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オーディ入門に最適、デノン「600NE」を人気スピーカーやTVと組み合わせる - AV Watch

左からCDプレーヤー「DCD-600NE」、プリメインアンプ「PMA-600NE」

オーディオとは趣味の世界である。様々なブランドが心血を注いで理想の音を追求し、世に送り出された製品が、投じられたコストや趣味性の高さゆえに高額になってしまうというのは、ある意味で当然のことであり、仕方がない面もある。

ただ、“高額なオーディオ機器もある”ならともかく、“高額なオーディオ機器しかない”という状況では、新たなオーディオファンの獲得は困難になり、いずれオーディオという趣味世界全体の活力が失われてしまう。

だからこそ、「誰にでも手が届きやすい価格帯」の、なおかつ「オーディオの楽しさを存分に味わわせてくれる製品」の重要性は、今も昔も変わらない。デノンのプリメインアンプ「PMA-600NE」(64,900円)とCDプレーヤー「DCD-600NE」(58,300円)は、長きに渡りオーディオ機器を作り続けてきた同社の最新エントリーモデルであり、まさに「これからオーディオを始めよう」という人に注目してほしい製品だ。

1台で音楽再生も「PMA-600NE」、純粋にCDが聴きたい人のための「DCD-600NE」

PMA-600NEはオーソドックスなプリメインアンプとして前モデルの「PMA-390RE」からデザインを継承する一方、純粋なアナログアンプだったPMA-390REに対し、DACを搭載して各種デジタル入力が可能になった点が大きく異なる。

PMA-600NE

PMA-600NEで特に注目すべきなのはBluetooth接続が可能なこと。これはデノンのフルサイズのHi-FiアンプとしてはPMA-600NEのみ搭載する機能で、これによりスマートフォンやPCと接続しやすくなっている。

スマートフォンやPCを使い、Spotify、Apple Music、Amazon Musicなど、サブスクリプション型ストリーミングサービスで音楽を聴くことが当たり前になって久しいが、こうした時代の変化に合わせ、デノンがHi-FiアンプにもBluetooth機能を搭載したことに拍手を送りたい。

PMA-600NEの背面。左上に同軸デジタル、光デジタル×2の入力も備えている

なお、PMA-600NEはアナログ入力時にデジタル入力回路を完全に停止させた「アナログモード」が使用可能だ。同軸デジタル、光デジタル入力、Bluetoothは使えなくなるが、デジタル回路からの高周波ノイズを抑えて、アナログアンプとしての音質を追求できる。エントリー機だが、まさにHi-Fiアンプらしい機能と言えるだろう。

アナログモードを有効にした様子
デジタル入力基板はシールドケースに封入されており、アナログモードを使わない時も輻射ノイズによる悪影響を抑えている

DCD-600NEは多機能化を果たしたPMA-600NEとは対照的に、前モデルDCD-755REにあったフロントUSB端子やヘッドフォン出力を省き、CD再生に特化したモデルとなった。

デノン独自のアナログ波形再現技術「AL32 Processing」を引き続き搭載するほか、上位機でも使用されているパーツや、振動抑止構造「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」の搭載、新形状のフットの採用などで音質のブラッシュアップが図られている。音声出力はアナログRCAの他に光デジタルを搭載しており、外部DACと組み合わせて本機をCDトランスポートとして使うことも可能だ。

DCD-600NE
DCD-600NEの背面。光デジタル出力も備えている
振動抑止構造「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」

それぞれの立ち位置としては、デジタル入力に加えてBluetoothに対応することで「様々な機器と繋がり、1台でも音楽再生が可能」になったPMA-600NEと、「純粋にCDが聴きたい人のための」DCD-600NEといったところか。

なお、PMA-600NEとDCD-600NEはフルサイズのオーディオ機器ということで、横幅は約43cmとそれなりにあるが、奥行きは突起部分を含めなければともに30cmに収まるため、昨今の奥行きが浅いテレビボードにも問題なく設置が可能だ。

