はぐれ惑星よ、どこへ行く。
この広い宇宙には、まったく予測がつかない動きをしている惑星もあるそうです。どの恒星の重力にも束縛されず、真っ暗な恒星間空間を己が勢いが導くままにつっぱしる、その名も「自由浮遊惑星質量天体」。個人的には「はぐれ惑星」のほうがしっくりくると思っているのですが。
さて、このところはぐれ惑星の発見が相次いでおり、最新の研究ではこれまでに観測された中でもっとも小さなはぐれ惑星の姿が明らかになったそうです。大きさはおそらく地球よりも小さめ。そんな小ぶりなはぐれ者を、しかも自ら輝かない漆黒の天体を、どうやって見つけ出したのでしょうか?
はぐれたものたち
天の川銀河にはひょっとしたら恒星の数よりもはぐれ惑星のほうが多いかもしれない、という研究論文をご紹介したのは今年の9月。『Astronomical Journal』に掲載された研究は、天の川銀河だけでも何千億、ひょっとしたら1兆個のはぐれ惑星が飛び交っているんじゃないか、と驚きの概算を発表していました。
はぐれ惑星はもともと恒星のまわりを公転していたものの、なんらかの理由で恒星系の重力に大きな乱れが生じて軌道からはじき出されてしまったものと考えられています。実は、我らが太陽系でも40億年前に同じようなことがあったと考えられているそうで、木星の強大な重力がまだ誕生して間もなかった別の太陽系惑星を宇宙のかなたへ吹っ飛ばしてしまったとか。
はぐれてしまう惑星の大半は地球の0.3〜1個分ぐらいの質量を持つ小さめの天体と考えられています。だからこそ、見つけ出すのは並大抵の苦労ではないようです。
極小のはぐれもの
つい先週『Astrophysical Journal』に掲載された新しい論文によれば、ポーランドの研究者チームが観測史上最小のはぐれ惑星の検出に成功したそうです。どれぐらい小さいかというと、誤差も含めて地球の0.3〜2倍ほど。データから推察するとおそらく下方の数値に近いんじゃないかと思われるそうです。要するに、地球よりも小さい可能性が高いんですね。
こんなに小さな天体を検出するための唯一の方法は、アインシュタイン先生の一般相対性理論が提唱するところの「重力微小レンズ効果(gravitational microlensing effect)」しかありません。
はぐれものレンズ
重力微小レンズ効果とは、「地球から見ている観測者と遠方にある光源(恒星など)との間に天体が一直線に並んだ時、その天体の重力が後方の恒星の光を曲げて確認できるもの」だと論文著者の一人であるPrzemek Mrozさんはプレスリリース上で説明しています。
「重力微小レンズ効果を観測するためには地球の観測者と、天体と、光源が完璧な線を結ばなければならないので、非常に稀なんです。光源がひとつしかないと、はぐれ惑星がその前を通り過ぎるのを待つのには優に100万年待ち続けなければならないでしょうね」。100万年ッ!
100万年も待つかわりに、研究者たちはチリのラス・カンパナス天文台に設置されている経口1.3メートルのワルシャワ望遠鏡を、恒星が密集している銀河系のバルジに向けたそうです。光源がたくさんあるところを狙った「数撃ちゃ当たる」作戦ですね。
そうしてやっと捉えた最小のはぐれ惑星は、たった42分しか重力微小レンズ効果を見せませんでした。レンズ効果にかかった時間からは天体の質量を割り出せるそうで、天体が大きければ大きいほど長い時間がかかるのだとか。42分は宇宙時間ではほんの一瞬にも満たない刹那で、そのことからも今回発見された惑星が極小だったことがわかるそうです。
はぐれもののひとり旅は続く
もちろん、この惑星がちゃんと主星のまわりを公転している可能性も無きにしもあらず。でも今回そのような恒星は見つけられなかったそうです。実際、今回見つけた惑星から半径8天文単位(1天文単位は約1億5千万キロメートル)以内に位置する恒星は皆無だったため、おそらく単独行動だったんじゃないかと考えられるそうです。
残念ながら、今回小さなはぐれ惑星についてわかったのはそれぐらい。化学的な構成や表面温度など、詳しいことはまったくわからずでした。
そしておそらく、今後もう二度とこのはぐれ惑星と出会えることはないでしょう。それでも、その姿を一瞬でも捉えられたこと、しかも地球上から望遠鏡で確認できてしまったなんて、すごいことですよね。
天涯孤独とはこういうことをいうんでしょうか。はぐれ惑星よ、君は一体どこへ行く?
Reference: Astrophysical Journal
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