東京都など1都3県は1月8日から2月7日、大阪府など2府6県は1月14日から2月7日を実施期間として、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言が行なわれた。
内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策のWebサイトでは、今回の緊急事態宣言について「飲食を伴うものを中心として対策を講じます」としており、職場への出勤は自粛要請の対象ではないとしている。
ただ一方で、対策の実効性を高めるためにテレワークの実施などにより「出勤者数の7割削減」を目指すことも求めている。
このテレワークを円滑に進める上で、大きなポイントの1つとなるのが従業員間でのコミュニケーションである。それぞれが異なる場所で作業するテレワークでは、オフィスで働いているときのように1つの場所に集まって会議や打ち合わせを行なうことができないためだ。
こうした課題を解決するツールとして、広く使われているのがWeb会議サービスだ。社内のコミュニケーションだけでなく、取引先や顧客など、社外の人との会議や打ち合わせにもWeb会議サービスは有効だろう。
ここでは、主要なWeb会議サービスをピックアップし、コミュニケーション方法やWeb会議時に利用できる機能などを比較した。なお検証は基本的にWindows版の専用アプリを用いて行なっているが、Google Meetに関してはWindowsアプリがないため、Google Chromeを使って検証している。
【表】それぞれのWeb会議サービスの違い | |||||
---|---|---|---|---|---|
Microsoft Teams | Google Meet | LINE | Skype | Zoom | |
映像配信 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
音声通話 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
テキストチャット | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
会議の録画 | ○ | × | × | ○ | ○ |
デスクトップ共有 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
特定ウィンドウ共有 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ファイル送受信 | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
ホワイトボード | ○ | ○ | × | × | ○ |
映像の背景をぼかす | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
カスタム背景 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
最大接続人数 | 有料版: 300 無料版: 300※1 |
無料版: 100 Google Workspace Essentials: 150 Google Workspace Enterprise: 250 |
500 | 50 | Basic: 100 プロ: 100※2 ビジネス: 300※2 企業: 500※2 |
ユーザー登録せずに会議を開催 | × | × | × | ○ | × |
ユーザー登録せずにほかの人が開催した会議に参加 | ○ | ○ | × | ○ | ○ |
Webブラウザでの参加 | ○ | ○ | × | ○ | ○ |
Windowsアプリ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
macOSアプリ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
iOSアプリ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Androidアプリ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
※1 今後数カ月間は参加者を最大300名とするとしている。期限は未定
※2 大規模ミーティングライセンスを別途利用することで、最大1,000名まで拡張可能
以下では、それぞれのサービスの概要を解説している。ぜひ自社にあったサービスを見つけていただきたい。
Microsoft Teams - 高機能がウリ
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software
グループや1対1でのテキストチャット、Web会議、ファイル共有などといった機能を統合したコミュニケーションプラットフォームとして提供されているのが「Microsoft Teams」である。
Microsoft 365の企業向けプランである「Microsoft 365 Business Standard」などを利用していればMicrosoft Teamsが使えるほか、Microsoftアカウントがあれば利用できる無償版も用意されている(ただし機能制限あり)。
Web会議サービスとして見ると、映像や音声、テキストチャットによるコミュニケーションが可能であるのはもちろん、デスクトップやウィンドウの共有、ホワイトボードの利用など、必要な機能はひととおり網羅されている。
なお無料版では1回あたりの会議の長さは1時間で、参加者は最大100名までという制限があるが、Microsoftでは「お客様がつながりを保つことができるように」として、今後数カ月間は会議時間を最大24時間、参加者数を最大300名と制限を緩和している(期限は未定)。
Google Meet - Webブラウザから手軽に使える
https://apps.google.com/intl/ja/meet/
もともとGoogleでは、テキストチャットやインターネット電話、ビデオ電話、Web会議が可能なサービスとして「Google ハングアウト」を提供していたが、2020年4月にWeb会議の機能が「Google Meet」として分離した。
映像と音声、テキストチャットによるコミュニケーションや画面の共有が可能で、背景のぼかしや変更が可能なほか、ユーザーが用意した画像を背景に利用することにも対応している。
WindowsおよびmacOS用の専用アプリがなく、パソコンからはWebブラウザで利用することになるが、使い勝手の面で不満を覚えることはない。なおiOS(iPadOS)およびAndroid向けのアプリは用意されている。
