パンツのポケットに入れて四六時中持ち歩くスマホ。その立ち位置が、以前とはちょっと様相が違ってきているように見える。そんなところまで影響を及ぼすコロナ……。
コンパクトスマホのトレンド
iPhone 12シリーズが発表され、その中核であるiPhone 12とiPhone 12 Proの発売が開始された。今回の12シリーズには4モデルあるが、iPhone 12 Pro MAXとiPhone 12 miniの発売は11月13日と3週間先だ。iPhone 12 miniの前評判がよいらしく、すべてが出揃うまで様子見というムードもあるようだ。
iPhone 12のラインアップを画面サイズと重量で比較すると次のようになる。参考に比較的小型軽量な最新端末としてGoogleのPixel 5も並べてみる。
- iPhone 12 mini 5.4型 133g
- iPhone 12 6.1型 162g
- iPhone 12 Pro 6.1型 187g
- iPhone 12 Pro Max 6.7型 226g
- Pixel 5 6型 151g
こうして比べてみるとiPhone 12 miniの圧倒的な軽さと小ささが際立つ。どんな感じなのか、実際に手に取って体感したいと思うのも無理はない。コンパクトさが魅力のiPhone SE(第2世代)4.7型148gよりも画面が大きいのに軽い。
昨今のスマホは、160gあたりがしきい値となっているように思う。それより重いか軽いかで印象がずいぶん変わる。そういう意味では、今回のiPhone 12のモデル構成は絶妙で、世の中のあらゆるニーズを吸収し、誰もが自分が望んでいるモデルを見つけることができるかもしれない。ただ、個人的には200gを超えるスマホは、どんなによくてもカンベンだ。
また、GoogleのPixel 5のコンパクトさは秀逸だ。しかも、この製品、内蔵バッテリ容量がじつに大きく、4,000mAとアナウンスされている。それでこの重量なのだから、ちょっとびっくりしてしまう。
実際に使っていても、バッテリがじつに長持ちすると実感できる。バッテリに対してストレスを感じることは皆無といってもいい。ハイエンドのプロセッサを使っていた先代のPixel 4とちがって、ミドルレンジのQualcomm Snapdragon 765Gを使っていることもバッテリ消費量に影響を与えているのかもしれない。
さらに、顔認証を指紋認証に切り替えたPixel 5の対応は実にスピーディだ。iPhone 12が指紋認証の「Touch ID」非対応というのは、日本では特に、ちょっとした外出にもマスクを常用しなければならない現状を考えると残念だ。
自宅でスーツは着ない
いきなり話が変わるが、ビジネススーツが売れていないそうだ。たとえば「洋服の青山」(青山商事)の売上げ推移を見てみると、前年比で大きく落ち込んでいるのがわかる。「紳士服のコナカ」(コナカ)も同様の傾向にある。両社ともに回復の傾向は見てとれるが、これでひと安心というわけにはいかないだろう。
その一方で、たとえばユニクロ(ファーストリテイリング)の売上げ推移を見てみると、こちらは伸びが見てとれる。
つまり、スーツは売れないがカジュアルな洋服はそうでもないということがわかる。これらについては、コロナ禍における外出自粛や在宅勤務トレンドの影響を受け手の減少だと想像してもよさそうだ。ステイホームが起こした現象だ。
要するにスーツを着てオフィスに出勤するのが当たり前だったのが、仕事における人と人との接触を最小限にし、カジュアルでラクな服装で、人とリアルに会わずに仕事に取り組むのが新しい当たり前になりつつあるということなのだろう。
先日、日本HPが「プロフェッショナルの多様化する働き方を支援するリモートワークステーションソリューション」を発表した。その発表会で、同社専務執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 九嶋俊一氏は、同社による先を見据えたストーリーとして、働く場所、働く人、働き方が変わる将来のオフィスを考えるにあたり、その将来のトレンドが現実問題になってきたと語った。
人間の適応能力は素晴らしく、コロナがあってもさまざまな様式に適応していると九嶋氏。そのことで、周辺機材の拡充により、自宅での仕事でも以前よりも生産性が上がったといっている層が44%もいるという。つまり、オフィスよりも仕事に集中できる環境として、在宅勤務の継続が望まれているというのだ。
九嶋氏はこうもいう。習慣というものはおそろしく、いったん慣れると後戻りできないものであり、より創造的な仕事に真摯に取り組むために、もともとクリエイティブな仕事をしていた人たちは、8割が在宅勤務の継続を希望しているという。そのほうが生産的であるというのだ。さらに、バーチャルミーティングは実際に会うより好ましいという意見も多いらしい。
ならば、その新しい習慣をITとしてどうサポートするのか。その課題とニーズを分析するなかで、大事なのは事業の継続であり、生産性の維持だ。そのためにも、必要なPCを安全に稼働し続けることが求められる。人と人との接触を減らすことは、自動化、無人化に向かう。そのニーズは高まる一方で、今以上にデジタルを使った密なコミュニケーションが必要だと九嶋氏はいう。
そうはいっても、どうしたって在宅勤務が不可能な仕事もある。確かに今起ころうとしているのは、かつてクルマが馬車に取って代わったときのような革命かもしれない。当時は、馬車をあやつっていた労働者が、クルマを運転するようになった。クルマを作るようにもなった。あらゆる労働者が仕事を失うことにはならなかったはずだ。だとすれば、現時点でデジタルの恩恵を受けにくいサービスやロジ、販売などに関わる人たちの働き方は、これからどのように変わっていくのだろう。
この疑問に対して九嶋氏は長いレンジで見ていくと自動化は進むはずで、人間が現場に立ち会わなければならないシーンはゼロにはならないにしても、今、現場で何が起きているかを把握しやすくなることで、作業にかかる時間は短くできるはずだという。さらに、ディープラーニングや自動化の社会があらゆる分野にもたらされると九嶋氏は断言、そのとき、現場まで含めた自動化、無人化には、エッジでの判断が必要となり、それが制約の多いインフラを最適化して構築することに貢献するだろうとした。
スマホとパソコンの役割分担の見直し
在宅勤務のトレンドは、これまでよりもずっとパソコンを身近な存在にしたといえる。ステイホームによって、いつでも気軽にパソコンに向かえる環境が手に入り、そのことで、パソコンを使う機会が増え、スマホに求める要素は微妙に変わりつつある。細切れの時間を有効に活かすことができるスマホだが、その細切れの時間が実際には少なくなっているのではないか。そうなると、スマホにパソコンに代わるようなオールマイティを求めるのではなく、気づきやアラートのためのアシスタントとしての役割を担ってほしいというニーズが高まる。まさにパーソナルデジタルアシスタントだ。
自宅を一歩も出ずに、極端には、ずっとスウェットなどのカジュアルな服装で1日を過ごすようになった結果、それでもスマホを手放すわけにはいかないが、ポケットにズッシリとしたカタマリを常に入れているということから解放されたいという気持ちが芽生え始めている。だからこそ、コンパクトで軽量なスマホへのニーズが生じているのではないか。そうなると、スマホケースのあり方にも多少なりとも影響が出てくるような気がしている。
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