアプリの音が一斉に鳴り、これまで聴いたことのないような荘厳な音色に圧倒されてしまった。

photo 4つのアプリを並べて、MIDIキーボードを接続して弾くと、すべてのアプリから一斉に音が出る

 アプリ(受信側)のMIDIチャンネル設定を変更することで、複数のアプリを起動した状態で、特定のアプリだけを鳴らすなど、弾き分けを行うことも可能だ。リック・ウェイクマンやジェフリー・ダウンズも顔負けの、自分の周囲に城を築くようなマルチキーボード体制が実現する。ちなみに、アプリのウインドウの大きさは、788×619ピクセルの固定で変更できない。

 ただ、上記、4つのアプリでMIDIチャンネルの設定方法が異なる。Alina String EnsembleとCombo Organ Model Vは、iOS版と同様、アプリ内から設定可能だが、Pocket Organ C3B3とSuper Manetronは、「Preferences」メニューから実施する必要がある。

 他のアプリにおいても、アプリ内から設定できない項目があれば、「Preferences」メニューをチェックしてみるといいだろう。

AUv3対応であればソフトウェア音源として機能

 筆者が共同開発した4つのアプリのうち、Combo Organ Model VとAlina String EnsembleはAUv3に対応している。ということは、Logic Pro上でソフトウェア音源として、トラックに割り当てられるのではないだろうか。早速試してみた。

 結果オーライだった。ちゃんと動作しMIDI鍵盤を接続してLogic Pro内で演奏することができる。ただ、結果オーライと言ったのには訳がある。Logic Proの起動時に非互換を知らせるアラートが出るは、Logicのプラグインマネージャー上では「検証に失敗しました」と表示されているはで、一時はすっかり諦めモードに陥ってしまったからだ。しかし、プラグインマネージャーの「使用」にチェックを付けると、ちゃんと各トラックに割り当てることができた。

photo Logic Proのプラグインマネージャーでは、「検証に失敗しました」と表示されているが、「使用」にチェックを付けることで動作可能

 使い込んでいるうちに、文字の表示が乱れたり、ボタンの反転表示がホワイトアウトするなどの症状が現れたりしたが、音源としての機能は終始問題なく動作し、ソフトウェア音源として十二分に機能することが確認できた。

photo Logic Proのソフトウェア音源トラックにプラグインとして割り当てることができた。もちろん、音も出るし、MIDIデータから演奏することもできる
photo こちらは、iOS版GarageBandに、AUv3の外部音源としてAlina String Ensembleを読み込んだ画面。前図のプラグイン画面は表示領域が広がってはいるが、各種ボタン類のレイアウトは、そのまま踏襲されていることが分かる

 2016年にiOSがAUv3に対応した際、上記の2つのアプリの共同開発者であるbismark氏(プレイバックサンプラー「bs-16i」の開発者)の尽力もあり、早期にAUv3対応を行うことができた。であれば次は、楽器アプリの開発者としてそのiOSアプリのリソースを活用し、macOS版のAUソフトウェア音源も作るべきであろうかと熟慮した時期もあった。

 ただ、そのときは、他の仕事が立て込んでいたこともあり、ウヤムヤになってしまった。だが、今、こうやってmacOSの方から歩み寄ってくれたことで、開発者として一切のアクションを起こすことなく、macOS版のソフトウェア音源を事実上リリースすることができたわけだ。私は今、涙腺を大いに緩ませながら、「Apple Siliconばんざーい」と叫んでいるのであった。

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