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実機で感じたiPhone 12|12 Proの違い。どちらを選ぶかは「価格」か「将来性」の2択(西田宗千佳):2020ガジェットレビュー - Engadget日本版

そろそろ2020年も終盤戦。今年もたくさんのガジェットが発表され、弊誌にてレビュー記事が掲載されました。そんな記事のなかでも、著者や編集部がイチオシと考える製品をピックアップしてもう一度お届け致します。

これは2020年10月20日に掲載された記事の再掲載です。記事中に登場する価格や機能、画像などは当時のもので、現在は異なる可能性があります。

さて、同じ誌面では、他のライターの方々がiPhone 12シリーズのレビューを書いていることだろう。筆者もこれからその話をするのだが、普通の切り口でも面白くない。

というわけで私は、「12か、12 Proか、どっちがいいの?」という話をしようと思う。まだ悩んでいる方は参考にしていただければ幸いだ。

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サイズも同じ、ディスプレイも同じ。箱のサイズまで同じな「12」と「12 Pro」

今回貸し出されたのは、発売日が同じである「12」と「12 Pro」だ。これはなかなか悩ましい。正直、「12 mini」と「12 Pro Max」だったら全然悩まずに済む。キャラクターが全く異なるからだ。

だが「12」と「12 Pro」はサイズが全く同じで、仕上げとカメラが違う……という格好。サイズは本当に全く同じなので、ケースも同じものが使える。

▲正面から。さて、どちらがiPhone 12でしょうか?(答え:左)

iPhone 11まではディスプレイが違ったわけだが、12シリーズでは、どちらも有機ELに統一された。輝度が少々異なるようだが、普通に使っていて差がわかるものでもない。短時間の試用では「ぶっちゃけ同じ」に見えた。後述するが、今回から「有機ELであること」はとても大きなことになったので、「どちらも有機ELである」ことは望ましい。

さて、そうなると、どっちを選ぶべきやら。

しかしながら仕上げは対象的だ。背面が光沢でサイドがマットな「12」、背面がマットでサイドが光沢な「12 Pro」。今回借りたブルーとシルバーという話であれば、好みはブルーではある。だが、まさに「スターリングシルバー」という感じのサイドの仕上げは、これはこれで好ましい。「白いiPhone」を求める人にとって、実はシルバーはいい色なのではないか、と思う。新色・パシフィックブルーもいい色なのだが、正直に言うと筆者の好みは、「12」のブルーだ。

▲iPhone 12 Proの、シルバー(左)とパシフィックブルー(右)。空の青というより海の青。

ちなみに箱は、「12」が白で「12 Pro」がブラックである。どちらも同じ大きさで、ACアダプターとヘッドホンが付属しなくなった分、厚みが従来の箱の半分くらいになっている。

▲箱の色は白(12)と黒(12 Pro)で違うが、サイズはまったく同じだ。

昼間の撮影なら大差なし?! LiDARは夜間撮影と「将来性」に価値あり

となると、ポイントは「カメラ」になる。「12」はスタンダードモデルなので、広角と超広角の2つ。「12 Pro」はそれに加え「望遠」がつく。ここはiPhone 11 Proと同じである。

デジタルズームでも気にならないシーンが増えているとはいえ、2倍の望遠のありなしはやっぱり大きい。これは、昨年同様重要なポイントである。

もう一つのポイントは、「LiDARの搭載」。AR関連に興味があるなら、もう何も言う必要はない。12 Proを買わないのは損失だ。iPhone 12用のARアプリはまだ少ないのだが、iPad Proでの経験からいえば、LiDARのある・なしは体験を大きく変える。だから、そちらのクラスタの人は悩んではいけない。

このLiDARは写真にも影響する。だが実のところ、日常的には「そこまで大きな差でもないかな……」と思っている。どうやら、iPhoneのカメラにおけるLiDARは、「暗いところ」限定のようなのだ。日中の撮影では差が見つからなかった。日中の写真重視なら、「12」と「12 Pro」の差は小さい。

iPhone 12
iPhone 12 Pro
iPhone 11 Pro Max ▲日中、木々に囲まれた銅像を撮影。カラーバランスが少し変わったのか、iPhone 12系の方が緑が少し鮮やかで全体が見やすい。

