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ムール貝がFitbitを付けてカナリアになる、とはどういうことか - ギズモード・ジャパン

水の健康のバロメーターに。

日々進化するウェアラブルデバイスが、ついに貝にも使われるようになりました。ノースカロライナ州立大学の研究チームが、ムール貝のための「カスタムFitbit」と称するデバイスを作り、その活動をトラッキングする実験をしたんです。ただその目的は、ムール貝の運動不足予防とかじゃなくて、ムール貝が住んでいる環境の水質汚染度を検知することにあります。

高性能のセンサーをムール貝に装着

IEEE Sensors Lettersに掲載された論文によると、「カスタムFitbit」の仕組みは、まず慣性計測ユニット(Inertial Measurement Unit、以下IMU)をムール貝の殻の上側と下側にくっつけます。IMUにはスマホやスマートウォッチに入っているのと同じ磁気計と加速度計が入っていて、それによってものの動きを検知します。そのセンサーはかなり正確で、貝殻の開き具合が誤差1度の精度でわかるそうです。

我々は基本的に、ムール貝の活動を追跡するためのカスタムFitbitをデザインしたのです。

同大学の電気・コンピューターエンジニアリングの教授で、今回論文共著者のAlper Bozkurt氏はプレスリリースで言っています。

海洋汚染の指標として活用

研究チームの発想は、環境に敏感な二枚貝(ムール貝とかハマグリ、カキなど)を、海洋汚染の生物指標として活用しようというものです。炭鉱でカナリアに毒ガスを検知させるような感じです。ムール貝は通常、上下の殻をそれぞれ別々に開閉しているんですが、状況によっては上下をパッと同時に閉じることもあります。この研究では、その同時に閉じられたときを有害物質が流れてきたサインだと仮定しました。ムール貝の上下の殻にIMUを取り付けているので、貝が自力で殻を閉じたのか、たまたま水の流れが強くて閉じてしまったのかは判定可能です。IMUは太陽電池で動くデータ処理システムにつながっていて、そこからセルラー通信でデータが送られます。なのでほんとに、フィットネスアプリとスマートフォン・無脊椎動物バージョンという感じです。

ムール貝やカキの殻がどれくらい開くのかを測定する方法は1950年代から研究されてきましたが、そこにはさまざまな障害がありました。

ノールカロライナ州立大学の疫学教授でこの論文共著者のJay Levine氏は言います。

貝の動きを妨げず、水中に設置でき、データを収集する仕組みが必要でした。今ついに、それができたのです。

ムール貝を犠牲にせずに水質汚染を検知できる

一般にムール貝が生物指標として使われる場合、我々が水質汚染を検知できるのは、貝が死んだ場合です。でもこのシステムを使えば、ムール貝が死んでしまう前に水質汚染を検知できるようになるかもしれません。

そして人間の活動量計と同じように、このデバイスもムール貝の健康状態や活動量をモニターするのに使えます。人間の場合、安静時心拍数とか、睡眠の質、運動の頻度といったことですが、ムール貝の場合、摂食を引き起こすような環境要因とか、それが温度に影響されるのかとか、有害な理由でなくても殻を閉じることがあるのかといったことになります。

「ムール貝のことはわかっていることも多いですが、わかっていないことも多いのです」とLevine氏。

これらのセンサーによって、我々は個体のベースライン値を設定し、環境変化に応じた貝の殻の動きをモニターする機会が得られました。

今までのところ、研究チームはムール貝専用Fitbitを250時間以上テストできていますが、まだリアルな自然環境で使えるかどうかは試せていません。プロトタイプでは、4匹のムール貝を同時にトラッキングできました。4匹というのは心許ないようにも見えますが、彼らいわく数十匹規模にスケールアップするのは簡単だそうです。

我々の目標は『ムール貝のインターネット(internet-of-mussels)』を構築し、個体および集団としての挙動をモニターすることです。

とBozkurt氏は言っています。

動物の動きで環境の状態を推定するって、他にもいろんな応用がありそうな気がしますね。

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