奥行きが短いので、テレビとの組み合わせも可能だ

定番スピーカーと600NEでどんな音が楽しめるのか

PMA-600NEとDCD-600NEの試聴はDALIのブックシェルフスピーカー「OBERON 1」(ペア62,700円)と組み合わせて行なった。6畳の部屋の短辺にテレビを含めて機材一式を設置する「ごく現実的な」環境である。

PMA-600NEとDCD-600NEで、OBERON1を鳴らしてみる

PMA-600NEとDCD-600NEはエントリーモデルということもあり、音源には筆者が「オーディオを始めよう」と思った時点で聴いていた、思い出深いCDを用いた。

まずはthe pillowsのアルバム「Fool on the planet」の表題曲を聴く。すべての楽器と山中さわおの「アウイェー」が部屋いっぱいに炸裂するオープニング、そこから続くアンニュイなパートとの落差、サビの爆発的な盛り上がりなど、楽曲の持つダイナミズムを余すところなく味わえる、エネルギー感に満ちた再生音である。この「Fool on the planet」という曲はかなり音圧が高く、オーディオシステムではかえって「うるさい」と感じてしまうこともあるのだが、今回のシステムでは音が混濁して空間が破綻することはなかった。

Yesのライブアルバム「Keys to Ascension」より「Roundabout」では、ライブならではの熱気を存分に孕みつつ個々の音やコーラスの明快な分離が実現しており、音を全身で浴びる快感がある。各パートは互いに埋もれることなく存在感が際立ち、特に後半のリック・ウェイクマンのキーボードソロでそれが顕著に感じられる。

続いて女性ボーカルを聴いてみる。Corrinne Mayのアルバム「Fly Away」の表題曲はピアノとボーカルから成るシンプルな楽曲だが、楽曲に含まれる空気感を豊かに描き出すおかげで情報量的に寂しいところがなく、ピアノ・ボーカルともに艶やかな質感があり満足度は高い。

KOKIAのアルバム「trip trip」より「足音」では、KOKIAの溌溂として伸びやかなボーカルはもちろん、各楽器の音が空間の中でくっきりと定位し、スピーカーの周囲に舞い踊る様が楽しめる。埋もれがちなベースも厚みと明快な輪郭を併せ持ち、楽曲の下支えとして存在感を発揮する。

いずれの音源でも、中低域の充実したエネルギー感や心地よい音の張り出しがあり、いうなれば「音楽の美味しいところを、もっと美味しく聴かせる」、デノンのオーディオ機器に期待される美点は健在だ。比較的小口径のウーファーを搭載するOBERON1との組み合わせであっても、中低域の表現になんら不足を感じるところがない。

また、こうした従来からの美点に加えて、音の広がりや奥行きなど、空間性を強く感じることも印象的だった。サウンドマネージャー(現サウンドマスター)が山内慎一氏に交代して以来、デノンは新しいサウンドフィロソフィー「Vivid & Spacious」を掲げているが、エントリーモデルのPMA-600NEとDCD-600NEにあっても、そのコンセプトは確かに実現されている。

サウンドマスターの山内慎一氏

テレビの音だって、よりリッチに

PMA-600NEの光デジタル入力を活かして、テレビと光デジタルケーブルで接続し、映像用途でも使ってみた。この接続では、テレビに入力されたソースの音をすべてPMA-600NEを通して再生できるため、テレビが対応している映像ストリーミングサービスはもちろん、ゲームの音だって楽しめる。

PMA-600NEとOBERON1で再生する各種映像コンテンツの音は、テレビの内蔵スピーカーで聴く音とは完全に一線を画しており、映像鑑賞の楽しみを著しく増大させる。

テレビのサウンドを良くしたい時は、“サウンドバー”や“AVアンプでホームシアター”を思い浮かべがちだが、ステレオプリメインアンプ+小型スピーカーでも十分にその役目を果たせる。「映像コンテンツをいい音で楽しむためにはAVアンプが不可欠」という考え方に囚われる必要はない。せっかくPMA-600NEはデジタル入力を持つのだから、積極的に活用してやろう。

ちなみにPMA-600NEはサブウーファー出力も搭載しており、より映像を迫力満点で楽しみたい時は、低音の増強に有効活用できるだろう。

PMA-600NEの入出力端子

ステップアップも想定し、他のスピーカーでもチェック!

