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電源内蔵で容積5L。高性能ビデオカードも搭載可能な「NUC 9 Pro」を試す - PC Watch

 開発コードネーム「Quartz Canyon」こと「Intel NUC 9 Pro」は、「ビデオカードが搭載可能なワークステーション向けNUC」という変わり種のNUCだ。

 そのNUC 9 Proの上位モデルにして、Xeon E-2286Mを搭載した「NUC9VXQNX」のレビュアーズキットを借用する機会が得られたので、ベンチマークテストやビデオカードの換装などを試してみた。

NUC 9 Proの外装

 マットダークグレーでカラーリングされたNUC 9 Proの外装は、派手な装飾を排した落ち着きのあるデザインとなっている。特徴的な両サイドのメッシュパネルは吸気口で、天板に配置された2基の冷却ファンによって、両サイドから天板へのエアフローを構築している。

 前面パネルのインターフェイスは、USB 3.1 Gen2(2基)や、UHS-II対応のSDカードスロット、3.5mmヘッドセットジャック。バックパネルインターフェイスには、2系統のGigabit LAN、USB 3.1 Gen2(4基)、HDMI 2.0a、Thunderbolt 3(2基)、3.5mmオーディオ/TOSLINKコンボジャックを備える。

 NUC 9 Proは500Wの電源ユニットを内蔵しているため、リアパネルには電源ユニット用のAC入力と、電源ユニットの排気ファンが配置されている。

NUC 9 Proの内装

 NUC 9 Proの内部には、トップカバーとサイドパネルを取り外すことでアクセスできる。

 NUC 9 Proでは、CPUやチップセットなどを拡張カード形状の「Compute Element」に集約しており、これを拡張スロットやM.2スロットを備える「ベースボード」に接続している。

トップカバーとサイドパネルを取り外すとケース内部にアクセスできる
ケース内部にはNUC 9 Proのシステムを集約した「Compute Element」が「ベースボード」に接続した状態で内蔵されている

 CPUやチップセットが搭載されているCompute Elementには、メモリスロットやM.2スロットなども搭載されており、冷却ユニットのカバーの一部を取り外すことでアクセスできる。

 Compute ElementにメモリやM.2 SSDを取り付けるさいは、シャーシのクロスバーブラケットを取り外しておけば、Compute Elementをベースボードから取り外すことなく取り付け作業が行なえる。Compute Elementをベースボードから取り外す場合、ケーブルで接続されているフロントパネルインターフェイス用(オーディオ、USB)や、無線用のアンテナ、電力供給用のEPS12Vなどを外す必要があり、やや手間がかかる。

 ベースボードは、Compute Element接続用スロットのほかに、PCI Express 3.0 x16スロット、PCI Express 3.0 x4スロット、M.2スロットを各1つずつ搭載している。ベースボードのM.2スロットはCompute Elementの下に隠れる位置にあるため、利用するにはCompute Elementを一度取り外す必要がある点に注意したい。

 ベースボードの下には電源ユニットが配置されており、ベースボードとCompute Elementに電源を供給しているほか、ビデオカード用の補助電源コネクタが用意されている。このビデオカード用の電源コネクタは、L字型の8ピンコネクタと、ストレートタイプの6+2ピンコネクタが用意されており、ビデオカードの仕様に合わせて使い分けることになる。

ベースボード。PCI Express 3.0 x16スロット、PCI Express 3.0 x4スロット、SSD冷却用ヒートシンク付きM.2スロットを備えている
M.2スロットは最大M.2 22110サイズに対応。利用できるインターフェイスはPCIe 3.0 x4のみ
ベースボードの下に電源ユニットを搭載。搭載されているのは、80PLUS PLATINUM認証を取得したFSP製の500W電源だ
ビデオカード用の補助電源コネクタ。L字型の8ピンコネクタと、通常の6+2ピンコネクタが用意されている

ビデオカードの組み込み

 今回借用したレビュアーズキットに同梱されていたQuadro P2200は、補助電源コネクタによる電力供給を必要としないため、NUC 9 Proへの組み込みは簡単だ。また、ビデオカードの占有スロットが1スロットであるため、NUC 9 ProのPCI Express 3.0 x4スロットに他の拡張カードを搭載することもできる。

Quadro P2200を搭載したNUC 9 Pro。補助電源コネクタを使う必要も無いので簡単に組み込める
シングルスロット仕様のビデオカードを使った場合、PCI Express 3.0 x4スロットが利用できる。HDMIキャプチャボードなどを搭載するのも良いだろう

 一方、別途用意したASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINIを搭載した場合、2スロット仕様のビデオカードであるためPCI Express 3.0 x4スロットが利用できなくなるほか、カードサイズ的にもギリギリであるため補助電源ケーブルの処理に難儀した。Intelが互換性を確認しているビデオカードだけあって、最終的にはしっかり取り付けることができたが、これが搭載可能な最大サイズのビデオカードであると考えてよいだろう。

 なお、IntelはNUC 9 Proのテスト済みコンポーネントとして、組み込み可能なビデオカードのリストを公開している。NUC 9 Proに組み込むビデオカードを探す場合は、まずこのリストをチェックすることをおすすめする。

ASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINIを搭載したNUC 9 Pro。拡張カードの搭載スペースにぴったり収まっている
補助電源にはL字型の8ピンコネクタを利用した