直接の競合となるMicrosoft TeamsやZoomと比較したとき、気になるのは会議の内容を録画する機能がない点だ。録画ができれば、会議の内容をエビデンスとして残しておけるほか、あとで内容を見返しつつ議事録を作成するといったことも可能になる。今後のアップデートでの対応を期待したい部分だ。
LINE - コミュニケーションアプリを会議に活用
コンシューマだけでなく、ビジネス領域においても手軽なコミュニケーションツールとして「LINE」が使われることは多い。そのLINEでも、Web会議のための機能として「LINEミーティング」を提供している。
LINEミーティングは、Windows/macOS用のLINEクライアントで利用できるほか、iOS版やAndroid版のLINEアプリでも利用可能だ。招待するためには、Web会議のURLを相手に送ればよい。会議の参加にLINEアカウントは必要となるが、主催者と友だちになっていなくても参加できる。なお友だちであれば、ダイレクトにLINEのメッセージで招待を送ることができる。
ユニークなのは、カメラ映像の背景を変更できる「背景エフェクト」に加え、自分の顔にさまざまなパーツをバーチャルに付け加えられる「顔エフェクト」や、映像の色味を変更する「フィルタ」の機能が用意されていること。ビジネスシーンで使うのは背景エフェクトくらいだと思われるが、オンライン飲み会などで顔エフェクトの機能を使えば盛り上がりそうだ。
LINEはすでに多くのユーザーが利用しているサービスであり、スマートフォンにLINEアプリがインストールされていれば、すぐにWeb会議が行なえることがメリットだ。そのため、面倒な手間を掛けずに取引先や顧客とWeb会議を行ないたいといった場面で活用できるだろう。
Skype - シンプルな実装でわかりやすい
個人向けのコミュニケーションツールとして、長い歴史を誇っているのが「Skype」だ。一時期、企業向けの「Skype for Business」も提供されていたが、すでに前述したMicrosoft Teamsに統合されているため、現在は個人向けサービスのみが展開されている。
このSkypeにもWeb会議の機能があり、最大50人で映像および音声でコミュニケーションを行なうことが可能だ。またデスクトップやウィンドウを共有し、ほかの参加者に見てもらえるほか、映像の背景をぼかしたり好みの画像を使ったりすることもできる。会議を録画できることも大きな利点だろう。
Skypeには「Meet Now」と呼ばれるサービスもあり、こちらはユーザー登録することなくWeb会議を行なえる。利用するには、Meet NowのWebサイトで会議の名前を入力すればよい。これで専用のURLが発行されるので、メールなどでほかの参加者に送れば参加してもらえる。
Microsoft TeamsにもMicrosoftアカウントだけで利用できる無料版があり、Skypeとの差は小さくなりつつある。ただ、複数のユーザーでのコラボレーションを前提としているMicrosoft Teamsに対し、Skypeはもともと1対1のコミュニケーションを前提としていたため、インターフェイスがシンプルでわかりやすい。Microsoft 365を利用していないのであれば、社内のWeb会議のためのツールとしてSkypeの利用を検討してもよいだろう。
Zoom - Web会議サービスの定番
https://zoom.us/jp-jp/meetings.html
Web会議サービスとして、多くの企業で使われているのが「Zoom」だ。Web会議サービスとして必要な機能がほぼ網羅されており、会議の録画やデスクトップ/ウィンドウの共有、ホワイトボードを使ったやりとりなどにより、密にコミュニケーションを行なうことができる。
なおZoomには「Basic」と「Pro」、「Business」、「Education」、「Enterprise」の5つのプランがあるが、Web会議中に利用できる機能に大きな差はない。ただ無料プランであるBasicでは、3人以上のグループ会議は40分までという制限がある。本格的に利用するのであれば、Pro以上のプランを契約したいところだ。
会議を録画したさいの動画ファイルの保存先も無料プランとPro以上の有料プランで異なる。無料プランの場合はローカル保存のみだが、有料プランであればクラウド上に保存可能であり、録画内容をほかの参加者と共有するといったこともできる。
なおZoomは以前、セキュリティやプライバシーの問題が指摘されていた。しかし2020年4月にZoomはセキュリティとプライバシー保護の強化に重点的に取り組む90日セキュリティプランを実施し、さまざまな問題を解決している。
NeWork - 気軽に雑談できてコミュニケーション機会を増やしやすい
ここまでで紹介したWeb会議サービスは、おもに会議や打ち合わせなどを行なうさいに利用するものだと言える。ただ従業員間のコミュニケーションは、会議や打ち合わせだけではない。たとえば作業中に疑問点があったとき、それについて知っていそうな人の席まで行って質問する、あるいは廊下ですれ違ったときに雑談するといったこともあるだろう。
テレワークで作業する場合、こうしたフランクなコミュニケーションは当然難しくなってしまう。もちろんWeb会議サービスを使う方法もあるが、ちょっと質問したいなどといったとき、いちいち時間を決めてWeb会議を設定するのは手間が大きい。
このようなちょっとした相談、あるいは雑談に最適なコミュニケーションツールとして、NTTコミュニケーションズからリリースされているのが「NeWork」だ。
NeWorkはWeb会議サービスの一種であるが、どちらかというと離れた場所にいる従業員同士でも、あたかもオフィスで働いているときのように、気軽なコミュニケーションを可能にするサービスだと言える。
特徴は、ログインしているメンバーのアイコンが画面上に表示され、そのなかの誰かをクリックすればすぐに話しかけられること。また現在の状態として「オープン(いつでもOK)」、「ワーク(話しかけるのは可)」、「ゾーン(集中時間)」の3つのモードを設定できるため、話しかけてよいのかどうかを判断しやすい。
「バブル」と呼ばれる部屋もある。こちらは、その部屋に参加しているメンバーとコミュニケーションすることが可能なもの。特定のテーマについて話し合うといった用途で利用できるだろう。
テレワークになってコミュニケーションの機会が減少している、あるいは新卒や中途採用で入社した従業員が気軽に質問や相談ができる環境を整えたいと考えているなら、NeWorkは有効なツールとなるだろう。
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