円筒形から球体に
スマートスピーカーと言えば、ほぼ最初からどのメーカーも円筒形で作っていた。モノラルスピーカーだったので、スピーカーを下向きに配置すると円筒形が一番合理的な形で、それが長く続いたわけだ。しかしスマートスピーカーも、音声コマンドで様々な情報を提供するデバイスという役割も一端落ち着いて、昨今は音楽を聴くための新デバイスという位置づけになりつつあるのではないかという気がする。昔で言う、ラジカセのポジションだ。
そうなるとオーディオ装置として小型化とステレオ化を両立させる必要がある。かといって横倒しの円筒形では、Bluetoothスピーカーでよくある形であり、新鮮味がない。「2つ買えばステレオです」は忠誠心が試される。そんなことから、スピーカーを2つ内蔵させるユニークな形状として、球体となるのは妥当であろう。
10月22日から発売が開始された第4世代のAmazon EchoとEcho Dotは、以前からの円筒形から球体となった。Echo Dotはモノラルだが、今後スマートスピーカーのアイコンとしては「球体がデフォルト」になるのかもしれない。そういえば10月14日に発表されたApple HomePod miniもモノラルながらほぼ球体だった。一方Google Nest Audioは平たい立方体で、独自の個性がある。
さて第4世代のEchoはAmzonで11,980円(税込)。Echo Dotは時計ディスプレイ付きが6,980円(税込)、ディスプレイなしが5,980円(税込)となっている。
スマートスピーカーとしては標準機となりつつあるAmazon Echo、その最新モデルをチェックしてみよう。
ステレオ仕様でオーディオ装置化した新Echo
まずはEchoのほうから見ていこう。カラーはグレーシャーホワイト、チャコール、トワイライトブルーの3色。今回はチャコールをお借りしている。
これまでの円筒形ボディでは、天面に反応を示すライトリングやボタン、マイクなど、多くの機能を集約していた。一方球体ボディでは円筒形の天面のような「空き地」がないので、ボタン配置などには苦慮の様子が伺える。
上部の4ボタンは、ファブリック素材で覆われたフレームの上に、樹脂製ボタンを貼り付けている。押し込むとクリック感があるスイッチだ。ボタンの形で切り取ってあるので、暗闇の中でも手探りで音量アップダウンボタンを探せるようになった。
シルエットは球体だが、ファブリックで覆われている部分は約半分で、横から見ると斜めに切ったような格好になっている。つまり円筒時代のように360度音を蒔くわけではなく、正面があるという事である。
リングライトボタンは底面となり、設置面との反射も合わせて、ぼんやりと光る格好となった。ボリュームは円の角度でわかるようになっているのだが、反射でぼんやりしか輪郭が見えないので、今どれぐらいの角度なのかはわかりにくくなった。
接地面は小さいが、球体なので結局は球の直径ぶんの接地面積が必要になる。直径は144mmなので、第3世代Echoよりは場所をとるようになった。
背面はACアダプタ端子と、アナログ音声の入出力端子がある。この端子は、従来のEchoでは出力に限定されており、逆にEcho Studioだけはスピーカーの能力を生かすために入力となっていた。新Echoでは、この端子を入力にするのか出力にするのか、アプリで選べるようになっている。これはEchoとしてははじめての試みだ。
内部構造としては、3.0インチ(約7.6cm)ウーファーが上方やや前向きに付けられており、0.8インチ(約2cm)ツイーターがハの字に配置されている。実際に音を聴いてみると、本体サイズよりも外側に拡がって音が聞こえる。
音質評価としては、第3世代よりよくなったという人、悪くなったという人が分かれるところだが、このスピーカーはリスナーとの距離でかなり音がかわる。それによって評価がブレるのではないかと思われる。
だいたい1m以内の距離では、低音は十分で、音の出方はEcho Studioに近い。加えてステレオ感が大きく、サウンドに包まれるような感覚が得られる。小型の割りには高音域が控えめなので、アプリの「音質」で高域を+3ぐらい上げてやるとバランスが良くなる。Echoの標準リスニングポイントは約3mの距離だそうだが、個人的にはニアフィールドでメリットが出るスピーカーのように思える。
それ以上離れて聴くと、急速に低音が減衰し、ステレオ感もだいたい肩幅ぐらいの感じに聞こえる。低音と入れ替わるように高音の出がよくなり、イコライザはフラットで十分なバランスとなる。おそらくニアフィールドだとウーファーの向きの真正面に顔が来るので、かなり低音寄りのサウンドになるのだろう。低域はそれほど鋭い指向性は持たないものだが、ウーファーで中音域までカバーしているので、ある程度の指向性は出てしまうようだ。
音楽ストリーミングサービスとしては、もちろんAmazon Music HDがデフォルトとなる。ただハイレゾのUltra HDや3Dオーディオには対応しない。
また地味なところではあるが、本機はスマートホームハブ機能も内蔵した。第2世代まであったEcho Plusの機能を、ここに集約した格好だ。加えて温度センサーも内蔵しているが、これもEcho Plusにあった機能である。これにより、部屋の温度が設定値より高くなったり低くなったりすると、自動でコマンドを発することができるようになった。例えばエアコンと連動していれば、暑くなったら自動的にエアコンをONにするといったアクションが可能になる。
