天の川銀河の果てから届いた、気の遠くなるようなお話。
地球からざっと8万光年離れたところ、天の川銀河のはずれに広がるハローの中に、ひときわ輝く「Palomar 5」と呼ばれる球状星団があります。2本の光の筋は潮汐テールと呼ばれるもので、幾千、幾万もの恒星が銀河の潮汐力に引っ張られて細く長くたなびいています。
このPalomar 5には、恒星よりもはるかに多い数のブラックホールが存在しているそうです。そして、いずれはそれらのブラックホールが10億年をかけてほかのすべての星を食い尽くし、球状星団はあとかたもなく消えてしまうということが、天文学者たちのシミュレーションにより明らかになりました。
最古の星々が集うクラスター
我らが天の川銀河は3部構成。中心には星やガスでできた銀河円盤が平たいコマのように回っています。円盤の中心にはバルジと呼ばれる星の分厚いふくらみが一段と輝きを放ち、そのさらに上層にある球形のハローが銀河円盤とバルジを包みこんでいます。このハローの中に無数に浮かぶ強烈な光の球が、球状星団です。
天文学辞典によれば、数10万個の星がほぼ球状に密集している球状星団は、主に渦巻銀河(そしていくつかの楕円銀河も)をとりまくハローの中に分布しており、天の川銀河では約150個が確認されているそうです。上のイメージのように、球状星団を望遠鏡で覗いてみると元気玉のよう。中心に行くほど星の密度が高くなり、星と星同士の輪郭がわからないほどまばゆい光を放っています。
Palomar 5は100億年前に誕生した球状星団です。天の川銀河自体がおよそ136億年前に誕生したと考えられていますから、銀河の中でも最古の星々から形成されているわけです。そして、ほかの球状星団と比べると質量が少ないわりにより広範囲に広がっていることもわかっていました。
じつは、ブラックホールだらけ
そして、最近「Nature Astronomy」誌に掲載された論文によれば、多数のブラックホールが存在していることがわかってきたそうです。
論文の筆頭著者で、バルセロナ大学の天文学者・ジールズ(Mark Gieles)氏によれば、
星の数から想定されるよりも3倍近く多い数のブラックホールがPalomar 5に含まれていることがわかりました。星団の質量のうち20%以上がブラックホールによって構成されている計算になります。
ブラックホールにはそれぞれ太陽の20倍ぐらいの質量があり、星団が誕生してまだ間もない頃、巨大な質量を持った恒星が超新星爆発を起こした際にできたと考えられます。
ジールズさんたちはPalomar 5の星々の軌道をその誕生から死に至るまでシミュレーションし、もともとはブラックホール対恒星の比率がもっと低かったことを突き止めました。ただ、時が経つにつれて星々は銀河の潮汐力にたやすく引き抜かれていき、それよりも質量の多いブラックホールが星団に留まることとなったそうです。
さらに、ブラックホールの中でも特に巨大なものが星団の中心に沈みこみ、その重力の影響でほかのもっと軽い星やブラックホールが星団の外にはじき出されたあげく、今のような構成になったと考えられるそうです。
星団の死、そして恒星ストリームの誕生
さらに、この研究によってPalomar 5以外の球状星団についてもわかったことがあるそうです。
共著者でイギリスのサリー大学所属の宇宙物理科学者・エーカル(Denis Erkal)氏曰く、
Palomar 5ほど"ふわふわ"で、明るくて長い潮汐テールを持つ球状星団は天の川銀河全体を見渡してもほかに類を見ないのですが、それでもPalomar 5が特別な存在ではないことを今回の研究は示しています。
なぜなら、同じように”ふわふわ”した、巨大なブラックホールをたくさん抱えた球状星団は過去にもあったであろうこと、そしてそれらはすでに天の川銀河の潮汐力によってバラされ、最近発見された恒星ストリームを形成したであろうことがわかったからです。
研究チームのシミュレーションによると、あと10億年もすればPalomar 5球状星団はあとかたもなく消え去り、中心を陣取る数個のブラックホールのみが残ると考えられるそうです。
まばゆいほどに輝く美しい球状星団を待ち受けているのは、無慈悲な終焉。だからこそ、星たちは今のうちから逃げ出しているのかもしれません。
Image: ESA
Reference: ESA, 天文学辞典, NASA, Nature Astronomy
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