Appleシリコン「M1」チップは高いパフォーマンスが続々と証明されつつありますが、なぜこれほど速いのか? それを考察して深く掘り下げたソフトウェア開発者の分析が公開されています。
ノルウェー在住の開発者Erik Engheim氏が指摘する第一の要因は、まずM1は単純なCPUではない、ということ。いわゆるSoC(システムオンチップ)であり、様々な機能が統合されているものです。そのパッケージ内には8コアCPU、8コアGPU(MacBook Air下位モデルでは7コア)、ユニファイドメモリ、SSDコントローラ、イメージ信号プロセッサ、Secure Enclaveなどが収容されています。
そしてインテルやAMDのチップが汎用CPUコアに焦点を当てているのに対して、M1チップは、特定のタスクに集中した専用チップに力を入れているためアドバンテージを得ている、とのこと。すなわちM1にはCPUとGPUに加えて音声認識やカメラ処理を受け持つNeural Engine、高い電力効率で動画を変換できる内蔵ビデオデコーダ/エンコーダー、暗号化を担当するSecure Enclave、音楽ファイルの解凍などを処理するDSP、および画像処理を高速化するユニットが全て含まれているという具合いです。
Engheim氏は特に、CPUやGPUなどのコアが互いに情報を交換できるユニファイドメモリアーキテクチャ(UMA)の強みを強調。UMAはCPUとGPUが別々の領域にあるデータをコピーするのではなく、同じメモリプールにアクセスするため、情報交換を高速化して全体のパフォーマンスを向上させる……と述べていますが、UMAは以前からスマートフォンやゲーム機に採用されている構造であり、もう少し踏み込んだ分析が欲しい感もあります。
さておき、注目したいのはM1内蔵の特殊チップがいかに高速化に貢献しているか、という分析です。これらは全て特定のタスクを高速化し、実際のユーザーにとって目に見える改善に繋がります。M1搭載Macで画像やビデオ編集に取り組んでいる多くの人々が高速化を実感している理由の1つがこれだ、というわけです。
特殊チップは他社も以前から採用していますが、Engheim氏はアップルが「この方向に、より抜本的なシフト」を取っていると指摘。インテルとAMDは汎用CPUの販売に依存している一方でDellやHPのようなPCメーカーはライセンス上の理由からアップルのように社内で完全なSoCを設計できない可能性が高いとのことです。
さらにアップルは、競合他社が追随できない方法でハードウェアとソフトウェアを統合できるため、iPhoneやiPadが他のスマートフォンやタブレットよりも優位に立っているのと同じ要因が、Macに持ち込まれたということです。
確かにインテルもAMDもSoCの完成品を販売し始める可能性はあるものの、顧客となるPCメーカーが求めるものはそれぞれ違うかもしれません。結局はソフトウェアサポートが必要となるため、インテル、AMD、マイクロソフト、PCメーカー間でどんな特殊チップを含める必要があるかをめぐり対立が生じるおそれがあると述べられています。
ほかEngheim氏は、インテルとAMDはCISC命令セットの制限や、PCメーカー向けのエンドツーエンドのチップソリューションを簡単には実現できないビジネスモデルのため、苦境に立たされているとの考えも語っています。
大まかにまとめれば、アップルはソフトウェアとハードウェアのトップが同じ社内にいてすり合わせが可能な上に、特定のソフトウェア処理に絞り込んだ特殊チップが用意できるため、ユーザーからは目に見える高速化が実現しやすい、といったところでしょう。アップル幹部らのM1チップに関するインタビューと合わせて読むと、より理解が深まりそうです。
Source:Erik Engheim
Via:MacRumors
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