少額の自己資金できる不動産投資としてサラリーマンでも手を出す人が多かった「ワンルームマンション投資」。首都圏を中心とした不動産市場のバブル化によって、これまでは資産を増やすことに成功したり、節税メリットを享受できたりと恩恵を受けてきた人もいるだろう。だが、「コロナ禍によって風向きが変わりつつある」と指摘するのは、不動産ジャーナリストの榊淳司氏だ。 【写真】マンション投資するサラリーマン
* * * サラリーマンが始める不動産投資の初級者編は、何といっても新築ワンルームの購入だろう。 ワンルームマンションの販売はここ数年、絶好調だと伝えられる。昨年1年間の首都圏や近畿圏における供給戸数の統計数字はまだ出ていない。ただ1-6月の前半の数字から考えると、東京都では前年(2019年)並みである年間5000戸程度の供給があったと推計できる。 ただし、市場環境は新型コロナの影響もあってジワリと変化している。
学生や社会人のワンルーム需要が減少
ワンルームマンションへの投資は、賃借人が毎月きちんと家賃を払ってくれることを前提としている。 これまで毎年たくさんの人が東京都に流入してきた。その多くが大学に入学する学生であったり、就職で東京に移住してきた新社会人である。つまりはワンルームマンションを借りてくれる人々である。彼らの旺盛な居住ニーズが、東京やその周辺で大量に供給されてきたワンルームマンションに需要をもたらしてきたのだ。 しかし、新型コロナの感染拡大で市場環境は変化しつつある。総務省が1月末に公表した外国人を含む2020年の人口移動報告によると、転入者が転出者を上回る「転入超過」が東京都では3万1125人。前年から5万人強の減少となった。これは現行集計を始めた2014年以降で最少であるという。 コロナによって東京への人口流入が大幅に減り始めたのだ。この流れは今後も続く可能性が高い。
ワンルーム投資の最大のメリット
こういった変化はみられるが、ワンルームマンションの市場への供給が減るとは考えにくい。その理由は、すでにワンルームマンションを供給する側の体制がすっかり整ってしまっているからだ。一部上場などの有力な専業のデベロッパーが何社もある。 不動産業界では、彼らを「ワンルーム屋」と呼んでいる。ワンルーム屋は土地が多少狭くても高値で買い取ることを厭わない。なぜなら、彼らは土地を高く買った分はキッチリと販売価格に上乗せできるからだ。 ワンルームマンションを購入しているのは、ほとんどがサラリーマンだ。あるいは勤務医も有力な需要者になっている。ワンルーム投資の第一のメリットは、安定的に家賃収入を得ることではない。所得税を軽減することである。 例えば年収700万円の場合、所得税・住民税は合わせて年間約100万円である。しかし2000万円程度のワンルームマンション投資を行うと、その初年度には諸経費や減価償却、ローン金利などで税法上150万円程度の損失が生じるケースが多い。 この金額を給与所得から差し引くと、年収は550万円となる。税金は合わせて63万円前後。翌年に確定申告すると、差額の37万円が還付されるのである。 この37万円を手にすると、多くの人は「儲かった」と考えてしまう。しかし、2年目からはこの額がガクンと減る。3年目はさらに減る。ワンルームマンションへの投資は最初の1年もしくは2年しかメリットが味わえない。だから、毎年のように買い増す個人投資家も多い。給与所得の多い勤務医などが、ワンルーム投資にハマるケース多いのはこのためである。
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