その名は「WASP-107b」。
木星とほぼ同じサイズにして10倍軽いという太陽系外惑星が、212光年離れた場所にあります。今回の発見は巨大ガス惑星がどのように形成され、成長し、存在することができるのかという宇宙への疑問につながります。
軽い惑星はどのようにできるのか?
アストロフィジカルジャーナルで発表された新たな研究が示唆するところによれば、巨大ガス惑星が原始惑星系円盤に出現するのは、以前想定されていたよりも簡単であるとのこと。「簡単」というのは、論文筆者で天文学者のBjörn Benneke氏、モントリオール大学の博士課程学生のCaroline Piaulet氏いわく、巨大ガス惑星の形成が始まる上で必要な胚子のコアが予想以上に軽い可能性があるとの意。
質量は海王星、半径は木星サイズの巨大ガス惑星は「WASP-107b」と呼ばれています。以前から天文学者らの間では有名な惑星でしたが、密度が非常に低い天体が原始惑星系円盤からどのように形成されたのか理解を深めるため、両氏は4年にわたる研究に取り組みました。
こうした軽い惑星は以前から研究が行なわれていて、「スーパーパフ惑星」や「わたがし惑星」という愛称がついています。ちなみに惑星のホスト星は非常に近く、このため「WASP-107b」における1年はたったの5.7日だとか。
研究チームは、ハワイのケック天文台を活用して物体の質量の推定値をより正確に計測しようと試みました。視線速度法と呼ばれる方法で、太陽系外惑星がそのホスト星を揺らした程度を測定。研究によれば「WASP-107b」には海王星質量の1.8倍、つまり地球質量の30倍ほど含まれていることがわかりました。つまり、木星質量の10分の1であることになります。
さらにこの研究から、内部構造の構成を推定することが可能になったといいます。コアはガスが宇宙に散乱するのを防ぐ上で十分な重さである必要がありましたが、非常に低密度を維持するのに十分な軽さであることが観察されました。したがって科学者が推定する固体コアは、地球質量の4倍しかないといいます。
新たな仮説へ
さらに論文では、惑星の全質量の85%が固体コアを直接取り囲む厚いガス層を含んでいると発表。ちなみに比較すると、海王星の質量の厚いガス層は5%〜15%程度。これは予想外の結果で、「WASP-107b」のコアは原始惑星系円盤内(惑星形成過程で星を取り巻く塵とガスの巨大な円盤)の巨大ガスの形成を促進するのに十分な質量も重力の影響もないと考えられます。とはいえ「WASP-107b」が存在するのは明らかで、私たちの理論は間違っているか、修正が必要ということになります。
新しい論文は「巨大な惑星がどのように形成され成長することができるかの正に基礎に取り組んでいる」とし、「ガスエンベロープの大量な降着は、以前に考えられていたよりもはるかに軽いコアに対して引き起こされる可能性があるという具体的な証拠を提供する」と説明されています。
巨大ガス惑星の形成に関する考察は現時点で木星や土星のような物体の形成に偏っていて、それによれば胚子のコアは地球より少なくとも10倍重い必要があると考えられています。コアはどんなに軽くても、原始惑星系円盤が散逸する前に十分な量のガスと塵を収集・蓄積することができません。今回の新しいデータによって、研究者たちは別のシナリオを考える必要性に直面しました。
「WASP-107bの最も妥当なシナリオは、星の遠くで惑星が形成され、円盤内のガスが十分に冷たく、非常に速くガスの降着が発生する可能性があること。惑星は後に、円盤やシステム内の他の惑星との相互作用を通じ、現在の位置に移動することができたのでは」と仮説を示すのはPiaulet氏。
同研究の過程では、偶然にも「WASP-107c」という同じ星系内の別の太陽系外惑星を発見したといいます。この惑星は、Piaulet氏らが新しく提案した形成シナリオにより正しい軌道にあることを示します。「WASP-107c」には木星の約3分の1の質量があり、その仲間である「WASP-107b」よりもかなり重たいのが特徴です。ホスト星の単一の軌道を作るのには3年かかり、その軌道の細長さは非常に興味深いものです。
「いくつかの点で、WASP-107cはそのシステムで起きたことの記憶を保持しています」とPiaulet氏。「その軌道離心率は大きく、WASP-107bで推察されているような大規模の変位をもたらし得る惑星間の相互作用を伴う、かなり混沌とした過去を示唆しています」と述べています。
興味深いですよね…。研究チームは今後、説明のつかないメタンの不足についても視野に入れつつ、「WASP-107b」の化学組成に対する理解を深めていくとのことです。
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