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AppleとGoogleの“今”がわかる、iPhone 12 mini VS Pixel 4a(5G)カメラ比較 - AV Watch

左からウォークマン「A100」、iPhone 12 mini、Pixel 4a(5G)

ドトウの新製品ラッシュ

時期的にそろそろ今年の振り返り的な事も書いていくわけだが、今年前半はご承知のような状況で、各社とも新製品どころかどうやって会社を維持していくか必死だったのではないだろうか。だが新体制が整った10月頃から、多くの新製品がどっさり投入された。中には例年予定通りの製品もあるが、重要な製品の発売がこれほど重なった年は珍しい。

そんなわけで筆者も色々散財しており、10月末にはGoogle「Pixel 4a(5G)」を、11月上旬には「iPhone 12 mini」(以下12 mini)を購入したところである。どちらもフラッグシップモデルではないが、最も売れ筋としての注目のモデルであり、両社の「平均値」がわかる製品だ。

スマートフォンの見所はいろいろあるところだが、基本的には平たい板なので、見た目からはなかなか性能やそこにある思想は把握しづらいところだ。一方写真や動画は成果物が生産されるため、違いが出やすいところである。すでに製品レビューも沢山記事が出ているところではあるが、今回はこの両モデルを全く同条件で撮影比較することで、AppleとGoogleの映像処理の方向性を考察してみようというわけである。

4K当たり前の時代に、スマートOSで世界を二分する両社ではどのような違いが出るのだろうか。早速テストしてみよう。

スペックの差は以外に大きい

iPhoneXR(左)と4a(5G)はほぼ同じサイズ

両モデルのスペックは下の表を見ていただくとして、まずはなぜPixel 4a(5G)(以下4a(5G))を選んだかという話である。筆者はこうしたレビューを行なう仕事柄、AndroidとiOS両方のスマートフォンを保有しておく必要がある。パソコンも同様で、Windows機とMacの両方をキープする必要がある。

しかし手持ちのAndroid機が「Gemini PDA」といういささか変わったモデルで、ハードウェアキーボードがついている関係でデフォルトが横向きだ。加えてOSがAndroid 7.0止まりなので、動作検証する際に不安があった。そんな中、OSのアップデートが3世代保証されているPixelシリーズは魅力的だ。

動作検証だけなら8月に発売された「Pixel 4a」でも良かったのだが、あいにく人気モデルということで購入しても1カ月待たされる。そんな中、発売されたばかりの4a(5G)なら即納、という割と消極的な理由で購入した。

4a(5G)のディスプレイサイズは6.2インチである。10月当時使っていたiPhoneはXRで、こちらは6.1インチだ。実際比べてみると、ほとんどサイズが変わらない。10月下旬から11月初頭にかけて発売されるiPhone 12シリーズを見てみると、iPhone 12とiPhone 12 Proは6.1インチで同サイズだ。一方iPhone 12 miniは5.4インチ、iPhone12 Pro Maxは6.7インチとサイズ違いとなる。

筆者は健康のためにジョギングに出るのだが、6インチ越えのスマホはサイズと重量の点で難がある。ポーチやポケットに入れても、ドシドシした感じがどうも走る周期と合わないのである。同じサイズを買ってまた同じ事になってもな……、というわけで12 miniを選択した次第だ。昨年発売のソニー ウォークマン「NW-A100」(3.6インチ)と並べると、綺麗にサイズ違いとなった。これで出かける態勢に合わせて3サイズが自由に選べるわけである。

では撮影と画像処理に関わるハードウェア部分を比較してみよう。

(※*35mm換算値は画角から算出した近似値)

SoCの違いは当然あるとして、スペックとしては12 miniはiPhone 12とほぼ同スペックなので、小さくても4a(5G)を上回る部分が多い。特にディスプレイのコントラスト比には20倍の差があり、実際に晴天の屋外で見比べると、4a(5G)のほうがかなり暗く見える。

双方ともリアカメラは背面左上に搭載しているが、12 miniが縦並びなのに対し、4a(5G)は横並びだ。メインカメラは12 miniが下、4a(5G)が外側となる。動画撮影の場合は両手持ちで横に構える事になるが、12 miniでは一番使うメインカメラをレンズに指が入らないよう下側に持って来た。逆にワイドカメラがかなりボディの端にあるので、レンズに指が入りやすい。一方4a(5G)はレンズがボディ端から均等に距離があるので、横に持ってもどちらも指が入りにくい。

