巨大生物にも影響が…!
いまや地球温暖化は、まぎれもない事実として、人類の生活にインパクトを与えています。今年も熱波で信じられないような温度の場所が現われ、もはやアスファルトまで破壊されるレベル。そして、意外なところにまで、マイナスのダメージが報告される時代になってきましたよ。
先月、科学ジャーナルの「Current Biology」には、米国立海洋大気庁(NOAA)やオレゴン州立大学の研究者らが調査を進めた、タイセイヨウセミクジラの観察研究報告が発表されました。いまやタイセイヨウセミクジラは、絶滅の危機にさらされており、すでに400頭ほどしか生存していないともいわれています。とりわけ直近10年間の減少スピードが激しく、タイセイヨウセミクジラを救うための保護活動も盛んになってきました。
タイセイヨウセミクジラの頭部には、それぞれ特徴的なカロシティ(callosity)と呼ばれる白い皮膚の斑紋があるため、上空からの撮影でとらえられた姿でも、追跡調査を進めやすいんだとか。これまで同研究では、1981年から2019年まで、個別に129頭のタイセイヨウセミクジラの成長を追いつつ、貴重なデータ分析を進めてきました。
こちらでは、その年ごとに撮影された、5頭のタイセイヨウセミクジラを比較していますが、どんどんと個体が小さくなってきているのがわかるでしょうか? 白い点線で示されている形は、もし1981年に誕生したタイセイヨウセミクジラであれば、その同じ年齢で、平均的に成長しているであろうと期待される大きさです。2019年と1981年のデータを比べるならば、全長が平均して1mほど小さい個体になっていたとのことですね。つまり、普通ならば、12m~15mの全長が平均的とされていたのが、7.3%も体長が縮んでしまったことになるそうです。
その原因としては、さまざまな要素が考えられます。たとえば、船に衝突したり、漁網などに絡まってしまって、ケガをしたりする危険性が増し、負傷した状態が続いて成長速度が落ちているのも一要因。特に、母親のタイセイヨウセミクジラが、こうした影響で十分に成長できないまま出産すると、その子どもも小さくなる傾向が観察されるようですよ。
ただし、こうした人的な要因もさることながら、それだけでは、ここまで個体の平均的な大きさが著しく減少したりはしないとの見解が示されています。むしろ、大々的な要因には、地球温暖化の進行が挙げられているんですよね。海洋の酸性化や海水温の上昇によって、タイセイヨウセミクジラのエサになる生物が減ってしまいました。そうすると、十分な量の食事ができないばかりか、エサを求め続けて、ドンドンと移動せざるを得なくなって、それで船に衝突したり、漁網などに絡まってしまうリスクが、かえって高まる悪循環に陥っているとも懸念されています。
当然ながら、地球上に住んでいるのは人間だけではありません。深刻な地球温暖化は、思わぬ生物にまで、とうとう目に見える形でも影響をおよぼすようになってきた…。これからも驚くような変化が、さまざまな分野で報告されてきてしまうのかもしれませんね。
Source: Current Biology
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