小型ながら侮れない新Echo Dot
続いて新Echo Dotを見ていこう。カラーは新Echoと同じ3色だが、時計付きモデルはグレーシャーホワイトとトワイライトブルーのみで、チャコールがない。今回は時計付きグレーシャーホワイトをお借りしている。
形状としてはEchoとまるっきり同じで、直径が10cmと小型になっているだけである。上部のボタン、底部のリングライトも構造は同じだ。端子はACアダプタと、アナログ音声出力端子。こちらは出力専用で、切り替えできるようにはなっていない。
時計付きモデルは正面に7セグメント4桁のディスプレイがあり、ファブリック素材越しに光るようになっている。ディスプレイのON・OFFや明るさはアプリから設定できる。12時間表示、24時間表示の切り換えも可能だ。
スピーカー的には1.6インチ(約4cm)のモノラルスピーカーで、口径こそ第3世代の円筒型と同じだが、音質的にはかなり違う。正直第3世代は、音楽は再生できるものの、日常的にリスニングに使うという感じでもなく、単に音声コマンドを受け答えするだけのデバイスといった感じだった。そのポジションはEcho Flexに譲り、音楽スピーカーとしてしっかり設計したようだ。
スピーカーは、天面のボタンと時計の間に向けられている。したがってこちらも音の方向としては、正面がある作りだ。モノラルで拡散板なしということで、音の広がりはないが、フルレンジの良さを生かしつつ低音特性が大幅に改善されており、バランスは良好だ。ボーカルもの、アコースティックギターものは特にフィットする。ちょっと中音域にクセがあるが、気になる場合はオーディオの設定で中音域を-2ぐらい下げるといいだろう。
音量もかなり出るほうだが、50%を超えると若干歪みっぽく聞こえる。ただ50%とはいえかなりの大音量なので、そこまで上げるケースはそれほどないだろう。ステレオペアにも対応するので、もう一つ時計なしモデルを買って、ステレオ仕様で使うのもいい。
特に時計付きだと球体のかわいいルックスと相まって、第3世代よりもインテリア感が強くなった。棚の上やキッチン、ベッドサイドに置きたくなる形だ。
ただ、いろんなところに自由に置くにはACアダプタのケーブル長が1.5mと、ちょっと短い。この形状なら、家の中を自由に持って歩きたいというニーズもあるだろう。このサイズでバッテリー式ならさらに良かったと思う。
またディスプレイは時計だけでなく、音量を変えれば数字で示してくれるのも便利だ。例えば音声でボリュームを3に、と言ったところで、3がどれぐらいかはなかなか意識できないところだが、数字で見えれば感覚と一致しやすい。
加えてAlexaに今の気温を聴くと、温度を数字で表示してくれる。タイマーをセットすれば、残時間を表示してくれる。現在時刻から24時間以内にアラームがセットされた場合、時計の右下にドットが表示される。またアラームがなった時に頭をタップすると、スヌーズになる。そういう部分でも時計付きEcho Dotは、家に1個あっていいなと思わせる。
総論
新Echoは、いわゆるAmazon Echoとしては標準機のポジションだ。これまで音質的には「まあまあ」であったモデルが、2Wayステレオ仕様になったという点は大きな進歩だと思う。普段筆者はEcho Studioで音楽を聴く機会も多いが、低音の迫力はこれに迫るものがある。ただ意外な事に、高域はEcho Studioのほうが伸びがある。小さいから高域が出るというわけでもないのが面白いところだ。
本文にも書いたが1m以上離れると音のキャラクターが変わるので、どこに置くかで印象はだいぶ違ってくる。設置面積は増えたが、背が低くなったので、置き場所も変わってくる事だろう。球体だから転がりやすいと思われるかもしれないが、重心が下にあるので、横倒しになっても起き上がりこぼしみたいに正対する。
Echo Dotは、Echoの中では一番売れているモデルだそうだが、その後継機ということで新Echo Dotも注目度が高い。執筆時点では、Echo Dotの時計付きモデルのみ1カ月待ちのようである。
内部のスピーカーは前作と同口径だが、音質的には全然違ってしっかり低音も出してくるので、音楽的にも楽しめるだろう。キッチンや寝室など、小音量で軽く流しておくみたいな用途なら十分なはずだ。
こちらも重心が下にあるが、全体的に軽いので自力で正対するまではいかない。床に置いておくと気がつかないサイズなので、棚や机の上に置いた方がいいだろう。
正直スマートスピーカーとしては、スキルと対応デバイス次第なので、どの世代でもあまり使い勝手に違いは無い。第4世代はボイスコマンドの解析に優れた「AZ1ニューラル・エッジ・プロセッサ」が搭載されて、応答性が高いそうだが、まだ米国のみの対応で日本でのサービスインは時期未定となっている。次世代なりの賢さが発揮されるまでは、まだ少し時間がかかりそうだ。
第4世代でオーディオ性能を大幅に上げてきたわけだが、タイミングを同じくして競合他社も同じ動きである。自社音楽サービスを一番楽しめるデバイスとしての位置づけが色濃くなってきた、という事なのかもしれない。
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