威厳のあるものを演出するという点では、シェイクスピアに並ぶものはいない。しかし、愛や喪失に新たな言葉を与え、文学史上最高の気の利いたジョークを披露してきたシェイクスピアでさえ、このフェラーリのV12がフル稼働したときに発するであろう騒音を表現するのに苦労したのではないだろうか。
世界がひとつの舞台であるならば、その舞台で最も大きな音を奏でる一台をここにご紹介しよう。これは、フェラーリ 812 コンペティツィオーネと、そのオープントップの兄弟車であるフェラーリ 812 コンペティツィオーネ Aだ。9,500rpmまで回して、V12を唸らせたなら、おそらくシェイクスピアも、このノイズについて完璧な表現を書けなかっただろう。
812 コンペティツィオーネは、当然のことながら、812 スーパーファストのバージョン違いであり、すべてがチューニングされた、別世界のスーパーファストのようなものだ。そして、自尊心のあるフェラーリと同様に、私たちはもう一度、魅惑的なV12の世界へと足を踏み入れる。
このコンペティツィオーネのために、フェラーリはピストンを再設計し、40パーセント軽量化されたチタン製コンロッドを取り付け、ピストンピンにダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを施し、クランクのバランスを調整した(クランク自体も3パーセント軽量化されている)。さらに、新しいシリンダーヘッド、F1-トラックによるカム(DLCコーティング)、再設計されたインテークシステム(マニホールドとプレナム)、可変ジオメトリーのインレットトラクトなどが採用されている。
その結果、出力は830cv、トルクは692Nmとなり、「レッドラインに向かって落ち込むことなく、カットオフまでとてつもないスピードで回転するエンジン」に仕上がった。レッドラインは9,500rpmと、より高い位置に設定されている。これはエンジンではなく、5幕のドラマなのだ。
このエンジンには、通常のスーパーファストに搭載されているものと同じ7速デュアルクラッチギアボックスが組み合わされているが、ここではシフトチェンジが5パーセント速くなるように調整されている。さて、冷たくてハードな数値をお伝えしよう。0-100km/hが2.85秒、0-200km/hが7.7秒、そして最高速度が340km/hを超えるというのは、そんなに冷酷な数値ではない。だって、これだとまさにスーパーファ…まあ、全部言わなくてもわかってくれるよね。
コンペティツィオーネには、4輪ステア、バージョン7.0のサイドスリップコントロール(別名ウォッチ・ディス・ヒーロー・モード)、新しいカーボンファイバー・ホイールの採用などにより38kgの大幅な軽量化が図られており、エアロパーツも豊富に装備されている。
新設計のエアインテーク、新しいボンネットの「ブレード」の両側に設けられたベント、エンジンの冷却に役立つアーチ型ルーバーなどを採用し、アンダーボディの開口部を減らしている。高速化に伴い、ブレーキの冷却性も向上しているため、SF90でデビューしたシステムを採用した。
812コンペティツィオーネでは、出入りする空気の流れを整えるために多くの作業が行われた。フロントのダウンフォースはスーパーファストに比べて30パーセントも大きくなっている。スーパーファストと同様、フロントディフューザーには250km/h以上で開くパッシブ・モバイル・エアロシステムが採用されている。
リアディフューザーは812の全幅に広がっており、スーパーファストでは左右にあったツインエキゾーストパイプが廃止され、片側1本のパイプになった。
また、過去10年間のF1マシンに見られたような「ブローン・リア・ディフューザー」が採用され、リアのダウンフォースを増大させている。スポイラーもより高く、よりワイドになり、新しいディフューザーと連携している。
また、お気づきのように、リアスクリーンの代わりにボルテックスジェネレーターが設置されている。これは、1)「リアアクスルの圧力場を再配分する」ためだが、2)見た目が非常にクールであるためでもある。コンペティツィオーネAにはこのジェネレーターがなく、代わりにフライングバットレスの間にブリッジが設置されているが、これはリアスポイラーに空気を流すという同じ効果がある。
フェラーリ自身は、コンペティツィオーネのデザインは「アグレッシブ」であるとし、新しいリアトリートメントは、栄光のフェラーリ330 P3/P4を思い起こさせると述べている。インテリアは812と同じだが、ドアパネルが軽量化され、中央に「ギアゲート」というテーマが置かれている。
フェラーリは、「812 コンペティツィオーネと812 コンペティツィオーネ Aのステアリングを握ると、ドライバーは公道やサーキットを問わず、クルマと一体になる」と言う。だが、両モデルを実際にハンドルを握れるドライバーはものすごく少ない。というのも、このモデルはV12フェラーリのリミテッドシリーズであり、少数しか製造されないからだ。そして、それぞれがかなりの金額になる。
結局のところ、シェイクスピアのハムレットのセリフになぞらえて言うと「誰の話でも聞いてやれ。しかし、途方もなくパワフルなV12を与えることはできない」のだ。
=海外の反応=
「J.クラークソンの言葉を借りれば、これは運転するのに「手に汗握る」ものになるだろう」
「最後のアシストなしのN/A V12だろうか?コンペティツィオーネAをお願いしたい。特に写真のようなイエローがいいね。素敵だ。でも、F12 TDFと比べてどうなんだろう?最近のフェラーリの中で最も素晴らしいものの一つだと思う」
「私にとってのクーペは、このモデルがよりハードコアなバージョンであることを意味している。奇妙なタイヤの追加もなしでお願い」
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