2020年11月12日に発売された「PlayStation 5」(以下、PS5)は、次世代のゲーム体験を提供するハードとして話題となり、今も高い注目を集めています。ですが一方で、肝心のPS5ソフトの盛り上がりは、PS5本体と比べると今一歩及ばない状況と言えます。
新ハードの登場直後は、専用ソフトの数が必然的に少なく、そしてハードの普及率自体も低いため、どうしても話題が大きくなりにくい傾向にあります。ですが今回のPS5は、かつてのハード展開とは少し異なる状況に置かれているのです。
発売からもうじき3ヶ月が経過するPS5ですが、発売から今日まで入手困難な状況が続いています。需要に対して供給が追いついていない、というのも大きな理由ですが、さらに今回は、いわゆる転売の影響が小さくないとも見られています。
ゲーム業界に限った話ではありませんが、人気のある商品を転売目的で入手する購入者は後を断ちません。これまでのゲームハードも、たびたび転売の対象とされてきましたが、今回のPS5が特に転売の影響を受けている要因のひとつは、新型コロナウイルスの感染対策として行った販売方式の変化によるものです。
新型コロナウイルス感染対策として、ゲームハードを取り扱う店舗の多くは、PS5の販売について抽選方式を採用しました。web限定の通販サイトは先着方式で販売している場合もありますが(amazonなど)、「ゲオ」や「ノジマ」といった実店舗がある企業は、店舗販売分についてあらかじめ抽選申し込みを受け付け、当選者のみに発売するスタイルを選択しています。
抽選販売方式を採用する理由のひとつは、店舗に過剰な人数が集まらないようにするためです。店頭で販売すれば一気に人が集まってしまい、ソーシャルディスタンスを守ることが困難となります。実際、秋葉原の「ヨドバシカメラ」が1月30日にPS5の店頭販売を行ったところ、購入希望者が殺到し、警察が駆けつけるほどの混乱となりました。(参考 Game*Spark:ヨドバシAkibaのPS5店頭販売騒動、世界中のメディアが報道へ)
店頭での販売はまだ難しい状況にあるため、抽選申し込みを受け付けて当選者にのみ販売する方式は、PS5の人気度のみならず、感染対策という意味でも十分理解が出来る選択です。また、抽選申し込みによる店頭の混雑を避けるため、webで応募を受け付けるケースも多々あります。ですが、この抽選販売方式に、転売狙いの視線も集まっているようです。
新型コロナウイルスが発生する以前は、店頭での予約も一般的でした。この場合、転売目的で複数の予約をしたくとも、同一人物が何度も同じ商品を予約するのは明らかに不自然。店舗側から見て一目瞭然なので、対策がしやすい状況でした。もちろん、それを見越して代理人を立てる転売狙いの人もいますが、手間がかかる分だけやりにくさは増します。
ですが、webでの受け付けになると、複数申し込む場合のハードルは下がります。無論、販売時に本人確認を取り入れるなど、転売対策を行っている店舗も多数ありますが、それでも転売目的の申し込みが継続的に行われているのが実状です。
「ノジマ」が、ノジマオンライン会員を対象としたPS5の抽選予約販売を、1月31日に開始しました。その応募ページに記載されているQ&Aを見ると、「当選倍率は何倍ですか?」との質問に対して、「2021年1月時点でお答えはしておりませんが、以前記事なりましたが引き続き100倍前後の状況です」「毎回数万件に及ぶ悪質な複数応募があります。悪質なものは除外させていただいて上記倍率です」(原文ママ)と回答しています。
オークションサイトなどで、転売目的の可能性があるPS5の出品などを見かけますが、その動きに関する実態について、ユーザーの目に触れる機会はほとんどありません。ですが今回「ノジマ」が明かした「毎回数万件に及ぶ悪質な複数応募」は、その一端と言えるでしょう。このように、抽選予約販売が転売購入の糸口となり、これまでとは少し違う形で、PS5の入手難の一因に繋がります。
ですが、こうした転売目的の動きに対して、様々な店舗が対策を行っています。その中でも特に目立つ企業のひとつが、さきほども取り上げた「ノジマ」です。
方法等の具体的詳細を申し上げることができませんが、
— ノジマ(nojima) (@nojima_official) December 7, 2020
現在該当部署が、応募総数約12万件に対し、
1件ずつ目視での最終確認を行い、
転売目的での購入希望者でないかどうかの精査を行っておりますので、ご理解いただければと存じます。
この度はご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
昨年の12月上旬に行ったPS5の抽選販売では、当選発表の期日を延期してまで転売対策に取り組みました。総数約12万件の応募を目視で確認し、全てを精査した「ノジマ」。その取り組みはSNSなどでも話題となり、賞賛と注目を集めました。
ですが、「ノジマ」の取り組みはこれだけではありません。公式サイトにて1月31日に「転売撲滅宣言!」を掲げ、その方針について詳しく語りました。
該当ページでは、「本当に必要としているお客様に商品をお届けします」といった目的のため、営利目的での転売を前提とした購入を断るといった「ノジマ」の姿勢を明示。また、転売による弊害や影響、転売の現状などについても語られています。
加えて、「ノジマ」がどのような転売防止策を講じているのかも記載。「抽選販売」「購入履歴の確認」といった多くの店舗で行っている対策はもちろん、転売目的と確認したノジマモバイル会員の登録取り消し、転売目的の購入者が再来店したことを店舗スタッフが分かる仕組み作りなど、多岐に渡る転売防止策について述べられています。
中には、「ノジマ」で購入した商品がフリマサイトや中古品販売サイトで転売されていないか、覆面調査による監視を行っている──といった防止策もあり、その力の入れようを改めて実感させられます。なお、独自調査でノジマ購入品による転売と判明した場合は、「転売している人を特定し、直接お電話して出品停止依頼の措置をとっています」とのことです。
■ノジマでの転売防止策
・抽選販売
・購入履歴の確認
・ノジマモバイル会員の登録取消し
・フリマサイトで覆面調査をし、直接お電話して対象商品を出品停止
・小型バーコードリーダーの使用をお断り
・転売目的とした購入をした人のわかる仕組み
転売による弊害は様々ですが、ゲームハードにおける深刻な影響のひとつは、ゲームソフトの販売に結びつかない点です。転売目的で購入されたPS5は、そのまま転売用の在庫になるので、いわゆる休眠状態と言えます。
例えば、1000台がユーザーの手に渡れば、PS5ユーザーが1000人増えます。その中には、PS5ソフトを買う方も当然出てきますし、SNSで話題にする人もいることでしょう。そういったアクションのひとつひとつは小さくとも、積み重なることでPS5全体の盛り上がりへと繋がります。
ですが、1000台が休眠していれば、その分だけ盛り上がりが目減りするのは明らか。そして、PS5ユーザーの総数が増えなければ、PS5ソフトの販売数もやはり伸び悩み、悪循環へと陥ってしまいます。
この循環を少しでも改善すべく、「ノジマ」や多くの店舗は、転売対策に励んでいます。その努力を目にする機会はなかなかありませんが、だからこそ力強いエールを贈りたいものです。
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