12 miniのカメラは縦並び、4a(5G)のカメラは横並び

画角については、リアカメラは12 miniのほうが広めだが、フロントカメラは4a(5G)のほうが広い。少し前までスマホのデュアルカメラと言えば広角と望遠の2タイプだったものが、ここ1~2年の間で広角と超広角に入れ替わっている。望遠よりもより広角へというニーズのほうが強かったのだろう。

この2台を、限りなく同じアングルで同タイミングで撮影した。今回は動画だけでなく静止画も比較している。さてどのような違いがあるだろうか。

できるだけレンズを近づけて撮影

微妙に差が出る静止画撮影

まずはレンズの画角から比べてみよう。静止画の場合、メインカメラを1倍として、12 miniでは超広角は0.5倍、4a(5G)では0.6倍と表示される。また望遠カメラがなくなったことでデジタルズームが多用されることになると思われるが、12 miniは最大5倍、4a(5G)は最大7倍だ。ただ双方ともデジタルズームによる画質劣化はかなり激しく、ソラリゼーションがかかったような画質である。

12 mini 超広角
4a(5G) 超広角
12 mini 1倍
4a(5G) 1倍
12 mini 5倍
4a(5G) 7倍

静止画の傾向としては、やや12 miniのほうが明るいめ、ディテール硬めに撮る傾向はある程度で、発色はあまり変わらないように見える。

12 miniで撮影
4a(5G)で撮影

背景をボカすポートレートモードは、昨今好んで使われる機能となった。以前は人物しか認識できなかったが、昨今では人物以外でも背景がぼかせるようになったことも大きいだろう。リアカメラによるポートレートモードでは、12 miniでは広角のままで撮影できるのに対し、4a(5G)では1.5倍程度拡大される。ぼかしの度合いは後から決められるが、サンプルはデフォルト状態で比較している。寄りかかっている木の輪郭の切り取り具合からすると、12 miniのほうが自然な仕上がりに見える。

12 miniのポートレートモードで撮影
4a(5G)のポートレートモードで撮影

一方インカメラによるセルフィー撮影では、12 miniはディテール高めで肌の凹凸もかなりリアルに描き出すのに対し、4a(5G)は「顔写真加工」という美肌モードがある。モードを「スムーズ」にすると、肌の凹凸を埋めて滑らかにする。4a(5G)のほうがウケはいいだろうが、よく見ると左肩の横にある砂浜にはボケがない。輪郭の切り取りの正確さという点では12 miniに軍配が上がる。

12 miniのインカメラで撮影
4a(5G)のインカメラで撮影

得手不得手がはっきりする動画撮影

続いて動画撮影である。メインカメラは12 miniが26mm、4a(5G)が27mmと、ほぼ同じが画角だ。静止画ではスペック通りほぼ同じ画角だが、動画となると4a(5G)では一回り画角が狭くなる。これは4a(5G)が電子手ブレ補正を強力に入れているからである。4a(5G)の動画撮影では手ブレ補正が4モードもあり、撮影状況によって使い分けるようになっている。

12 mini 超広角
4a(5G) 超広角
12 mini 1倍
4a(5G) 1倍
12 mini 5倍
4a(5G) 7倍
4a(5G)では動画の手ブレ補正だけで4種類もある

またどちらも4K/60p撮影が可能だが、4a(5G)は4K/60pでは超広角側のカメラが使えなくなってしまう。おそらくセンサーの放熱か読み出しスピードの都合なのだろう。4K/30pなら超広角が使えるので、今回は画角を揃えるため4K/30p撮影で統一した。

12 miniには手ブレ補正に選択肢がないが、効果としては4a(5G)とあまり変わらない。補正具合もナチュラルで、自然にブレを止める感じだ。一方4a(5G)の「アクティブ」は、手持ちでの移動撮影でも背景をピタリと止めるほど強力だ。

「アクティブ」は「標準」と画角は変わらないが、実は超広角カメラ側で撮影している。広範囲で撮影しておき、メインカメラと同じ画角まで切り出して補正範囲を稼いでいるわけだ。なかなか面白いアプローチである。だがそこまで切り出すと4K解像度には足りないので、アクティブモードでは解像度が自動的にフルHDに落ちる。

一方「ロック」は手持ちでフィックス撮影する際に使用するモードだ。これはメインカメラを2倍拡大まで切り出し、補正範囲を広く取っている。こちらも2倍拡大となると4K解像には足りないはずだが、デジタルズームで拡大して4K解像度をキープする。したがって4Kとはいえ、画質的には落ちる。

