火星に接近する探査機「Perseverance 」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)
2020年7月、3機の探査機が火星に向けて旅立ちました。米国の「Perseverance (パーセベランス、パーサヴィアランス)」、アラブ首長国連邦(UAE)の「HOPE(アル・アマル)」、中国の「天問1号」の3機は、いずれも2021年2月に火星に到着する予定です。今回は火星についての基本情報から、生命の痕跡、そして火星探査ミッションについて、あらためて学んでみましょう。
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■火星の基本情報など
マリネリス峡谷を中心とした火星の全球画像(Credit: NASA)
地球のすぐ外側を公転する火星は地球と同じように主に岩石でできていて、直径は地球の半分くらい、地表の重力は地球の3分の1ほど。火星の自転軸は約25度傾いているので季節の変化も生じますが、大気は地球の約100分の1と希薄で、太陽からは平均して地球の1.5倍程度離れています。
火星の平均気温は摂氏マイナス60度ほど、最高気温は摂氏プラス30度とされています。希薄な大気は主に二酸化炭素でできていますが、北極域や南極域には水の氷も存在していて、南極域の氷の下に塩水の氷底湖が見つかったとする研究成果も発表されています。火星は太陽系のなかでは比較的地球に似ていて、過去に生命が存在した(場合によっては今も存在する)可能性も指摘されています。
火星の自転周期は24時間37分で地球の1日とほとんど変わりませんが、公転周期は地球の2年に近い687日です。公転速度は地球のほうが速いので、約2年2か月(約780日)ごとに地球が火星を追い抜くことになります。この時期は地球と火星が接近するため、日本では南の夜空に明るく輝く火星を見ることができます。2020年10月6日の最接近時には地球から火星までの距離が約6207万kmまで縮まり、木星よりも明るいマイナス2.6等で輝くとされています。
火星の情報
赤道直径:地球の約2分の1(約6800km)
質量:地球の約10分の1
表面重力:地球の約3分の1(約3.71m/s2)
太陽からの平均距離:約2億2790万km(約1.52天文単位)
自転周期:24時間37分(約1.03日)
公転周期:687日(約1.88年)
将来、宇宙飛行士による有人探査ミッションが行われるであろう火星では、現在も複数の探査機や探査車(ローバー)が活動を行っています。火星を周回する探査機は、氷と塵が堆積してできた崖が雪崩のように崩れる様子や、数百mの高さに立ち昇る塵旋風、火星全体を覆う大規模な砂嵐といった、火星のダイナミックな一面を撮影し続けています。
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■生命の存在や痕跡の発見も期待される
2012年10月に撮影されたキュリオシティのセルフィー(Credit: NASA/JPL-Caltech/Malin Space Science Systems)
現在の火星は寒くて乾燥した大地が広がる惑星ですが、昔の火星は今よりも温暖で、表面には海ができるほどの水が存在していたのではないかと考えられています。NASAの火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が2012年から探査を行っているゲール・クレーターにはかつて湖があったと考えられており、適度な塩分やミネラルが豊富で生命の存在に適した水質だったとする研究成果も発表されています。
2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターに着陸するNASAの新しいローバー「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」は、火星で誕生した可能性がある生命の探索を重要な目的としています。NASAはESA(欧州宇宙機関)と共同でPerseveranceが採取したサンプルを2031年までに地球へ持ち帰る無人ミッションを計画しており、人類が初めて手にする火星地表のサンプルになるかもしれません。
水で満たされていた頃のジェゼロ・クレーター西部を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)
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■火星では「火震」が起きている
NASAの火星探査機「インサイト」を描いた想像図。手前の地面に置かれている装置のうち左が地震計「SEIS」、右が熱流量計「HP3」(Credit: NASA/JPL-Caltech)
2018年11月に火星のエリシウム平原に着陸したNASAの探査機「InSight(インサイト)」は火星の内部を探ることを主な目的としており、ロボットアームを使って地表に設置されたインサイトの地震計「SEIS」は2019年4月に火星の地震(火震)を検出することに成功。同年末までに検出された地震は450回以上、最大の地震はマグニチュード4.0とされています。
いっぽう、インサイトにとってもう一つの重要な観測装置である熱流量計「HP3」は観測を始められずにいます。HP3はセンサーを地下5mの深さまで打ち込んで地下の熱流量を測定することで、火星の核(コア)が固体かそれとも液体なのかという謎に迫ることが期待されている観測装置です。ところが、着陸地点の下に想定よりも固く締まったセメントのような層が存在していたらしく、1年前の2019年10月には「the mole(モール、もぐらの意味)」と呼ばれるセンサー部分が崩れた土に押し戻されるという事態も発生しています。現在はロボットアームに取り付けられているスコップでモールの後端を押さえながら慎重に掘り進める作業が進められています。
After several assists from my robotic arm, the mole appears to be underground. It’s been a real challenge troubleshooting from millions of miles away. We still need to see if the mole can dig on its own. More from our @DLR_en partners: https://t.co/7YjJIF6Asx #SaveTheMole pic.twitter.com/qHtaypoxPp
— NASA InSight (@NASAInSight) June 3, 2020
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■日本も衛星フォボスからのサンプル採取ミッションを予定
NASAの「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」が撮影したフォボス(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)
火星には内側から「フォボス」と「ダイモス」という2つの衛星があります。JAXA(宇宙航空研究開発機構)が進めている火星衛星探査計画「MMX」では、このうちフォボスの表面からサンプルを採取し、地球に持ち帰ることが計画されています。
探査機にはドイツ航空宇宙センター(DLR)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が開発するローバーが搭載されることになっていて、打ち上げは2024年9月、火星とその周辺(火星圏)への到着は2025年8月、地球への帰還は2029年9月が予定されています。
火星圏に到着したMMX探査機の想像図(Credit: JAXA)
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Source: 国立天文台 / JAXA / NASA
文/松村武宏・sorae編集部
※当記事は2020年10月に公開した内容を再編集したものです。内容は予告なく追記や修正されることがあります。
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