ビデオカードを搭載したNUC 9 Proの性能をベンチマークテストでチェック

 NUC 9 ProにQuadro P2200、またはGeForce RTX 2070(ASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINI)を搭載して、ベンチマークテストやゲームでのパフォーマンスをチェックしてみた。

テスト時の構成
CPU Xeon E-2286M (8C16T、2.4~5.0GHz)
メモリ DDR4-2666 16GB×2 (2ch、19-19-19-43、1.20V)
システム用SSD Intel Optane Memory H10 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)
ビデオカード Quadro P2200 ASUS DUAL-RTX2070-O8G-MINI(GeForce RTX 2070)
グラフィックスドライバ 452.06 (27.21.14.5206) GeForce Game Ready Driver 456.38 DCH (27.21.14.5638)
電源 500W 80PLUS PLATINUM
OS Windows 10 Pro 64bit (Ver 2004 / build 19041.508)
室温 約26℃

 実行したテストは、CINEBENCH R20、TMPGEnc Video Mastering Works 7、Blender Benchmark、V-Ray Benchmark、PCMark 10、3DMark、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク、フォートナイト、VALORANT、レインボーシックス シージ、Microsoft Flight Simulator。

 CPUのXeon E-2286Mは、CINEBENCH R20において「3,400」を超えるマルチスレッドスコアと、「470」を超えるシングルスレッドスコアを記録している。ミニサイズのPCに搭載されたCPUとしては、なかなか優秀と評価できる数値だ。

 Blender BenchmarkやV-Ray Benchmarkでは、GeForce RTX 2070がQuadro P2200やCPUでの処理を凌ぐパフォーマンスを発揮している。CPU自体も高いパフォーマンスを備えているが、このように強力なGPUを用いて処理を実行できるのがNUC 9 Proの強みだ。

 ゲーム系のベンチマークテストでも、GeForce RTX 2070が素晴らしいパフォーマンスを発揮している。Microsoft Flight Simulatorのような重量級のゲームはもちろん、フォートナイトやVALORANTのように高フレームレートを期待したいタイトルでも高いフレームレートを叩き出しており、CPUのXeon E-2286MがゲーミングシーンでもGeForce RTX 2070の性能を引き出せる実力を備えていることが伺える。

消費電力と動作温度をチェック

 ベンチマーク実行中の消費電力をワットチェッカーで測定した結果が以下のグラフだ。

 アイドル時の消費電力は、Quadro P2200搭載時が24Wで、GeForce RTX 2070搭載時は33W。CPUベンチマーク実行中の最大消費電力は160W弱で、3Dベンチマーク中はQuadro P2200搭載時で最大218W、GeForce RTX 2070搭載時は最大353Wに達した。

 省スペースで省電力なPCというNUCのイメージとはかけ離れた消費電力となっているが、消費電力の大きなデスクトップ向けGPUを組み込んでいるのだから当然の数値だ。これほどの電力を消費するパーツを5Lサイズの筐体で運用できることこそ、NUC 9 Proの長所であると言えよう。

【グラフ15】システムの消費電力

 ビデオカードを搭載したNUC 9 Proのパフォーマンスは、5LサイズのPCとしては大変強力なものだが、消費電力の大きなパーツを小さな筐体に組み込んだとき、心配になるのは動作温度だ。十分に冷却できているのかを確かめるべく、動画エンコードを10分間連続で実行した場合と、最大消費電力を記録したFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク中の最大温度を測定してみた。

 測定結果をみると、ピークCPU温度はかなり高くなっているものの、サーマルスロットリングの作動温度である100℃には達していない。GPUに関しても、ブースト動作の基準温度であるTemp Targetのリミット値には達していないため、つねにブースト動作を維持できていた。

【グラフ16】ベンチマーク中の最大動作温度

 さきのグラフで最も高い温度を記録していた、GeForce RTX 2070搭載時のFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークについて、モニタリングデータをグラフ化してみた。

 グラフを見ると、CPU温度が95℃に達したのは瞬間的なものであり、ベンチマーク中のCPU温度の平均値は80℃少々であることがわかる。CPUクロックも4GHz前後で推移しており、Xeon E-2286Mのベースクロックである2.4GHzを大きく超えるブースト動作が持続していることが見てとれる。

【グラフ17】GeForce RTX 2070搭載時のモニタリングデータ

5L筐体に強力なGPU性能を組み込めるミニワークステーション

 Xeonを搭載するNUC 9 Pro「NUC9VXQNX」は、5Lサイズの筐体ながらハイエンドクラスのビデオカードを使用できる、ミニサイズのワークステーションだ。ミニPCのGPU性能に物足りなさを感じていたクリエイターやゲーマーにとって、デスクトップ向けの高性能GPUをこの筐体サイズで使えるベアボーンは魅力的だろう。

 NUC 9 Proには、CPUにCore i7-9850Hを採用した姉妹モデル「NUC9V7QNX」も用意されているほか、同じフォームファクターを採用するゲーマー向けNUC「NUC 9 Extreme (Ghost Canyon)」も用意されている。コンパクトな筐体で高性能なビデオカードを利用したいと望むなら、これらの製品を検討してみてはいかがだろうか。

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