NASAは太陽、そして地球のオーロラを調査する2つの新しいミッションを承認しました。この2つがうまくいけば、危険な宇宙天気の原因となる複雑な相互関係を深く理解できるようになります。
北極や南極など高緯度な場所で見られるオーロラはとても美しいですが、この感動的な光のショーをもたらす磁気嵐は、通信網と電力系統を妨害することで知られています。専門家たちは激しい宇宙天気である強い磁気嵐が、携帯端末や衛星、そして送電網から電気を送る柱上変圧器(トランス)の破壊というさらにひどい状況を引き起こしてしまうのではないかと恐れています。
19世紀中ごろ以降、それほど大規模な磁気嵐に見舞われていませんが、科学者たちにはこの先似たような現象が発生すると信じる理由があります。しかし困ったことに日々の宇宙天気だろうと、発生が100年に1度の恐ろしい気象だろうと、私たちは宇宙天気を予測するのがあまり得意ではありません。
だからこそ、NASAが「相関関係にあるシステムとしての太陽と地球への理解」を深めると評する2つの新しい太陽系物理学ミッションが始まるのです。1つめのミッションの衛星は太陽風、太陽フレアやコロナ質量放出の背後にある物理的現象を、2つめはオーロラジェット電流を研究します。これらのミッションからの洞察によって宇宙天気予報の精度が高まり、荒天がやってくると警告できるようになります。
太陽は地球に何を運んできているのか?
EUVSTミッションは、極端紫外線分光望遠鏡(EUVST)を搭載した衛星が太陽の彩層からコロナまでの幅広い温度帯を観測するミッションです。コロナや太陽風の発生、物質やエネルギーが輸送される過程を研究します。科学者たちはこの研究データを使って、これらの現象が地球の大気を含む太陽系に及ぼす影響を解明します。
同プロジェクトのサイトによれば、この「次期太陽観測衛星」には高感度・高分解能の太陽紫外線分光装置が搭載されているとか。コロナ加熱問題と莫大なエネルギーが解放される太陽フレアを高感度かつ高空間分解能で観測することで、それらの発生のメカニズムに迫ります。
EUVSTミッションは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主体となっており、欧米諸国のパートナーと協力していきます。NASAは検出器、分光器の一部、ガイドスコープ、ソフトウェアにスリットジョー撮像装置などの分の5,500万ドル(約57億6000万円)を提供し、ワシントンD.C.にあるアメリカ海軍調査研究所のHarry Warren氏が主任研究員を務めます。EUVUSTの打ち上げは2026年の予定。
磁気圏を流れる電流の正体は?
2つめはEZIE(エレクトロジェットゼーマンイメージングエクスプローラー)ミッションという名称で予算は5330万ドル(約55億800万円)。地球の軌道上を周回する3機の小型人工衛星を使って、オーロラと地球の磁気圏をつなぐ大気の電流を研究します。衛星が観測するオーロラジェット電流は地上97〜145kmを流れ、磁気圏に及ぶ電流です。
このミッションの主任研究員はジョンズ・ホプキンズ大学のJeng-Hwa Yee氏になります。
Yee氏は同大学のプレスリリースで「何十年もの研究にかかわらず、地球と地球を囲む宇宙との間の相互作用の中心にある電流の基本的な構成を我々はまだ理解できていない」と述べていました。「これは水星、土星と木星のような磁性体にも当てはまるため宇宙として重要な問題だが、この電流はここ地球と宇宙空間にある我々のテクノロジーにも大きな影響を及ぼすから現実的にも重大である」とのこと。
EZIEの打ち上げは2024年6月ごろを予定しています。
ワシントンD.C.にあるNASA本部で科学部門のThomas Zurbuchen副長官はNASAのプレスリリースの中で「他に類を見ない素晴らしい観測ツールを使って太陽-地球システムを研究する衛星の仲間に、これらの新しいミッションを加えることができてうれしい」と述べています。
この2つのミッションの成果を見られるようになるのは数年後になりますが、科学的そして現実的な理由からも、これらの太陽物系理学ミッションを行う意義はあります。2017年のリサーチでは、非常に強力な磁気嵐が起きればテクノロジーの損傷と世界規模の停電によって、米国は1日あたり400億ドル(約4兆1550億円)の損失を被ると示唆されていましたからね。
Source: Scientific American, NASA, Solar-C_EUVST, Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory,
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