PMA-600NE + DCD-600NEペアの実力をさらに確かめるべく、OBERON 1のほかに、筆者が所有するParadigm「Monitor SE Atom」(ペア55,000円)、KEF「LS50 Meta」(ペア159,500円)、B&W「706S2」(ペア269,500円※ピアノブラックの価格)とも組み合わせて聴いた。

左から706S2、Monitor SE Atom、OBERON1、LS50 Meta

まず、価格帯的に上位クラスのスピーカーとの組み合わせであっても、PMA-600NEは十分な駆動力を発揮し、再生音がスピーカーにへばりつくことなく、伸びやかに空間に広がる音が得られたことは述べておきたい。

なかでも特に相性が良いと感じたのは706S2。B&Wのスピーカーの特徴であるフラットな帯域バランス、高度な分解能や明晰な描写は、聴く人によっては「キツさ」や「冷たさ」としても感じられるものだが、そこにデノンの美点が加わることで、オーディオ的な高性能感と楽しく音楽を聴ける感覚が両立する。純粋にスピーカーとしての高い性能とアンプがもたらす充実した中低域は、映像用途でも相性抜群だ。

Paradigm Monitor SE Atomとの組み合わせ

“スマホからBluetooth再生”でも十分高音質

ここまではPMA-600NE + DCD-600NEペアでのサウンドをチェックしたが、前述の通り、PMA-600NEは、スマホとBluetooth接続すれば、PMA-600NEだけでも音楽を楽しめるので、こちらも聴いてみよう。

Bluetooth接続する際は、PMA-600NEのフロントパネルの「BLUETOOTH PAIRING」ボタンを押してペアリングを行なう。一度ペアリングしてしまえば、スマートフォンからPMA-600NEを選択することでアンプ側の入力もBluetoothに切り替わるので接続の煩雑さはない。

PMA-600NEとBluetooth接続
Bluetooth接続中は青色のLEDが点灯する

Bluetooth接続は(少なくとも現状では)仕様上ロッシーであり、純粋な音源の時点でのクオリティは、CDや他のプレーヤーを使った場合と比べて劣る。こればかりは仕方がない。実際に音を聴いてみても、今回試聴に使ったCDをDCD-600NEで再生する場合と、CDをリッピングした音源ファイルをiPhoneからBluetooth接続で聴く場合では、明らかに前者の方がクオリティで上回る。

ただし、だからといって「Bluetooth接続では音楽を楽しめない」わけではまったくない。あくまでも「比較すれば差はある」のであって、PMA-600NE + OBERON1の組み合わせは、Bluetooth接続においても、生気に満ちた再生音を聴かせてくれる。「スマートフォンでしか音楽を聴かないから、据え置きのオーディオシステムなんて必要ない」などと考えるのは早計だ。ここはぜひ、「再生機器としてスマートフォンを使いながら、気軽にいい音で楽しめる環境が出来上がる」と考えてほしい。

さて、今回は試聴に際してPMA-600NEとDCD-600NEはテレビラックに並べて、スピーカースタンドを使って設置しているが、十分な設置スペースが用意できないという場合も当然考えられる。

そうした場合はPMA-600NEとDCD-600NEを重ねて置き、その両脇にスピーカーを置くという、いわゆる“ミニコンポ的な置き方”をしても構わない。正直なところ、音質的にはあまり褒められた置き方ではないのだが、「置き場所がないからオーディオの導入は諦める」となってしまうよりはずっといい。たとえこの状態であっても、本格的なオーディオ機器の実力はしっかりと感じられる。

ミニコンポ的な、アンプとCDプレーヤーを重ねる置き方

高価な製品がひしめき合うオーディオの世界にあって、PMA-600NEとDCD-600NEはオーディオメーカーたるデノンの良心、あるいは矜持を体現するモデルである。エントリーモデルといえど、長きに渡る世代交代を経てオーディオ機器としての能力は磨き抜かれており、「これからオーディオを始めよう」という人にとってこのうえない出発点となるだろう。
(協力:デノン)

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