ケナガマンモスの祖先であるステップマンモスを、シベリアで見つかった歯から抽出されたDNAを基に再現したイラスト。
Beth Zaiken/Centre for Palaeogenetics
- 3体のマンモスの歯の化石から採取したDNAを研究チームが解読した。
- 100万年以上前のDNAもあり、解読に成功したDNAとしては最古のものとなった。
- 遺伝子情報によって、歯の持ち主は、ケナガマンモスと北アメリカを席巻したコロンビアマンモスの共通の祖先であると判明した。
100万年以上前、マンモスたちは氷に覆われたシベリアを横断していた。そして移動の途中に残された歯と牙はシベリアの永久凍土で保存された。
研究者たちは、シベリアで発見されたマンモスの臼歯からDNAを抽出、解析し、驚くべき結果を得た。研究チームは2月17日、このDNAが100万年以上前のものであると発表した。解析されたDNAとしては最も古いDNAということになる。
これまでは、56万年から78万年前のものと推定された馬のDNAが、解析に成功した最古のDNAだった。
今回の研究で、研究者たちは臼歯が2種類のマンモスのものだと報告した。ひとつはケナガマンモスの祖先として知られるステップマンモス(トロゴンテリーゾウ)。スウェーデンの古遺伝子学センターの遺伝子学者ラブ・ダレン(Love Dalén)によると、もうひとつは「約120万年前のシベリアに住んでいた未知のマンモス」だという。
後者の新たに見つかったマンモスは約42万年前にケナガマンモスと交配し、その後、北アメリカを席巻することになるコロンビアマンモスを生み出したと見られる。
DNAでマンモスの祖先をたどる
シベリアのウランゲリ島でマンモスの牙を持ち上げるラブ・ダレンとパトリシア・ペクネロバ。
Gleb Danilov
今回、研究対象となった臼歯自体は新しく発見されたものではない。ロシアの古生物学者アンドレイ・シャー(Andrei Sher)によって1970年代に発見されたものだ。
しかし、ネイチャー誌に掲載された今回の研究は、この歯の年代を初めて特定した。特定のために、ダレンのチームはまず、シャーがこの歯を採取した地層の年代を調査した。
チームは未知のマンモスの臼歯を、発見された地名にちなんでクレストフカと名付けた。その一帯の岩は約110万年から120万年前のものだった。チームがアディチャと名付けたもう一方の歯は、約50万年前から120万年前の地層から発掘された。
研究チームは得られた地質年代の情報と遺伝子情報を比較した。年月を経て、DNAは変異(遺伝子配列の変化)を積み重ねていく。研究者は変異の数をかぞえることで、例えば種が枝別れするといった進化における重要な出来事が起こってから、どのくらいの年月が経ったかを推測することができる。
マンモスとゾウは約530万年前に同じ祖先から枝分かれしたことが、2018年の研究で報告されている。マンモスのDNAから読み取れる変異の回数を計算することで、研究者たちはマンモスの出現から枝分かれまで、どれほどの時間が経過しているかを見積もることができた。
「分岐した系統間に変異が多いほど、多くの時間が経過している」とイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の動物学者アルフレッド・ロカ(Alfred Roca)はInsiderに説明した(ロカ氏は今回の研究には参加していない)。
この方法によって、アディチャが約134万年前、クレストフカにいたっては約165万年前のものだと推定された。
ダレンのチームは、シベリアで見つかったチュコチヤと名付けた3つ目の歯からもDNAを抽出した。この歯は87年前のもので、最初期のケナガマンモスのものと考えられている。
シベリヤで発見され、チュコチヤと名付けられたマンモスの歯。
van der Valk et al./Nature 2021/Courtesy of Stockholm University
永久凍土が保存状態を良好に保つ
ダレンは古代のサイの化石も研究している。ダレンは2年前、170万年前のサイの歯に注目した論文を共同執筆している。このサイの標本はマンモスの歯よりも古いものだが、ダレンのチームはこの化石からタンパク質を発見したものの、DNAを採取することはできなかった。
生物の遺伝情報を少ししか利用しないタンパク質は、DNAに比べて有用ではない。
だがDNAも時間の経過によって劣化する。熱や太陽光に晒された場合は特にそうだ。そのため研究者たちは数十万年以上が経過した遺伝子を発見したことがなかった。しかしシベリアは、化石がDNAを保持できる可能性の高い環境だった。
「冷蔵庫の中の食品が腐敗するのを防ぐように、低温がDNAが劣化することを防ぐ」とロカは説明した。
シベリアの北東に広がる永久凍土から突き出したケナガマンモスの牙。
Love Dalén
とはいえ、研究者らが抽出したとき、マンモスの歯のDNAは断片化していた。ダレンによれば「数千万個の破片」に。
そのため、分析は困難だったが、今回の成果のおかげで古代の生物が交配し進化していく経過を研究する新たな契機となった。ダレンの研究チームは、これまで研究者たちの間で考えられてきたよりも、ずっと古い生物の遺伝子を解析できることを証明したのだ。
研究論文の執筆者たちは、今回の経験をもとに、さらに古いDNAを、永久凍土から出土した他の化石から抽出することが可能になると考えている。
「我々はまだ限界には達していない。今回の経験をもとに推測するならば、200万年前のDNAも解読が可能で、260万年前程度までは遡れる可能性がある」と分子考古学者で今回の研究の共同執筆者でもあるアンダース・グーセルシュトローム(Anders Götherström)はプレスリリースで述べている。「それ以前の年代になると、DNAを保存している可能性のある永久凍土が存在しない」とグーセルシュトロームは説明した。
(翻訳:忍足亜輝、編集:Toshihiko Inoue)
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