ただ、夜にポートレート撮影をすると、いわゆる「シルエットの切り抜き」精度がかなり変わる。ピントもシャッキリして、ブレ感・ボケ感が減る。少し暗いところでの写真の写りに不満があるなら、「12 Pro」は良い選択肢だ。

iPhone 12
iPhone 12 Pro
iPhone 11 Pro Max ▲夜間のポートレートモード撮影。こうみるとあまり変わらないようだが、拡大すると結構違う。「12 Proがシャッキリしている」とも感じる。
iPhone 12
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iPhone 11 Pro Max ▲上記写真の頭のところを拡大。iPhone 11 Pro MaxとiPhone 12では切り抜き精度が大きく違う。さらに12 Proは誤判定も見えず、より精度が高い。

また、将来的にLiDARをさらに活かしたカメラアプリ・動画アプリが出てくる可能性は高い。そこを考えると、ここもARと同じく「将来に期待」で選んでおく……というのもアリではないだろうか。

動画については、iPhone 12シリーズ全体が「Dolby Vision方式によるHDR撮影」に対応した。これがなかなかすごい。ディスプレイが有機ELになってコントラストが劇的に上がったこともあり、HDR動画では、輝度を突き上げて再生するようになった。要は、HDR対応の映画と同じ扱いになったのだ。だからすごく見栄えがする。

機能自体は「12」でも「12 Pro」でも同じなのだが、「12」では4K・30フレームまでの撮影であるのに対し、「12 Pro」は4K・60フレームでもOK。この辺も、「カメラなら12 Pro」という印象を強くする要因である。

「12 Pro」はメインメモリーが6GB! ストレージが「128GB基準」でみると案外お得

さて、中身は本当に同じなのだろうか?

おなじみの「Geekbench 5」で調べてみると、メモリー搭載量が異なることがわかった。「12 Pro」は6GBで、「12」は4GBだった。なんと、メモリーもCPUコアのクロックも、「Pro」はiPad Proよりも上なのだ。CPUのベンチマークスコアも、コア数の違いからか、マルチコアの値こそiPad Proが上回るも、シングルコア性能では3割近く速い。

▲左が12、右が12 Pro。CPUなどのスペック。クロックは同じだが、メモリー搭載量がiPhone 12 Proは2GB多く、6GBになっている。
▲左が12、右が12 Pro。ベンチマークの値。12と12 Proの値はほとんど変わらない。この値は、iPhone 11はもちろん、シングルコアならiPad Proを超える。

iPad Pro並みのパワーが手のひらサイズに入っていると思えば、「12 Pro」は安い。さらに言えば、最廉価モデルで比較した場合、「12」のストレージは64GBだが、「12 Pro」は128GBである。128GB同士で比較すると、価格差は1万6000円に縮まる。

「望遠」と「LiDAR」、さらにメインメモリー2GB分と考えれば、1万6000円という価格差はそんなに悪いものではない。ほら、さっきまで「同じサイズで同じような性能なのに高い」と思っていた「12 Pro」が、途端にお買い得に見えてきた。

本当は4機種から選びたいけれど……

もちろんこれは詭弁。お金はやっぱり大切だ。

だとすると、そもそも「12」を選ぶよりも「12 mini」を選ぶ方がいい。実機で確かめる必要があるものの、「12」と「12 mini」のスペックは、画面の大きさ・解像度とバッテリー動作時間しか違いがない。だったら、2週間我慢して、さらに9000円安くてコンパクトな「12 mini」に……という選択もあっていい。ただ、正直、9000円で2週間悩むなら、買ってしまった方が精神衛生上良いような気はする。

そして、カメラに注目するなら、センサーサイズと手ぶれ補正、「望遠」の光学ズームが「広角」比で2.5倍になる「12 Pro Max」の方がいい。ただし、価格はさらに1万1000円上がるが。

2機種で選ぶよりも4機種から選ぶのがベストなのは言うまでもない。ただし、問題は「待てるなら」なのだが。2週間が待ち遠しくてもう待てない気持ちもわかる。よくわかる。

その場合には結局、「価格」を取るか「将来性」を取るか、の2択と言っていい。個人的には、この価格差なら128GBの「12 Pro」がいいのではないか……とも思う。「12 Pro Max」のカメラに未練がないなら、という前提条件で、だけれども。

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