手ブレ補正比較。4a(5G)のほうは標準、アクティブ、ロックと順次切り替えている

「シネマティック撮影」は、手ブレ補正を効かせながら同時に50%スローで撮影するモードだ。スローにすればそれだけ手ブレもユルくなるが、音声が収録できないので日常的に使う機能とは言えない。

ついでにスロー撮影も試してみよう。どちらも最大8倍スローが撮影できるが、12 miniがフルHDで撮影可能なのに対し、4a(5G)は1,280×720の720p解像度となる。スローの感じは似たようなものだが、12 miniは後半から画像が細かく上下している。撮影時は三脚で固定しているので、手ブレではない。もしかすると手ブレ補正の誤動作かもしれない。

スロー撮影の比較

動画の解像感に関しては、両者とも似たような感じだが、同じ被写体を撮り比べてみると、4a(5G)のほうが若干青みが強いように思える。したがって青の補色となる黄色の花の色味がかなり違って見える。コントラストについては好みが分かれるところだろうが、12 miniがかなり忠実に表現するのに対し、4a(5G)のほうが明るめで色も強めに出るので、見栄えがいい。

4K/30pで撮影したサンプル

大きく差が出る夜間撮影

続いて夜間撮影をテストしてみた。動画撮影に関しては、SN比は似たような感じだが、色味としては相変わらず4a(5G)のほうが青い。特に超広角カメラで比較すると、ブラックバランスがかなり青に倒れているのが顕著だ。

ダイナミックレンジは、照明の光芒で比較すると、4a(5G)が明るい方を潰して黒を浮かせぎみに撮るのに対し、12 miniは黒は黒で締めて明るい方もあまり潰さないので、バランスが良い。

動画による夜間撮影比較

一方静止画となると、かなり機能が違う。12 miniは夜間撮影時には、「写真」モードのままで自動的に長時間露光モードになるが、4a(5G)では専用の「夜景モード」がある。

そこそこ光量がある場合は、どちらも5秒程度の露光で撮影可能だ。色味が違う以外は、どちらもかなり上手く撮影できる。

12 miniで5秒間露光
4a(5G)で5秒間露光

大きく違いが出るのは、夜の空が入った構図の場合である。4a(5G)では自動的に「天体写真機能」がONになり、2分から3分の長時間露光が可能になる。

空の面積が多いと自動的に天体写真機能がONになる

12 miniの5秒間露光でもそこそこ明るく撮れるが、風で動く木々の細かいディテールはブレてしまうので、静止した部分だけがしっかり写ることとなる。一方3分ほど露光する4a(5G)の天体写真機能では、風で動いてしまった部分も綺麗に補正してディテールを出してくるので、解像感が高い写真が撮影できる。

12 miniの5秒間露光で撮影
4a(5G)の3分露光で撮影

5秒でこれだけ撮れれば12 miniで十分という考え方もあるだろうが、天空だけを撮影するとさらに印象が変わる。12 miniでは近くの街灯の光芒が邪魔して空がちゃんと撮れないが、 4a(5G)では星まで撮れる。

12 miniで5秒間露光で撮影
4a(5G)の3分露光で撮影

上の写真で写っている小さい星々は、肉眼では見えなかったものだ。これだけ写ると、3分待つ甲斐があるというものだ。今度はぜひ街灯の光が入らない場所で撮影してみたいところである。

総論

同じカメラ機能でも色味が違うのはわかっていたところだが、実際並べて比較すると細かい違いがわかって面白い。12 miniはレンズやセンサーなどハードウェアの品質が高く、素直でリアリティのある描写をしてくる印象だ。動画でも広角のままで撮影できるし、そもそも設定変更する余地がほとんどないので、町歩きなどの気軽なスナップはこちらのほうが楽しいだろう。

一方4a(5G)は、標準的なハードを使い、ソフトウェアの作り込みで色々面白い事を実現しようとしているのがわかる。多彩な手ブレ補正の実装も、2カメラの性能差をよく考えてある。機能が豊富ゆえに設定項目が色々あり、多彩な結果が得られるという面白さがある。ただポートレートモードでの輪郭切り抜きの下手さは、もうちょっとAIとか使ってどうにかならんのか、という気がする。

これまで2台のスマホを同時に持ち歩く事がなかったので、同じ被写体を撮ったことがなかったが、強みとしてはワイド撮影とポートレートは12 mini、手持ち動画撮影と夜間静止画撮影は4a(5G)という事になるだろう。比較してみると、個性が結構違うのがわかる。

今回の比較で、AppleとGoogleがユーザーに体験させたいことの違いが、垣間見えたのではないだろうか。

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