出張時など、普段使っているPCの環境をそのまま他のPCでも使いたいことがある。また、普段はLinuxなどWindows以外のOSを導入しているPCで、一時的にWindowsを起動したいといったニーズもあるだろう。そうした時に便利なのが、USBメモリやUSB SSDなどの持ち歩ける小型デバイスからOSの起動を行うポータブルOSである。
Windows 8 Enterpriseには「Windows To Go」と呼ばれるUSBメモリから起動するポータブルOSを作成する機能があったのだが、Windows To Goでは、Windows To Go認証USBメモリが必要であり、利用者が少なかったことから2019年5月に開発終了が発表され、Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004) からは削除された。
今回紹介する「EaseUS OS2Go」(以下、OS2Go)は、誰でも簡単に使えるポータブルOS作成ツールである。EaseUS社は、中国のソフトウェア開発会社であり、データリカバリやデータバックアップ、パーティション管理などのツールを開発・販売しており、同社のツールはコストパフォーマンスが高く使いやすいことで定評がある。
■最新のWindows 11にも対応
OS2Goは、Windows対応のソフトであり、対応バージョンはWindows 11/10/8/7/vista/XPと幅広い。最新のWindows 11をポータブルOS化することもできるほか、Intel CPU搭載のMacでWindowsを利用することもできる。
Windows To Goとは異なり、容量さえ足りれば、どんなUSBメモリやUSB SSDでも利用できることもOS2Goの利点だ。ただし、パフォーマンスを考えると、USB 3.0以上に対応した高速USBメモリかUSB SSDを利用することをお勧めする。
■画面の指示に従うだけでポータブルOSを作成できる
OS2Goの使い方はとても簡単だ。Windowsを起動したら、ポータブルOSを格納するためのUSB メモリや USB SSDをUSBポートに接続し、OS2Goを起動する。なお、OS2Goを起動する前に、他のアプリケーションは終了しておくこと。OS2Goを起動すると、そのPCが使用しているディスクサイズの合計と、USBポートに接続したUSBメモリやUSB SSDの容量が表示される。
Windows To Goでは、最低限の起動用システムのみ格納されたポータブルOSを作成するため、32GBか64GBの認証USBメモリでOKだが、OS2Goはシステムだけでなく元のPCにインストールされているアプリケーションやデータまで丸ごとクローンする仕組みなので、そのPCが使用しているディスクサイズよりも容量が大きなUSBメモリやUSB SSDが必要になる。
例えば、その環境をポータブルOS化して持ち歩きたいPCのSSDが512GBで、利用しているディスクサイズが230GBなら、ポータブルOSを格納するUSBメモリやUSB SSDのサイズは256GB以上必要になる。ここでは、USB SSDとしてバッファローのUSB 3.0対応SSD「SSD-PSM960U3」(960GB)を用意した。
バッファローのUSB 3.0対応SSD「SSD-PSM960U3」(960GB)を用意した
USBポートにUSB SSDを接続し、OS2Goを起動する
OS2Goの起動画面
右下の「次へ」をクリックすると、ポータブルOS作成先のディスク上のデータが全て消えるという警告メッセージが表示されるので、また「次へ」をクリックすれば、ソースディスク(PC側)とターゲットディスク(USB SSD側)のレイアウトが表示される。
ソースディスクが複数のパーティションに分かれている場合でも、自動的に適切なクローニングが行われるようになっている。ここで、ターゲットディスクがSSDの場合は「ターゲットディスクがSSDな場合、オプションをチェックします。」にチェックを入れる。準備ができたら、「実行」をクリックすれば、ポータブルOSの作成(クローニング)がスタートする。
「次へ」をクリックすると、ポータブルOS作成先のディスク上のデータが全て消えるという警告メッセージが表示される
ソースディスクレイアウトとターゲットディスクレイアウトが表示される
ソースディスクのサイズにもよるが、ポータブルOSの作成には2〜4時間程度はかかるが、触らず放置しておけばよい。筆者の環境では、約530GBのディスク領域を使っていたが、それらをクローニングしてポータブルOSを作成するには2時間42分33秒かかった。
ポータブルOSの作成中。2〜4時間程度かかる
筆者の環境ではポータブルOSの作成に2時間42分33秒かかった
■ポータブルOSから起動したいPCの起動順位を変更する
他のPCをOS2Goで作成したポータブルOSから起動したい場合は、ポータブルOSが格納されているUSBメモリやUSB SSDをそのPCに装着した状態で、UEFI設定画面を呼び出し(起動中に「DELキー」や「F1キー」、「F2キー」などを押すことで、設定画面に入れることが多い)、そのUSBメモリやUSB SSDを起動順位の一番に設定すればよい。
再起動すれば、本体のストレージではなく、そのUSBメモリやUSB SSDからクローン元と同じ環境でWindowsが起動する。アプリケーションなども基本的にそのまま利用できるが、一部のハードウェアに依存するアプリケーションやドライバが入っていない周辺機器などは利用できないこともある。
ポータブルOSが格納されているUSBメモリやUSB SSDを起動順位の一番に設定する
他のノートPCを使ってポータブルOSから起動してみたが、USB 3.0対応SSDでも、思ったより快適に動作した。文書作成やネットサーフィンなど日常的な業務なら十分実用的に使える。
他のノートPCを、ポータブルOSから起動してみた。デスクトップに並ぶアイコンもそのままだ
さらに、Intel CPUを搭載したMacBook ProでもポータブルOSを利用してWindowsを起動することができる。Macの場合は、起動時に「Optionキー」を押すことで、起動デバイスを選択するメニューが現れるので、USBメモリやUSB SSDを選択すればよい。
MacBook ProでもBootcampなどを使わず、Windowsを利用できる
■Windows To Goよりも応用範囲が広い
OS2Goは、Windows To Goに似た機能を実現するツールであるが、Windows To Goとは違って、普段の環境を丸ごとクローニングして持ち歩けることが魅力だ。例えば、海外出張などの際、自分のPCを持っていく人は多いだろうが、万一現地で壊れたり盗難にあってしまったりすると、仕事ができなくなってしまう。しかし、OS2Goで作ったポータブルOSも一緒に持っていくようにすれば、そうしたトラブルが起こっても現地で入手したPCを使って、すぐ普段の環境で仕事を行うことができる。また、バックアップとして運用することもできる。自分のPCの環境を常に携帯しておきたいという人にもおすすめだ。
テクニカルライター 石井英男
■「EaseUS OS2Go」製品情報
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